chapter 35 魔の魅入る力
会議の間の扉を静かに閉めると音も立てずに歩み寄り、軽く机に腰を下ろした。
「何の用だ、ルカ」
「用というほどでもないのだけど。魔者もそろそろ限界に近いってことだけは教えようかと」
「そうだろうな。人間だって地下に押し込められたら数日で嫌気が差すだろうさ。
だからあと三日だ。それだけ辛抱出来るように工夫してくれ」
「三日後に行くのね、魔者全軍引き連れて」
「ああ、この街に魔者を置いては行かない」
「それを聞いて安心したわ」
「安心?」
「ええ、契約さえ解消しちゃえば私達は自由だから。考えてるんでしょ? その後、どうなるか」
「お前にもお見通しというワケか」
「それはそうよ。貴方達には忌むべき存在、私達には家畜なんだから。けどね、貴方には違う力を感じるのよね」
「違うとは?」
「人間とも魔者とも取れる力。私はそれに惹かれているのよ、貴方が何者なのか」
「だとしたらオレも知りたいものだな」
ルカは艷やかな瞳でスルトの頬に手を滑らした。
「一体貴方は誰なの? 私をも魅了するその力は?」
「ふんっ。知ったことではないな。オレを誘惑するのならば振る舞いから魅力的になることだな」
「私が魅力的ではないと?」
「誰が好んで好戦的なやつを好きになるものか。だが、その力と従属性は認められるものがある」
「やっぱり貴方はそこらの人間とは違うみたいね。
どうかしら? ルディ・ギーグを討伐したとして、その後も私達と協力関係を築くというのは」
「ムリな話だ。この国からは魔者を一掃する、それが王女との約束でもあるからな。ただし、見逃すということは考えておこう。この国を出るならば、わざわざ追うことはないのだから」
「やはり貴方とは闘う必要がありそうね。この国を出て、どこか新しい国を乗っ取ろうにも結局は戦争になるだろうから。
楽しみは取っておけということかしらね」
「そういうことだろうな。所詮、人間と魔者、相容れぬものということだ」
「ふふふ、ならば今は共闘を楽しませてもらうわよ。じゃあ」
ルカは静かに机から降りると静かに会議の間を出て行った。
「オレにはオレと別の力を感じる? 婆さんの言っていた魔人王の一部が魔者と共鳴しているとでもいうのか?」
眼帯を押さえ埋め込まれた紅い魔石を恨めしく思うと同時に、この魔力が魔石の力に因るものだとするなら、今はこれに感謝をする他ないように感じた。
そして、一しきり思いに耽るとスルトも会議の間を後にし、玉座へと足を向けた。




