2話 魔を狩る者
お疲れ様です。
オリンピックも終わり、皆さんは盆休み中・・・かな?
緋色は・・・そんなモノ・・・ないですっ!><
もうどれくらい盆休みを取っていないか忘れましたが、
まぁ~日々頑張っております^^
それでは、第2話をお楽しみ下さい。
ラウルがユウナギを説得していた頃、
紅茶を飲みながら1人、自室で頭を悩ませていた。
「はぁぁ~・・・。どうしましょう~?
また無理難題をユウトさんにお願いする事になるなんて・・・。
まだこちらの仕事も道半ばだと言うのに・・・。
それにまた別の星系に行けだなんて・・・はぁぁぁぁぁ~」
ミスティはそう嘆きの言葉を漏らしながら、
今まで悠斗が関わって来た事案の書類に目を通していた。
すると突然ミスティの自室の扉が開かれ視線を向けると、
そこに居たのは邪神の女神・ミランダだった。
ミランダは自慢の赤髪を掻き上げ笑顔を向けてくるのだが、
ミスティは溜息を着くと再び悠斗の書類へと視線を戻した。
そんなミスティの態度に片眉をピクリと上げると、
扉を勢いよく締めながら文句を言い始めた。
「ちょっとっ!私に対して失礼過ぎるでしょっ!?」
ミランダの抗議にミスティは興味をまるで示す事もなく、
ただ棒読みで受け答えをしていった。
「あっそ・・・。
って言うか、部屋に入る時はノックをしなさいよね?」
私は興味ありません・・・。
そう言わんばかりに書類に目を通しているミスティのその態度に、
ミランダはその顔を引きつらせていった。
「せっっっかくあんたにクッキーを持って来たのにさ~?
そう言う態度でいいと思ってんの?」
「・・・クッキーね~?
別に今はいいわ。私は今、それどころじゃないのよ」
ミランダの話に全く興味を示さず、
何やらブツブツと言い始めたミスティに、
ミランダはとっておきのセリフを口にしたのだった。
「あぁ~そっ!そう言う態度で居るんだったらいいわよ~?
ユウトがせ~っかく作ってくれたこのクッキーを、
私1人で食べちゃうんだから~ふふ~ん♪」
含みのある笑みを浮かべながらミスティの反応を見ていると、
今までの態度が嘘であったと思えるくらいの反応を示してきた。
「えっ、ええっ!?ちょ、ちょっと待ってっ!
い、今・・・ユ、ユウトさんのて、手作りってっ!?」
「そうよ~?でも忙しそうだから別にいいわ♪
じゃ~頑張って仕事に励んでよね~?」
そう言いながら踵を返したミランダはほくそ笑みながら、
扉に手をかけると・・・。
「まっ、待ちなさいっ!」
そう言葉が聞こえた刹那、既にミランダはその腕を掴まれていたのだった。
「・・・う、嘘っ!?
あ、あんた・・・そんなに速く動けたのっ!?」
驚きの表情を見せたミランダに、ミスティはニヤリと笑みを浮かべると、
ミランダの腕の関節を極めながら、
その手に持っていた袋を素早く奪っていたのだった。
ミスティのその動きの速さと体術に驚いたミランダは、
動揺を隠し切れず口を開いたのだった。
「あ、あんた、い、いいいつの間にそんな体術をっ!?
神力での攻撃しか取り柄のないあんたが一体どうしてっ!?」
身を乗り出す様に質問しながら迫るミランダを鬱陶しく手で払いながら、
その質問に対してくちを開いた。
「あ、貴女・・・私に対して今、物凄く失礼な事言ったんだけど?
まぁ~・・・いいわ・・・この体術の事が聞きたいなら教えるけど、
これはユウトさんに教えてもらったのよ♪」
そう言いながら奪った袋を開け、中に入っていたクッキーを手に取っていた。
「こ、これがユウトさんのて、手作りっ!?」
(こ、これを食べるだなんて・・・も、勿体ない・・・わ。
あぁ~、でも・・・少しだけ食べて、後は神力でコーティングすれば、
半永久的にこのクッキーを・・・)
ミランダが何やらしゃべっていたようだったが、
今のミスティには手の中に在る悠斗の手作りクッキーに集中していた為、
ミランダの話など上の空だったのだ。
そして一口食べた瞬間・・・。
「はむっ・・・う、嘘っ!?と、とても・・・お、美味しいわっ!
み、見た目も完璧だしあ、味もまた・・・な、なんて芳醇な・・・
そ、それに、このバターの香りもまた・・・」
ミランダはミスティの様子に「クスっ」と笑みを浮かべながら、
暫く暖かな目で見ていたのだった。
そして漸く落ち着きを見せたミスティに、ミランダは口を開いた。
「で・・・?あんた、何をそんなに悩んでいたのよ?」
そう話を切り出してきたミランダに、
ミスティは深い溜息を吐きながら説明すると・・・。
「はぁぁぁぁぁっ!?ま、またユウトに仕事を押し付けるのっ!?」
と、ミランダは激怒していた。
そんなミランダに今までの経緯を説明するのだが、
ミランダの激怒は更に増すだけだった。
それから暫くして・・・。
今度はミランダが落ち着きを見せると、
2人で話し合い、どのように話を切り出すか頭を悩ませたのだった。
そしてここはイルミネイト本部の聖域内から離れた場所に在る小屋の中・・・。
悠斗とカロン・・・それとベガが熱く会話していたのだった。
「ん~・・・まだ完成にはほど遠いな~・・・」
「けっ!ユウト~・・・だいたいてめーはよ~?
贅沢言い過ぎなんじゃねーのか~?
今のその状態でも、問題なく戦えるだろうがよ~?」
「うむ・・・カロンの言いたい事もわかるのじゃが、
鍛冶師から言わせてもらえば、夢ではないと思うがの?
それに今、ユウト殿が使っておる刀の「炎鬼では、
大敵との戦闘には耐えられんじゃろ?」
その小屋の中では、ユウト、カロン、ベガの3人が、
刀について議論を交わしているようだった。
すると・・・。
「ギギィィ」と、扉の開く音がした為、悠斗達は視線を小屋の扉へと向けた。
「トン、トン」と、小屋の扉が叩かれると、ベガが不機嫌そうに声をかけた。
「何じゃっ!?今儂らは立て込んでおるっ!
用があるなら後にせいっ!」
すると小屋の扉の外から「ブチっ!」と、言う謎の音が聞こえると、
小屋の扉を蹴り飛ばしながら、大声を張り上げ中へと入って来た。
「誰よぉぉぉっ!えっっらそうに私に言ったのはぁぁぁっ!?」
蹴り飛ばされた扉は粉々に粉砕し、扉に背を向けていたカロンに、
ビシッ、バシッ!とその破片が当たっていた。
一度はカロンも「痛てーだろうがよぉぉぉっ!」と、
大声を張り上げて見せたのだが、
その相手がミランダとミスティだとわかると、
冷や汗をダラダラと流しながら途端に声が蚊の音くらいになった。
「・・・い、痛いから・・・や、やめてくれ」
この時悠斗とベガは、カロンにジト目を向けていたのだが、
それに気付く余裕もなかったようだった。
それから暫くして・・・。
改めてミランダとミスティが椅子に座ると、
緊張した面持ちでミスティが話を切り出してきた。
「あ、あの~・・・ユ、ユウト・・・さ、さん?」
余りにも緊張し過ぎて、ミステイの視線が定まらず、
ただ泳いでいたのだった。
「・・・ど、どうしたんだよ?」
いつになくミステイの様子のおかしさに、
悠斗もまた緊張した面持ちになっていた。
そんな様子に業を煮やしたミランダが耐え切れずその口を開いた。
「ミスティ・・・あんたね~?
はぁぁ~・・・もういいわ、私が話すっ!」
そう言ったミランダが、頭を押さえながら、
ミスティの代わりに話をし始めた。
「ユウト・・・お願いがあるの」
「・・・お願い?改まって・・・一体何だよ?」
首を傾げている悠斗に、ミランダとミスティが顔を見合わせると、
今度はミスティから話始めた。
「ユ、ユウトさん・・・実は・・・ですね?」
「ん?」
「・・・ある星の人達を救って頂きたいのですっ!」
「「「・・・・・」」」
ミステイの発言に悠斗達が瞬きを数回しながらも、
状況が飲み込めずに居た。
「えっと~・・・ごめん、ちょっと何言ってるかわかんないんだけど?」
首を傾げる悠斗にミスティとミランダは事の説明をし始めた。
そして1時間後・・・。
話を聞き終え最初に口を開いたのはカロンだった。
「こっちでの仕事はまだ道半ばだろうがよっ!
なのに違う星系の揉め事に力を貸せって言うのかよっ!」
椅子から勢いよく立ち上がったカロンがそう言い放つと、
それに同意するかのようにベガが頷いていた。
「そもそもその・・・何じゃ?
やっちゃらかしたのは他所の星の創造神なんじゃろ?
どうしてその問題を何の関係もない神達が引き受けるんじゃ?
それにその仕事を、また・・・ユウト殿に頼むとは・・・
神達は一体全体何をやっとるんじゃっ!」
正論を言われたミスティとミランダは俯き言葉を失くしてしまった。
悠斗は一切口を開かず、今までのやり取りを、
ただ・・・沈黙して見ていたのだった。
何も話す素振りさえ見せない悠斗に、苛立ちを見せたカロンが口を開くと、
その返答に全員が唖然としてしまったのだった。
「・・・別にいいよ?」
「「「「・・・・・」」」」
唖然とした態度に悠斗は首を少し捻ると、
頬をポリポリと掻きながら再び同じ事を言った。
「別に・・・いいよ?」
「・・・2度も同じ事言うんじゃねーよっ!
別にその言葉が聞き取れなかった訳じゃねーんだよっ!」
同じ言葉を言った悠斗に対し、カロンは烈火の如く怒りを見せたのだが、
そんなカロンの怒りなど気にする悠斗でもなかった。
「何だ・・・ちゃんと聞こえてたんだな~?」
「・・・お、お前な~?」
余りにも悠斗らしい反応にミスティとミランダから笑みがこぼれ、
またベガも苦笑するしかなかったようだった。
だがカロンはそんな空気にほだされる事なく、
真剣な眼差しを向け口を開いた。
「いいか、ユウト?
お前の身体はまだ完全に完治した訳じゃねーんだぜ?
それをちゃんとわかってんのか?」
その声の重さから、カロンが親身になって心配している事が、
とてもよく伝わった悠斗だったが、
笑みを浮かべながらカロンを諭すようにその口を開いた。
「わかってるよ・・・カロン。
身体がまだ治りきっていない事も承知している。
だけどさ・・・。
その星系の人族達じゃ、どうしようもないんだろ?
なら、俺が行くしかないじゃないか・・・
それに・・・俺は「魔を狩る者」・・・だからね♪」
「・・・だ、だからね♪って・・・お前は本当に甘いな?
どうして他星系の人族達の心配までするのか、
俺にはまっっっったく理解出来ねぇーよっ!」
「そうじゃな~?儂もカロンの意見に賛成じゃ。
じゃが・・・。
それでも行く・・・と、言うのがユウト殿じゃろうな」
頭を押さえながら理解に苦しむカロンと、
苦笑し呆れつつもわかってくれたベガに、
悠斗は「ありがとう」とそう言ったのだった。
そして悠斗の答えを聞いたミスティとミランダは土下座をし、
悠斗に対し心から感謝の意を表して見せていた。
それからミスティはテーブルの上に、
それぞれが好物とする飲み物を置き終わると、再び口を開いた。
「それでユウトさん・・・いつ出発しようと思っているのでしょうか?」
悠斗は腕を組み考え始めた時だった。
カロンがいきなり挙手をして興奮気味に話し始めた。
「はーいっ!はいっ!はいっ!
その星には、当然俺も行くぜっ!」
「「「・・・・・」」」
カロンの唐突な発言に悠斗を除く3人が固まっていると、
悠斗がカロンに向きながら言葉を漏らした。
「・・・やだ」
「・・・・・へっ?」
「・・・お前は来なくていいっ!」
「どうしてだよっ!?お前をサポートする相棒がいるだろっ!?」
「カロン・・・お前が来るとロクな事がないから嫌だっ!」
「ロ、ロクでもないってっ!一体どう言う事だよっ!?」
などと、悠斗とカロンの言い合いが始まってしまった。
収拾がつかずにいると、
申し訳なさそうに割って入って来たのはミスティだった。
「あの~ですね、カロン?」
「はぁ?な、何だよっ!勝手に話に入ってくんなよっ!」
その物言いに目を細めたミスティは神力を漏らし始めると、
自然とカロンは冷や汗を流し始め、その勢いを弱め始めた。
そしてミステイは話を続けていった。
「カロン、貴方もご存知かと思いますが、
通常他星系に人族を移動させる場合、最大で2人までです。
勿論・・・知ってますよね?」
「あ、ああ・・・え~っと~・・・そうだった気がするな~・・・
あははははは」
カロンがそっぽ向きながら鼻の頭を掻いており、
明らかに知らないようだった。
そんなカロンをスルーしながらも話は進んで行く。
「ですからユウトさん・・・。
あと1人・・・誰か連れて行けるのですが?」
そう言うと再びカロンが凝りもせずその口を開いていった。
「俺じゃダメなのかよっ!?」
「・・・あ、貴方は・・・今、亜神でしょうがぁぁぁっ!」
「ゴツンっ!」と、重量感ある衝撃音が響くと、
カロンは悶絶しながら床を転げ回っており、
その横に鎮座するミランダのその腕には、邪神槍が強く握られていたのだった。
「ふんっ!あんたは黙ってなさいよねっ!
さっきからちぃ~っとも話が進まないじゃないのよっ!」
そう言うとミランダはミスティへと頷いて見せると、
頷き返し再び同じ質問をしていった。
「ユウトさん、誰を連れて行きますか?」
「ん~・・・2人までって事は、
いくら神であっても他星系へ行くには負担がかかる・・・
つまりそう言う事?」
悠斗の問いにミスティは小さく頷くと、
そのフォローをミランダが話していった。
「他星系へと人族を連れて行ける資格を持つのは、
その星の創造神と第2位に位置する神だけなのよ。
第2位・・・。
つまりこの星で言うとラウルの次に位置するのは、
ミスティって事になるわ」
「・・・まじか」
ミランダの話にそう答えた悠斗だが、
それを知るはずもないから当然の反応と言えたのだが、
ここにもう1人・・・居た。
「・・・へぇ~、まじか~?」
「「「「・・・・・」」」」
その声の主に全員の視線が集まり、焦り始めたのは・・・
ついこの間まで武神をやっていたはずの・・・カロンだった。
「な、何だよっ!?」
「・・・別に」
と、軽蔑の眼差しを向けるミランダ同様、
ミスティもまた冷たく突き刺さるような視線をカロンへ向けていたのだった。
それからカロンは暫くの間、2人の神達から説教を食らったのだが、
そんな中、悠斗は唐突に話し始めた。
「ミスティ・・・質問がある」
「えっ?は、はい、どうぞ」
「2人までって事は質量とか関係あったりする?」
悠斗の質問にミスティは「は、はい」と答えると、
何度か頷きながら口を開いた。
「・・・白斗にするよ」
「「「「は、白斗ーっ!?」」」」
その名を聞いた者達が口を揃えてそう言った。
「ああ、あいつならミスティの負担にもならないしね♪」
悠斗はにっこりと笑みを浮かべそう言うと、
全員が納得し了承するのだった。
そして・・・。
出発する日を明日と決めると、
その事を仲間達に伝えに行こうと腰を上げた時だった・・・。
「コン、コン」と、再び悠斗達が居る小屋の扉をノックする音が聞えた。
この時、突然叩かれたノックに、
何故かその場に居た全員の息が一瞬止まり、
心臓の鼓動がドクンっと脈打った。
悠斗達は顔を見合わせている間、
再び「トン、トン」とノックがすると・・・。
「妾じゃ~・・・悠斗様~・・・居るんじゃろ~?
ここを開けてたもれ~・・・。
貴方様に大事な用があるのじゃ~♪」
「「「「「・・・・・」」」」」
その声に聞き覚えのある者達・・・。
悠斗、カロン、ミスティ、ミランダは、その表情が凍りついた。
「も、もしかして・・・あ、天照・・・さ、様・・・で、しょうか?」
ミスティは顔を引きつらせながらそう尋ねると・・・。
「そうじゃ♪妾じゃ♪早よう~開けてたもれ・・・」と、言われ、
「ふふふ♪私も居りますよ♪」と、再び聞き覚えのある声が聞こえた。
「・・・月読か?」
恐る恐るそう尋ねる悠斗に「はい♪月読で御座います♪」と、
そう返答が来ると、「どうぞ」と言って小屋の扉が開かれたのだった。
そして扉から入って来る天照と月読は、
小屋の中に居る者達の顔を見渡すと笑みを浮かべこう言った。
「・・・妾達が力になりに来たぞよ♪」
そう言って、桜色をした小さな巾着を取り出して見せたのだった。
ってなことで~第2話はいかがだったでしょう?
今回は悠斗のパートですね^^
若干のネタバレは含みますが、本編も進んで行きますので、
これくらいはいいかな~?と、思っております^^
温かい目で見てやって下さいw
ってなことで、緋色火花でした。