chapter 25 出陣
朝日が降り注ぐ自由領域には人影がまばらになっていた。
シャーリーからの手紙によると、明日には大軍がこの自由領域へと押し寄せることになっている。その為に戦闘に加わらない民達は北の蛮族の領土へと移動を開始し、残ったのはスルトとサキと侍女のメアリー、それに蛮族の戦士十二名が準備をしていた。
メアリーには残ってもらい、ベルーナにはシャーリーへの伝言を託し帰ってもらうことで全ての疑いを消し去ることにした。それとシャーリーの侍女達を安全な場所へ導く為にもベルーナには協力してもらうことにしたのだった。
「進行するのは明日だが、今のうちに王城近くの宿へと身を隠す。それには何としても正体を明かされないことが必須だ」
「我らの格好で城下に入ってバレないもんか?」
「兵士にさえ見られなければ傭兵の部類に思われると思っている」
蛮族は袖丈の短い服に揃って毛皮の付いた物を身に付けていて、見る者が見ると蛮族だと気づかれるが、一国民ならばそう思われたとして城へ報告することもないと踏んでいる。
「段取りとしては夜目の効く二人が夜通し城の動きを監視し、森に着いた頃を見計らい城門前と城壁付近の二手に分かれる」
「その後はどうするのでさ」
「城壁とその内側に火を放ち兵士をそちらに移動させ、その間に城内に侵入する。それからは敵を蹴散らし王の首を取る。
簡単な作戦ではあるが一つのミスで全て崩れると思ってくれていい。それに……」
「それに、なんでさ」
「城内には手薄な兵士だけがいるとは限らないってことは思ってくれてていい」
「魔者も少なからずいるってことですな。これで仲間の仇も討てるってもんで」
「そう、だったな。お前達も大切な仲間を失ったのだったな。大切な人を亡くしたのはオレだけじゃない、ここにいる者はその想いを背負っているってことだ」
「おお!! そうだとも!」
「では、その想いと共に城下へと進軍する!!」
「おおおおお!!」
蛮族の雄叫びと共に回り道をし、街を目指す。相当な回り道をしなければ道中を警戒しているであろう兵士に遭遇するとも限らないからである。
「ご主人様」
「なんだ?」
「私はいかが致しましょう?」
「今、最も頼りにしているのはお前だ、サキ。城内ではオレの魔術も限られてしまう。分かっているだろ、オレの魔術は広範囲が得意だと。その為にはお前の純粋な魔術と鞭捌きが必要だ。
だが、お前は魔者と戦い合えるのか?」
「魔者程度でしたら従わせることでも可能ですが、魔人が相手となると一筋縄ではいかないと思います」
「お前でもか?」
「お忘れですか?
私は女夢魔ですよ。戦うことに特化した魔人ではないので、階級で分けたら上位魔人でして魔人将ほどの力を持っていると従うしかありません。下位魔人でしたら」
「魔人将か……となると、やつはそれだけの力を持っていたのかもな。王国は魔人将すら使役していることになるな」
「魔人将にお会いしたのですか!? それでも生きておられるとは、さすがでございます」
「もしも、そいつが出てきたならオレとお前でやるしかないが。出来るか?」
「ご主人様とご一緒であれば何也と」
「なら、オレのそばを離れるなよ」
「承知致しました」
今の口ぶりから、魔人将は上位魔人との力の差は圧倒的であることが窺い知れ、河辺で剣を交えた美蛇鎌は更なる力を備えていると思って良いと感じた。それに、魔人将がいるということはサキと同等の力を持った上位魔人も複数いるとも。あとはどれだけシャーリーの部隊に組み込まれたのか気になるとこであった。




