chapter 22 手紙
数日後、シャーリーは城に戻っていた。
族長の話では増援が来るのは十日後、そこから自由領域の民を連れ逃がすまでの五日、この期間で大軍を動かせるまでにしなければならなかった。
そして、襲撃の日をスルト達に伝え父王の元へ導くという大役を遣っている。
「なんでしょう、父上」
シャーリーは父王へ呼ばれ謁見の間にて玉座を前に片膝を付いていた。
「城を出回り色々と遊び呆けているようだな」
「これも外の世界を知る為かと」
「しかしな、こうも城にいないとなるとな。
時に、森に住まう住人の話は知っているな?」
「その話は聞いております。我が国に反抗しているだとか、自由を求める場所であるとか」
「ふむ。では、その場所というのは知っておるか?」
「いえ、森には入ってはいないので……」
(魔人が父王へ話していたのなら、この嘘はバレてしまうが……)
そうは思っても、偽りを見破られないために真っ直ぐに玉座を見返すのだった。
「では……城から抜け出していても、そこの者共とは無関係であるというのだな?」
「……ええ、関係ありません」
「ならば、命じよう。
第一王女シャルロット。そなたの権限にて軍を率いて森に住まう者共を連れて参れ。生死は問わぬ」
「……かしこまりました。では……」
気づかれていたかは微妙ではあったが、軍を動かす口実は出来たと思い、玉座に礼をすると足早に謁見の間を後にした。
自室に戻ると机に向かい羊皮紙に向かいペンを走らせる。
『軍を率いてそちらに向かうことが出来る。
だが、私が率いて行くことになるので、王城内を案内することは叶わない。
よって、王城内の地図をここに記す。
後に合流出来るようには動くが、私抜きでやると思っていて欲しい。
予定通り十と五日後に向かうよう調整する』
スルト、族長へと宛てた手紙を書き終えると専属の従者であるメアリーを部屋へと呼んだ。
「メアリー、これをアサイラムの族長か眼帯の男に渡して来てほしいの。
ただし、絶対誰にも見られることがないように頼みたいのだけど」
「お任せ下さい、お嬢様。これから何か起きるのですね?」
「ええ、この国を魔者から解放する為の第一歩よ」
「戦争になるのですか?」
「戦争にはせず、最少の血で済ます為の手紙になるわ」
「……お覚悟は出来ているのですね」
メアリーは察したとばかりにシャーリーの顔を悲しげに見つめ返した。
「父を討たなければ多くの民が犠牲になるわ。
間違ったやり方は正さなければならない、そして国に住まう者は幸せにならなければならない、そうでしょ?」
「常々言われていたことですね。私はお嬢様が成されることに反対は致しません。しかし、お嬢様が危険な身に会われることが心配なのです」
「私は大丈夫。戦闘に参加するわけではないから。
それに、約束したでしょ。子供だったころ。
ずっと一緒にいようねって」
「ふふふ、私も忘れていませんよ。だからこそ、こうしてお嬢様に遣えているのですから」
「なら、これからの二人の為にもその手紙をお願いするわ。これが最初で最後の革命になるのだから」
「分かりました。大切にお預かりします。
お嬢様も無茶はなさらないよう」
「ええ、頼んだわよ」
メアリーは会釈をするとシャーリーの自室を静かに出ていったのだが、入れ違いで黒い外衣を纏った宮廷術師が突如として部屋を訪れた。




