chapter 14 疑念
自由領域に留まること数十日。スルトは荒くれ者の協力の元、ここに住まう大人達に武器の扱いを教えて、一方でリリア達は闘えない女子供を中心に新たな避難場所の設置や、逃げ方や隠れ方を繰り返し行っていた。
そして肝心のシャーリーはここ数日の間、アサイラムから姿を消しどこかへ行ってしまったようだった。
「なぁ族長。シャーリーのヤツはいつ帰って来るんだい?」
「それは分からぬな。だが、ここを離れることは決して珍しくはない」
「いつも仮面を着けて、時折姿を消す、か。何を隠してるんだかな」
「それでも彼女はよくやってくれている。魔者からも積極的にここを護ってくれるしの」
「へぇ。悪いようには動いてないってことか」
「信じられぬかも知れぬが、先頭に立っているのは紛れもなく彼女よ」
「信じてないワケじゃねぇさ。ただ何者なのかって興味があるだけでな」
「何者か……我らにとってはどうでも良いことではあるな。この国が圧政を敷くことが我らにとって都合が悪い。その為に協力しているだけのこと」
「割り切った共闘ってことか。そいつも悪くはないな」
「お主とてそうであろう?」
「どういう意味だい?」
「善意のみでこの国を魔者から解放しようとしてるのではあるまい」
「どこまでオレのことを読んでいる?」
「何も読んではおらぬよ」
「だったらオレが王になると言ったら?」
「構わぬよ、誰が王になろうともな。ただ、道を誤れば我らが敵対する、それだけのことよ」
「そいつは厄介だな、胆に命じておくさ」
そこで話は終わりとばかりにラファーの一人が部屋に入ってきた。
「族長。シャーリーが戻られお話があるとのことで」
「分かった、通して良い」
それを聞くと部屋から下がり、代わりにシャーリーが間仕切りをくぐり歩み出た。
「スルトも居たのか、ちょうど良い」
「何かあったって顔だな」
「ああ。ここに魔者が送られるとの情報を得てな」
「ほう」
「お前達が後を付けられたのではあるまいな?」
「そいつはナイな。サキがいる以上は魔者や人間には敏感さ」
「確かにそうか。それに、話では大群という訳では無さそうだしな」
「この場所が特定されてるのであれば大群を寄越すだろうさ、国からしたら目障りな場所だからな」
「では、どういたしましょうか、族長」
「ここで迎え討つにはまだ早計であろう。川で迎え討ち、木々の間から弓隊を射らせてはどうだ?」
「訓練の一環も兼ねてですね。分かりました」
「それにはオレも参加してイイんだな?」
「当たり前だ。スルトと私、ラファーの数人で前線を張る。残りはここの守備と弓隊の守りに回ってもらう」
「イイ作戦だ。で、予定ではいつ来るのか分かってるのか?」
「明日の夜だ」
「おお、おお、お早いこって。来る前に待ち構えなけりゃぁな」
「そうだ。だから私は皆に知らせに行く。スルト達も準備はしておいてくれ。
明日、日暮れと共に出発する」
シャーリーは踵を返すとスルトは『了解』とだけ背中に向けて返事をした。
「族長から見てどうだい?」
「彼女のことか? 何も心配はないが」
「情報源は気になるが、あんたがそう言うなら信じるか。
じゃあオレもリリア達に知らせに行くさ」
スルトは族長の部屋を後にした。
信じるとは言ったものの、国が魔者を派遣するとは公にするはずもなく、どこから知った情報なのかシャーリーを疑問視することを諦められなかった。




