1: 国 家 崩 壊 R T A
始めて小説書きました! 初投稿です!
幼い頃から『冒険者』に憧れてきた。
剣一本を手に、凶悪な魔物どもに挑む英雄たち。
人が住める土地を増やし、文明を発達させるような希少な素材を持ち帰り、彼らは人類の未来を切り開いてきた。
そんな者たちに憧れて、俺は十五歳の誕生日に村を出た。
父親からは『冒険者になるだと!? お前馬鹿でトンチキだからすぐに死ぬぞやめろ!』と失礼なことを言われたが、未来の英雄な俺の知性が低いわけがない。
かくして俺ことアシュリー・ベルベットは、『冒険者の街オリオン』に辿り着いたのだった。
「……ここがオリオンか。流石は俺の村とは違うな」
キリッとした顔で街を歩く。
未来の英雄たる俺が、アホ丸出しな表情など出来ないからな。何年もキリッとした顔をし続けたら、表情筋が麻痺してこの顔から変わらなくなった(流石は俺だ)。
「周囲に多くの『ダンジョン』が存在するというこの街。それだけに冒険者の仕事が多く、賑わっているというわけか」
周囲を見れば、いかにも冒険者らしき恰好をした者たちが何人も歩いていた。彼らはこれからダンジョンに挑むのだろう。
ダンジョンとはいわば、魔物たちの巣穴だ。
大地の穢れが一か所に集中し、ヒトに害なす邪悪なモンスターどもを生み出すのだ。
冒険者の主な仕事は、そこに潜って魔物たちを抹殺することだ。そうしないと街まで溢れてしまうからな。
「ふむ……俺も冒険者になるために、装備を整えなければいけないんだが……」
懐からサイフを取り出した。
中を見ると、銅貨が数枚程度しか入っていない。これは窮地だ。
「親が軍資金をくれなかったからな……。くっ、未来の英雄たる俺が、こんなところで詰むのか……!」
まさに絶体絶命の状況だ。これが物語なら一番盛り上がるシーンだろう。
ああ、英雄アシュリーの物語はここで終わってしまうのか……!?
俺がそう嘆いた、その時。
「お?」
ふとそこで、足元に黒革のサイフが落ちていることに気付いた。
それを拾い上げて眺める。
「誰かの落とし物だろうか? 憲兵に届けなければ」
金欠状態の俺だが、他人の物を盗むような真似はしない。
なぜなら俺は英雄になる男だからな。村にいた時も善行を積み重ねてきた。お母さんの肩を叩くとか。
「持ち主の名前でも書いてあげれば、名を呼んでやれるんだが。中に連絡先のメモでも入ってないか……?」
そう思い、中身を覗くことにした。
すると、
「なっ、なんだこれはッ!?」
サイフの中には、金貨の山がぎっしりと詰まっていた。
思わず困惑してしまう。金貨と言えば、銅貨の百倍の価値がある一番高い通貨だ。それがサイフを開けた瞬間、明らかにサイフの容量以上の枚数が飛び出しかけたのだ。
零れ出ないようにと咄嗟に何枚か手に取ると、手に取った分の金貨が、再びサイフの中から湧き出してきた。
「こっ、これは……!」
俺は路地裏に飛び込んだ。
そこで人目に付かないように、金貨を中から取り出しまくっていく。
だが、いくら金貨を取り出そうが、中から次々と溢れてきた。目の前が金貨でいっぱいになる。
「何なんだこのサイフは……どうなっているんだ……!?」
希少な鉱石や魔物の素材から作った、マジックアイテムというヤツだろうか?
いや、不思議な能力を持つマジックアイテムの中でも、こんな代物は聞いたことがない。
今度は逆に金貨の山をしまい込んでみると、溶けるように中に詰まっていった。
「なんだこれは……あまりにも異常すぎる。これは……これは、まさか!?」
そこで俺はハッとする――!
あぁそうだ、俺がお金に困っていたタイミングで、このサイフは偶然にも足元に落ちていた。
これは間違いない……!
「このサイフはッ、神からのプレゼントだ! 『未来の英雄よ、頑張りなさい』と、神が手渡してくれたんだッ!」
それなら全て納得だ!
神が作ったものなら金貨出し放題でもおかしくはないだろう。
全ては俺を支援するために……! ありがとう、神様! 俺、頑張るよ!
「よしッ、これで装備を揃えまくるぞ! あと困ってる人を助けたりして、英雄まで駆けあがってやるぜ!」
そうと決まれば善は急げだ。
このオリオンの街では、高級装備の数々が出品されたオークションも開かれているという。
そこに早速向かうとしよう。
「いくぜオークション! 英雄アシュリーの物語は、ここからだ!」
オークション主「やったぜ!」
※なお国の未来。
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