chapter 21 覚悟
一夜明けスルトはベッドから這い出ると、小窓に近づき外を眺め物思いに耽けていた。
「スルト……?」
ベッドから上半身を起こすと、フラットシーツを身体に巻き付けたシャーリーがスルトの背中に向けて声を掛けた。
「ああ、シャーリー。起こしたか」
「どうしたの? 何を考えていたの?」
「これからのことだよ。この国を魔者から解放すると言っただろ」
「ええ、言ったわね」
「そうなるとだ。最悪は国王、お前の父を討つことになる」
「そう、ね。でもそれは……」
「シャーリーの正体を知ってしまった今、どうすべきか、をな」
「貴方はこの国を解放すると言った。その時は父王を討つつもりだったんでしょ? 私はそれを聞いたとき反論しなかったわ。その時には覚悟が決まっていた」
「いいのか、それで」
「ええ。私がいくら進言しても聞いて貰えず、こうして犠牲者ばかりが増えていくのを目の当たりにしてきたわ。だから、本来なら娘の私が責任を持って父王を止めなければならない。そんな想いの中で貴方の言葉を聞いたのよ」
「そうか。ならば、その責任と罪をオレも背負おう。お前だけが苦しまなくてイイように」
「スルト……。こんな辛い中でもそう思ってくれるのね。貴方にとっては憎しみであるかも知れないけど、私には救いになるわ」
「それならばオレは急ぎたい」
「慌てないでスルト」
優しい笑みで差し伸べるシャーリーの手を取るとベッドに腰を掛け、髪を優しく撫でるとシャーリーはスルトの首に腕を回して顔を近づけると唇を重ねた。
太陽が頭上に昇った頃、スルトとシャーリーは蛮族の長を訪ねていた。
「今回のことで多数の死者を出したが、あとどれくらい荒くれ者の民は力を貸せる?」
「総力戦に出るつもりじゃな?
我らとしても出来る限りのことはしたいのじゃがな、戦える者は三十人ほどじゃて」
「そうか。
シャーリー、城の警備はどんなものだ?」
「王都に常駐している兵は傭兵と合わせてもざっと五千ほどだが、積極的に国を守ろうとする兵はどれくらいなものか」
「それに加えて魔者というわけか」
「ええ。ただ、魔者に関しては全く把握してないわ。私の周りにはいなかったから」
「地下かどこかにいると考えるべきか」
「無謀じゃな。兵力に差がありすぎる」
「そうでもないさ」
「ほぅ、というと?」
「奇襲を仕掛ける。兵の居ない間にな」
「それで兵力差は埋まる、と。じゃが、魔者もおるじゃぞ?」
「そいつらが来る前に叩くしかないだろうな」
「それなら私がやるわ」
シャーリーが強い口調で身振りを加えると、考えを話始めた。
「私が先に城へ行き、魔者を見つけ抑え込むのよ」
「そいつは危険だな」
「危険は元よりよ。失敗が出来ないならやるしかないのよ」
「確かにな。失敗は許されない。だが、それだけではダメだ」
「なら他には!?」
「そう、だな。嘘をつくことは出来るか?」
「なんだってやるわ」
「まずは城に行き、ここに戦力を集めて欲しい。理由はなんだっていい。その後、王と魔者を抑えてくれてればそれでイイ」
「ここはどうするの?」
「ここは捨てる。
族長、特に戦える者を十人ほど貸してもらいたい。そして、ここに住む戦えない者を荒くれ者の地へ導いて欲しい」
「ほぅほぅ、なるほどな。お主も捨て身の覚悟であるが故、我らにも覚悟をしろと、な」
「ああ、このままで居ようとも失敗しようとも、どちらにせよ全滅は免れないんだ。ならばオレ達に託して欲しい」
「……ふむ。よかろう。我らとて、我らが地を守る為に協力しておるのだ。最後まで協力させてもらおうかの」
スルトとシャーリーは族長の気持ちを汲み取り、頷くことで作戦は決まったと示した。それは同時に一つの、皆の覚悟が決まったという証であった。




