chapter 34 会議の間
スルトが目を覚ましたのは丸一日経った翌朝であった。神経を擦り減らしていた結果であろうと自分に言い聞かせ王室を出ると、そこからが大変だった。
一時的にとはいえ王となったのだ、近衛騎士やら宰相やらの挨拶が絶えず、色々な報告も聞くことになったのだ。
聞くところによると、邪神教徒も城には仕えていたらしく、邪神教徒と前王のやり方に賛同していた者は即座に姿を消したらしい。しかも、賛同していたのは兵士の中にもいたらしく、反発を起こし牢にも入れられていると聞く。
そんなゴタゴタがあった中で、会議が執り行われることになった。
「今一度言うが、オレは一時的にこの場に座る者であり、シャルロット王女が帰還した際にはこの椅子は明け渡すと思っている」
「スルト殿。それは承知致しましたが、我々としては悪王から解放して頂いた力量でそのまま王として……」
「ラスベル宰相、その申し出は王女のいないこの場で決めることは出来かねるな。たとえ王女との約束で前王を討ったとしても、王族がいる以上は私は部外者でしかないのですよ」
「スルト殿、私からも宜しいですか?」
「あぁ、君はリグリアスだったな。君もオレに王であれと?」
「その気持ちも少なからずではありますが、王女付き近衛騎士隊長としてはシャルロット王女の意志を尊重したく思います」
「では何だと言うのだ?」
「一時的にとはいえ王の椅子に座るスルト殿にお願いがございまして。
今度の王女奪還作戦には私もご同行願えたらと思っているのです」
「……なるほどな。王女付きの責任感というワケだな」
「あの夜は王女自ら我ら近衛の者も遠ざけ、一人で行動を起こしておりました故」
「一人で魔者を引き連れて行ったのは、彼女なりの考えだったのだから仕方のないことではないのか?」
「前王の命令を逆手に取っての運びだったと考えておりますが、それでも近衛としては陰ながらお側に付いて置くべきではなかったのではと」
「こうなってしまった以上は結果論でしか過ぎないと思うが。ルディ・ギーグも用意周到であったのだろ? 誰も予測していないことさ」
「我ら近衛は最善の結果になるようにお側にいるのが使命でありますので、この様なことになってしまったのは我らの力不足であることは否めないかと」
「その罪滅ぼしに、か。
確かに手は借りたい。救い出した後は魔者との交戦もあると思うからな。
だが、隊長が動くとなるとこの城は誰が護る? 前王は側近に魔者を置いていたとなれば人間で王の次に力があるのはリグリアスではないのか?」
「そうですぞ、リグリアス殿。王も王女もいない今、兵を束ねるのはお主しかおらぬであろう」
「ラスベル殿、それでは貴殿の権限で近衛騎士隊長の任を解いて頂きたい。さすれば一兵士として王女を助けに行けるのではと」
「まあ待て、二人とも。オレとしても兵士はいくらか出して欲しいとは思っていた。百ほどの魔者を連れて行くのだ、救出した後の交戦を考えると戦力的にも不利ではあるからな。
そこでだ、選りすぐりの傭兵とそれを纏める騎士を何名か連れて行き、この城に兵はほとんど残して行くというのはどうだ?
それであれば、リグリアスの腹心を置いておけば問題ないようには思わないか?」
「ふむ、確かに兵がほとんど動かないのであればこの国を数日護ることは可能でしょうな」
「それでは私も宜しいのですか!?」
「ああ、リグリアス。是非とも一緒に来てくれ」
「ありがたき幸せ」
「では、ラスベル宰相。今雇っている選りすぐりの傭兵と、新たに動けそうな傭兵を雇って頂きたい。あと三日までに志願する者だけでいい」
「では出陣は三日後ということですな?」
「早いに越したことはないが、戦力もままならぬのは死地に向かうというもの。
それに魔者共も我慢ならなくなるだろう、それが三日の猶予と考える」
「分かりました。
それでは、出陣の前の日に最終確認で、もう一度皆にはこの場に集まって頂きましょう。解散」
ラスベルの号令で全員が席を離れると会議の間にはスルトだけ残された。静寂の中、机に両肘を付き手を合わせるとシャーリー救出の手筈を考え出す。
どれだけ考えたか、自分では分からないほどに座っていると会議の間に一筋の光が差し込み、扉に目を向けるとルカがこっそりと静かに入ってくるのが見えた。




