chapter 32 勝利の労い
魔者との争いが一時中断にはなったが、荒くれ者の生き残りも僅か四名となっていた。その生き残りを大広間に呼ぶと、侍女らと王女の側近も交えスルトが大階段の中腹にて労っていた。
「お前達のおかげで国王を打倒することが出来た。だが、真の敵は宮廷術師のルディ・ギーグであり、シャルロット王女を救い出すという大義がある。その為には魔者ですら使役し、何としても王女をこの国へ連れて来よう。皆の力をもう一度だけを貸してくれまいか!」
「おおー!!!」
人の上に立つ者としての行動をしたつもりであったが、それにはむず痒さを感じていた。
「一つよろしいですか?」
シャーリーの側近であった騎士が手を上げ、質問を口にする。
「魔者を使役すると仰りますが、奴らが裏切るとの可能性はないのでしょうか?」
「その不安は確かにあるだろうな。赴く先は魔巣と呼ばれる場所であり邪神教徒と魔者が居るという。しかし、この国にいる魔者は契約に基づいてようやく行動が出来るらしい。逆を言えば契約者の命令なしには行動が制限される、もしくは何かしらの罰則が課せられると見て良いだろう。そしてその魔人がいる限り魔者は勝手な行動は出来ないということ。
それであるならば、目的を果たすまでは裏切るということは無いと。そして、その目的というのは契約者ルディ・ギーグの命ということだ」
「では、魔者と目的は一緒とのことで。
しかし、その後はどうなりましょう?」
「自由を得た魔者がすべきは魔界に帰るか、人間を蹂躙するかだろうな。
だからといってこちらも目的を果たしたなら魔者は邪魔でしかない。帰らないのであればその場で殲滅するも厭わないと思っている」
「それを聞け安心致しました。
では、私はこの国に仕える者へこのことを伝え、魔巣への編成を考えたいと思います。
私は、シャルロット王女付き近衛騎士リグリアスと申します。以後お見知り置きを」
「リグリアスか、分かった。兵士達のことはお前に一任する」
スルトの言葉に一礼すると、一足先に大広間を出ていった。そして、スルトは侍女らに向けて話し始めた。
「不安や危険な目にあったであろうが、そなた達のおかげでここまで来れたのは言わずもがな。後少しの辛抱ではあるが、これまで通りに過ごして欲しい。いづれは魔の者の居ない生活に戻るであろうから。
それと、その黒い司祭着はもう着なくても良い。シャルロットが戻るまでは好きな服を着るとイイ」
スルトの位置からメアリーとベルーナが抱き合い涙を流しているのが見え、少し照れくさくも微笑ましく感じた。
「では、これで解散とする。各々、傷を癒やし休んでくれ。オレはこれから魔人と話し合って来よう」
一言言い終えると、一人謁見の間へと戻る。そこには女夢魔と美蛇鎌が睨みを利かせ、一触即発の様相を見せていた。




