chapter 30 謁見の間
六階に上がるとそこにも兵士の姿はなく、小さく騒ぎ声が聞こえるばかりで誰もいる気配すらなかった。スルトは喧騒を無視すると、王室ではなく謁見の間へと向かうと大きな二枚扉が出迎え、それを勢いよく開け放った。
「お前がこの国の王だな!」
玉座に腰掛ける男は夜着のままで、スルトの来訪に驚きを隠せていなかった。
「き、貴様は何者だ! 兵はどうした! 魔の者共は!?」
「兵士と魔者なら今、オレの部下らが交戦しているよ」
「あいつは!? あの鎌女はどこに行きおった!!」
「そいつならオレと和解して、今は治癒に専念しているだろうよ」
「なっ!! き、貴様らは一体!?」
「オレらはこの国を解放するモノだ。その為にあんたの首は貰い受ける」
剣を王に向けながらゆっくりと近づいていくと、玉座にしがみつき顔は青ざめていった。
「あ、あ、あの男のせいなのだ、私はあいつの言うようにしてきたまでなのだ」
「理由はなんであれ、結局はあんたが魔者を使役し、民を苦しめ恐怖させていたのだろう。あんたの号令で何人の命が絶たれたと思っている」
「ひ、ひぃ! そ、そうだ! お前も我が軍に入らぬか!? 一個師団をやる! それでどうだ!?」
「言っておくが、オレはあんたの下に就く気なんざ全くないからな。
それにだ、今はあんたを護る者が誰もいない。その意味は分かるか?」
「そ、そうだ! 私が死ねば魔者共は統制が取れなくなるぞ!? それでも良いのか!?」
「ゴタゴタうるせえよ!!」
次の瞬間、玉座にしがみついた王の首は部屋の隅へと転がっていき、体は玉座から力なく崩れ落ちた。
「これでイイだろ。片付いたな」
「スルト殿。我らが一族は未だ戦っているように思われます。助けに参りますか?」
「ああ、そうだな。見捨ててイイ命なんてないからな」
と、謁見の間を後にしようと振り返ると、二枚扉がゆっくりと開かれ、そこには目を疑う人物がいた。
「シャーリー!!」
シャーリーが後ろ手に魔者に捕まり、黒い外衣を纏った男が傍に立っている。
「スルト!!」
「ほほう、王の首を討ち取ったと。魔者が手薄になっていたとはいえ、よくここまでやれたものです」
「貴様は?」
「申し遅れましたね。この国の宮廷術師であるルディ・ギーグと申します」
「それで? 国に仕えるやつが王女を盾にしようとでも?」
「盾に? いえいえ、滅相もない。シャルロット嬢はこれから必要な方ですからね、丁重に扱わせて頂きます」
「女王にでも据える気でいるなら離すことだ。オレは王になりたくて討ち取ったワケではないのでな」
「この国の女王? ハッハッハッ。この国なぞどうでも良いのですよ。なんでしたら、そのまま王として治めて頂いて宜しいですよ。
シャルロット嬢は世界を治める王になって頂くので」
スルト達には理解出来なかった。そして、そんな困惑な顔を浮かべる傍らで、ザイアードは笑みを絶やすことなくシャーリーの髪を引っ張るのであった。




