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英雄が世界を壊す~world regeneration~  作者: 七海玲也
第一章 少女の命と秘めた力
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chapter 3 本領

 スルトは大きく息を吸うと、大きな溜め息を吐いた。


「こんなもんでオレを止められると思ったなんて……な!!」


 大きく目を見開くと抜き身の剣を地面に突き刺し魔言語(マジックワード)を唱えると、眼帯を外し手のひらを上に片手を前に突き出した。


「全てを包む赤き力。破壊せし万能の鼓動。(いにしえ)より呼び覚ませ、地より吐き出す熱き魂……。

我が紅き瞳の前にひれ伏せ! 爆炎柱(フレイムピラー)!!」


 伸ばした手のひらを強く握ると紅い瞳が煌めき、スルト達を中心に円を描くように至るところで炎の柱が地より突き出すと、面白いように炎が魔者を包み込む。

 不気味な叫びが炎の柱から響き、魔者達は悶え苦しみ転がり回るも炎は消えることなく燃え盛り、次第に魔者の姿形が消滅していった。


「なっ……!? なんなのよ、これは!?」


「あんただけを避けるようにやったが、上手くいったな」


「ぜ、全滅よ! 私の飼ってる者共が全滅!

 あんた、どうしてくれるのよっ! 私の楽しみは、奪わせない」


 一本鞭を両手で千切れんばかりに引っ張る女夢魔(サキュバス)は悔しげに歯ぎしりまでしていた。


「ははっ! 楽しくなって来たじゃねぇかっ。

 |さあ、宴の始まりだ《Let's party time》!」



 突き刺した剣を引き抜くと肩に乗せ無防備の格好でどんどんと女夢魔に近づいて行く。その姿に憎悪の視線を送り鞭を振るわせると、スルトの頬に一筋の鮮血が走った。


「スルト!!」


「心配すんじゃねぇ、かすり傷さ。

 さぁ、どうしたよ。そんなもんじゃねぇだろ?」


「なんなの!? あんた一体なんなのさ!」


 またも鞭を振るうが、今度は地を叩き太ももを(かす)めた程度でスルトは歩みを止める様子はなかった。


「オレとダンスでも踊るかい?」


 指をクイクイっと動かし一定の距離になったところで立ち止まると振るわれた鞭の動きに合わせ、くるりくるりと何度も回転しながら近寄っては離れ、二人はまるで踊っているような動きを見せた。


「なんで!? なんで当たらないのよ!」


「楽しいだろ? 玩具(オモチャ)に遊ばれるなんて、なぁ?」


「私は! 私は人間より高貴な生き物よ!

 それなのに、それなのに!!」


 怒りと悔しさにまみれて振るった鞭をスルトが剣で絡めると、思い切り引っ張り女夢魔の手から奪い取った。


「良くできた鞭だな。これで叩かれた日には抵抗なんて出来やしないな」


 と、スルトは何を思ったか剣を再び地に刺すと、奪い取った鞭の具合を振るいながら確かめた。


「そ、それをどうする気なのよ」


「これで絶望を与えて来たんだろ? お前も感じてみろよ」


 スルトが伸ばした鞭は女夢魔の革服の開いてる脇腹を捉え、肌を叩く大きな音が鳴り響くと共に女夢魔の絶叫が辺りに木霊した。


「ぎぃ! あ゛あ゛ん!」


「なんだ? イヤそうじゃねぇな」


「がぁっ! あ゛あーん!

 ふー、ふー、ふー……」


「おいおい、まさかそっちの趣味なのか?」


「ひぎぃ! あ゛んあ゛んあ゛ー」


 喋っては鞭で打つスルトに対して明らかに悶え、四つん這いの格好になった女夢魔はうっとりとした目でスルトを見上げた。


「も、もう一度……もう一度して!」


「ああん? 何だ? ほらよ!」


「い゛い゛い゛い゛!!」


 背中を打たれると絶叫しながら地を転がり回った。


「スルト、そいつ……変態よ」


「のようだな……」


「わだじ、わだじは貴方の(しもべ)。これからは何でもする。だから、だからもっと――」


「おいおい、止めてくれ。こっちにゃそんな趣味はねぇよ」


「お願い、お願いよー!!」


 懇願しながらスルトの足にしがみついた女夢魔を尻目にリリアを見るも、あからさまに嫌そうな表情で応えていた。


「ああああー、分かった分かった!

 オレの命令に従えるなら一緒に連れてってやる」


 明るい顔になった女夢魔とは反対にしかめっ面でスルトは応える。


「従う! 従います、ご主人様」


「こいつはリリア。こいつには絶対に手は出さないことな」


 コクコクと首を傾げ従順にスルトの言葉に耳を傾ける。


「あとはオレが命令しない限り人間には手を出さないことだな。それが出来るならちゃんと褒美もやろう」


「出来ます! 命令に従いますご主人様!」


「それと、名前もあったほうが良いだろ?

 そうだなぁ、名前は……サキ! お前は今からサキだ」


「安直過ぎ」


 ボソッとリリアが呟くとスルトが苦笑いを浮かべた。


「はい! 私は女夢魔のサキ。ご主人様の(しもべ)でございます」


「良し、サキ。この森にはあとどれだけの魔者がいる?」


「全て私の下僕でしたので、この森には魔者はおりません」


「それならそれで良いか」


「どういうこと?」


「さっき説明しただろ?

 この森は魔者がいるから戦争の歯止めになってるって。いずれ魔者が居ないと知れ渡ると戦争になるってことさ」


「良いの?」


「オレらにゃ関係ないだろ?

 それに魔者を飼うようなことをしてた国が悪いんだ。

 人間同士が戦争する分には止めやしないさ。遅かれ早かれってやつなんだから」


「意味が分からないけど、国同士の問題だから関わらないってことにしとく」


「そうしてくれ。

 さぁ、さっさと街に行くぞ」


 こうして新たに魔人が仲間に加わりスルト達は島へ渡る為、ファズの森を抜け港街へと向かって行った。


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