セナ・ブライト
学園生活を始めた俺たちは前とそこまで変わらずにいた。俺たちは、というより、俺は、と言った方がいいかも知れない。ハルナもナナミも直ぐに友達を作っている。それに比べると俺はいつも1人だ。まぁ、前世の頃からこういう感じだったし、別に寂しくはないが、ハルナとナナミはいつも気にかけている。まぁ記憶を見る限り俺が一人でいることってあまりないみたいだからな。そのかわり昼休みや、放課後は集中して剣術の特訓ができた。とはいえマジで誰も話しかけてこず、遠巻きに見ているだけだったのはキツい。なんか、こう、全身をくまなく見られている感じがする。たまに面白がって他クラスのやつがおちょくってくることもあったが、弱かった。一応はかなりの名門校なはずなのでそれなりには強いはずなのだが...まぁ気にしてもしょうがない。それよりも、セナ・ブライトについてだ。
セナ・ブライト。主に光や雷系統の魔術の使い手。ハルナが全属性を使ってくるため相手にされた時の厄介さはそこまでないとは思うが、テンプレに置いて、オールラウンダーより特化型の方が強いのは自明の理だ。それに、彼女はビットを使ってくるらしい。ビットとは、自律飛行する機械で、所持者に合わせてコンビネーション攻撃をしてくる。しかも相手は光。光速でビットから魔法が飛んできてセナ自身もそれに加わる。自分の身を賭けるだけはあるということだ。とはいえ当然弱点もあり、それが所持者の目とリンクしているということ。
つまり、彼女が目を向けた先にしか攻撃できない。背中がガラ空きなのである。それで自律飛行する意味はあるのかと言いたくなるが、まぁ厄介なことには変わりはない。
よって鍛えるのは自分の素早さ。いくら魔法でブーストできると言っても鍛えておくに越したことはない。そうして一週間がすぎていった。
そうして決闘当日。
溢れんばかりの人があつまり、非常にうるさい。中には賭けている人もいるようだ。当然即落ち少女にベット。俺にやってるやつは一人も居ないだろう。
それはそうだ。いくら勇者と言っても所詮は一般人。Aクラスと言ってもその中でも上位にいる彼女に勝てるわけが無いと思っているのだろう。
ナナミ「お兄様、頑張って。」
ハルナ「あの失礼な人に勝って見返して!」
こいつら以外は。まぁ俺としてもここまで言われて答えない道理はない。負けるにしても、接戦で負けたいものである。
セナ「準備はできたかしら?」
エイト「一応は。罵倒はしないのか?お前なんかが勝てるわけないって」
セナ「あら。舐めないで欲しいですわ。わたくしは貴族。であるならば相手には真摯な心で向き合います。わたくしとて誇りがございますもの」
エイト「その態度には好感が持てるが、ならどうしてこんな勝負を始めた?名を馳せるためか?それともただ単に気に入らないから?」
セナ「わたくしにも事情がありますの。勝ったら教えてもよくてよ。当然権利関係なしに」
エイト「なら、聞いてみるとしますか。」
実況「さあ、始まります、オリン決闘場!戦うのは閃光の王貴族セナ・ブライト!対するは勇者に選ばれたエイト・ストツィア!その実力はいかに!さあ、始めてください!」
ゴーンと鐘がなり、出てくる灰色の剣。勇者には相応しくないだろうが、これが俺の武器である。勇者に対する特典の1つ、収納袋。何故か時を止めて中にものを入れることができる便利なものだ。
対する即落ち少女はやっぱりビット。しかし4つもあり、しかも近接用か短い刃までついている。まったくもって油断できない。と、いきなり
フォン...!
とバリアのようなものが出てくる。これは一体...
実況「さあセナ・ブライトはいつものようにビット四機!対してエイト・ストツィアは、灰色の剣か?勇者らしくもない薄汚れた剣!とはいえAランクなのは間違い無いのでなかなかの名剣なのでしょう!
ちなみに、周りにあるフィールドは観客への被害用とその中でのダメージを肩代わりする能力があります!実際には傷はつきますがこのフィールドがあれば死ぬこともない!存分にやりあっていただきたい!」
要するに死亡防止フィールドかってあぶな!?
バッとその場から飛び退くと飛来する雷。
セナ「よそ見厳禁ですわよ。さぁ貴方達、いきなさい!」
そうしてランダムに飛んでくる雷を身体強化の魔法にて交わしていく。雷において、みることは厳禁。ただひたすら直感に従って避けていく。これは運勢増加魔法のラッキークローバーと直感を鋭くするシックスセンスにて行えることであるため、この時点で少量ではあれど魔力を消費している。とはいえ、避けるだけな訳ないだろっと!
反射魔法、リフレクトブレイド!
魔法と物理を両方弾くリフレクトブレイドで雷を相殺したり相手に返す。そしてそのまま人差し指を相手に向ける。
ミストバレット!
当然のようにビットに弾かれたそれは、霧を周囲に起こす。それにより相手から見えなくなり、攻撃が止む。
いまだ。周囲に電気が漂い、さらにそこに水滴が漂う。となれば当然..
バチバチッと光る4つのビット。それを頼りに剣先から魔法を放つ。
エナジーブレイド。魔力を凝縮しビットへと向けてそれが放たれる。爆発と同時にさらに魔力を凝縮し..嵐として放つ!
トルネイドバースト!
風の魔法であるそれがこの空間内を吹き荒れる。その強力すぎる風により前は見えないがガキンガキンとおそらくビットであろうものの音が聞こえる。これで少しでもダメージを与えれればいいか...と思うが、その期待はすぐに打ち砕かれた。
セナ「まあまあでしたわね。ビットがそう簡単に壊れると思いまして?ただ、かなりの威力ではあったと思いますわ。相手が悪かったですわね」
エイト「傷すら付かないのか...!?」
目の前にはなんてことないかのように立っている即落ち少女。さらにビットは問題ないかのように浮いている...。くそ、思ったより壁がたかいぞ!?にしても1つも傷がつかないものか...?と、
バチッ...バチッ...!
セナ「あら、故障かしら?珍しいことですわね...ただ、問題はありませんわ。さて、少し試してみましょうか。ライトニングフルビットバースト。」
そう呟いた瞬間バッと離れるビット。そして、次の瞬間。
びいいいいいいいいいいっ!!!!
エイト「っ、ブライトネスシールド!」
光のシールドが俺を覆うと同時、ものすごい量の雷がビットからビームのように放たれる。ブライトネスシールドは攻撃を弾く効果もあるが、その勢いが強すぎて弾くこともできない。
と、そう耐えていると
セナ「やっぱりそうね...仕方ありません、突撃しなさい。」
そういうと、先ほど故障した一機がそのまま向かってきて刃を突き立てる。そして、シールドが弾いた瞬間..
セナ「ライトニングビットバーン」
ドッゴォォォォン!!!
実況「爆発ーーーー!!!!」
ナナミ「お兄様!?」
ハルナ「エイトくん!?」
実況「セナ・ブライトのライトニングビットバーン!はたしてエイト・ストツィアは無事なのかぁぁぁぁぁ!?」