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英雄が世界を壊す~world regeneration~  作者: 七海玲也
第二章 英雄の覚悟
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chapter 24 シャーリーからの手紙

 シャーリーが自由領域(アサイラム)を出てから七日。北の蛮族、荒くれ者(ラファー)の増援が族長の元へ辿り着きスルトを交え、今後の方針を話し合っていた。木の上に建つ大きな家の中、三十ほどの戦士の中から取分け屈強な十人ほどをスルトの配下とし、残りは民を北の地へ送り届ける算段で話が落ち着いた時だった。


「族長! 大変です、怪我人が!」


「どうした? 怪我人なら手当てしてやれば良いだろ?」


 族長に変わり、スルトが慌てる民へ冷静に述べてやるが、それでも落ち着きを取り戻そうとはしなかった。


「違うんだ! と、とにかく来てくれ!」


「何が違うって言うんだ?」


 スルトが民に付いて外に出ると、吊り橋の眼下には手綱を引く影が一つと、馬の背にぐったりとした姿で乗せられた影が一つあった。


「外からの怪我人か? 何があった!?」


「いや、何でも城からの遣いだとかで、あんたか族長にしか話せないって」


「シャーリーの遣いか!!」


 状況を把握したスルトは縄梯子(なわばしご)を急いで降りると馬へ駆け寄った。


「あんたはシャーリーの、シャルロットの遣いか!?」


「あ、あなたは片目の! そうです、シャルロット王女の(めい)でこれを渡しに!」


「彼女からの手紙か! おい、手当てしてやれ! それから馬を繋いでやれ。

 何があった? 話してくれるか?」


「ええ、私は大丈夫ですが、メアリーをお願い致します」


 馬の背に乗せられたメアリーは数人の民によって担がれ一番近い家屋へ運びこまれ、スルトの前には黒い司祭着に王国の紋様が入った女性が残った。


「私はベルーナと申します。メアリーと共にシャルロット王女の侍女の一人でございます」


「侍女がどうして、怪我を負ってここまで」


「それもこれも王女の手紙に関することでして。

 シャルロット王女が城へ戻ると王に命じられたことがございまして、そのことに関して手紙をしたためると、あなたか族長へ届けるようにと」


「それとこれの何が関係あると?」


 スルトは(おもむ)ろに手紙封を切り、内容を読んでみた。


「それで、この手紙が狙われたと?」


「左様です。ただ、手紙があることは知られていません。狙われたのはメアリー自身とその内容といったところです」


「どういうことだ?」


「メアリーも手紙の内容は聞いておりませんし、王女から手紙を受け取ったことも私しか知らないのですが、王女が王にその内容が命じられた晩、メアリーが王女の部屋を訪れ出るところを見られていたようなのです」


「見ていたやつの刺客に襲われたってことか」


「そのようです。メアリーはそのことを危惧し、私に手紙と馬を託し一日早く向かいました。

 私はここまでの道が分からぬ故に馬頼みに乗っているところで、森で倒れているメアリーを発見したのです」


「あんたも司祭なら手当て出来たんじゃないのか?」


「ええ、私が神秘術(カムイ)を施すことも出来ましたが、メアリーがとにかく早くここへと。多分、まだ近くに襲った人物がいたのかも知れません」


「そうだったのか。黒い司祭着というのは」


「ええ、知っての通り国は魔者を従属させる国として邪教を推奨しておりまして、聖教は逆賊扱いですので邪教徒の格好で動くことが自然であるかと」


「良い判断だな。ベルーナと言ったな、手紙で十五日後、シャーリーが城へ戻ってから七日、すなわち後八日は猶予があるってことだ。あんたもここでゆっくりとしていくと良い。

 まあ、今戻るのはオススメ出来ないから強制的にはなるがな」


「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」


「そのあとのことは連れのメアリーが回復したら決めるとイイさ」


「そうさせて貰えると助かります。

 では……」


 ベルーナはメアリーの運ばれた家屋に向かうと、スルトは族長の元へ行き手紙を渡した。


「ということだが、族長。メアリーが襲われたのは人じゃねえ、魔者の傷口だった」


「ふむ。ともなると彼女は魔者も連れてくるじゃろうな。我らが首尾よく動くことで勝機はありそうではある、か」


「あと七日でここを放棄し、もぬけの殻に出来るかってことにかかるが」


「八日目にはお主らが攻め入る。これだけあれば十分に準備も出来よう。人影と別の足取りも仕掛けることが出来そうよな」


「そういうことはあんたらに任せてイイよな?」


「任せるが良いて」


 スルトは口元を緩ませ、部屋を出ると自室へと戻った。そして、机に向かうと改めて手紙を広げ城内の地図を確認する。  その中で向かうべき場所への安全な道順(ルート)をいくつか頭に叩き込むのであった。


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