第52話:とりあえず、宝物を探索する。(盗賊団④)
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結論から言えば、ファビアーノさんからもらった商会のコインは効果大であった。最初は「ここの責任者の方にお会いしたいのですが…。」と遠慮深くお願いしても、お店の人からは訝しい視線を送られただけだったが、コインを見せると「少々お待ち下さい。」と言われ、あっという間に応接間に通された。素人目から見ても、高価そうな調度品が置かれた部屋だった。
「お待たせして申し訳ありません。」
部屋に入ってきたのは、一人の男性だった。ファビアーノさんとは違い、細身で長身。端から見れば普通のおじさんにしか見えないが、その丁寧な挨拶とは裏腹に、鋭い視線を感じた。まるで私という人物を値踏みするかのように。
「ベルニ商会のデニズリ支部を預かるマルコと申します。」
「冒険者のヒコサブロウです。急に訪問して申し訳ありません。」
「いえいえ。会長からお話は伺っております。」
「ファビアーノさん…、失礼しました。ファビアーノ会長から?」
「ははは。いつも通りの呼び方で結構ですよ。あの方はそのような小さなことを気に掛ける方ではありませんから。それに商会のコインを渡された方です。それは会長にとっては友好の印でもあるのです。特に個人に渡された場合は。」
「恐縮です…。」
「さて、お話を戻しますが、会長からはおそらくこちらに寄るだろうから、その時は手助けをするようにと連絡を承っています。」
「なるほど…。ということは、私がこちらを頼ってくるのは想定内ということですか…。」
「そうですね。推測するに領主様のお屋敷に行って門前払いを受けたというところですか。」
「…はい。」
「答え辛い質問をしてしまったようですね。ご心配されなくても、事情も会長から伺っております。例の件の調査でしょう?」
「………。」
「いやいや。これも答え辛かった質問でしたね。ただ、いまは領主様にお会いするのは難しいかと思います。」
「と言いますと…。」
「例の件で屋敷の警備は厳重になっています。それに犯人探しにも躍起になっておられます。領主様は賢明なお方ですので、あくまでも内密に動いているようですが、私たちのような街の経済を担うと自負する商人や優秀な情報屋は、すでにこの件を掴んでいます。人の口に戸はたてられないということです。」
「なるほど…。それでは変に隠し立てしても仕方ないですね。言われる通り、バルト家、いや領主様の屋敷で門前払いを受けました。陛下からは公爵家には伝えておくとは聞いていましたが、よくよく考えれば、門番に至るまでそれが徹底されているのもおかしな話です。完全にこちらの落ち度です。変に警戒感を持たせてしまいました。」
「それで我が商会に来たと…。」
「はい。すでに推察されていると思いますが、商会の伝手を使えば、もしかすればと思った次第です。」
「ははは。正直なお方です。」
「すみません…。」
「いえいえ。先程も申し上げたように、会長からはあのように言われていますので、喜んでお手伝いしましょう。それにこの件があって以降、何となく街の雰囲気が暗くというか、あまりよくありません。少しピリピリしています。」
「そうなのですか?」
「はい。お気づきになられましたか?街を巡回する衛兵が多いことに。」
「いいえ。街にはさっき着いたばかりでして。確かに衛兵が巡回しているのは見かけましたが、こういうものなのかと思っていました。」
「本来はもっと活気が溢れる街です。ただあの件以降、街を巡回する衛兵が増え、事情を知らない住民たちは少なからず不安を感じています。そういう雰囲気が強くなると、商売にも影響を及ぼすものなのです。だから、これはあなたが会長のご友人というだけではなく、街全体の問題でもあるという訳もあるのです。」
「なるほど…。改めて依頼の重大さを知った思いです…。」
「さて、まずは領主様にお会いしたいということですね?」
「はい。とりあえず当時の状況を聞き、情報を収集しなければ、手の付けようがありません。」
「わかりました。面会の申し入れはこちらからしておきましょう。表向きは私が面会を希望しているということで。ヒコサブロウ殿には護衛ということで随行してもらうかたちでよろしいですか?」
「はい。よろしくお願いします。」
「それでは、面会の時間がわかったら商会の者を宿屋に寄越しましょう。宿屋はどこに?」
「それが…。実は事情がありまして、今回は一人で来たわけではないのです。一応メンバーには目的をさらっとは伝えておりますが、陛下のことはもちろん、公爵家のことも伝えておりません。」
「なるほど…。それでは連絡方法を考えなければ…。面会が急に許可される場合もありますので…。」
「それなら心配ありません。」
私は席を外し、魔法を唱える。
「出でよ、使者の者。我が求むはメクピジョン。」
魔法陣から出てきたのは、一匹の灰色の鳩だった。一見するとどこにでもいる普通の鳩だが、遠方との通信を得意とする鳩だ。要は伝書鳩がモンスター化したと考えればいいだろう。
「私の召喚獣、メクトプです。彼を残していきますので、何かあれば直接言って下さい。あとは念話でこちらにも伝わりますので。」
「よろしくお願いします。」
「これは…。召喚獣というものを初めて目にしました。しかも人間の言葉を理解しているとは…。会長の言う通り、優秀な方のようですね…。」
「いいえ。まだまだ修行中の身です。それでは、お手数ですが、よろしくお願いします。」
―――――
ベルニ商会の店を出た私は、とりあえず連絡が来るまで待機となったということもあり、商店街にいるであろうミナたちと合流することにした。とは言っても、ミナたちがどこにいるのかはわからないので、街の様子を見る意味も含め散策することにした。
マルコさんに言われたからではないが、実際に街を散策してみると、やはり衛兵たちの姿を多く見かける。貿易港の街として栄えるこの街は、バシュラトよりも規模が大きいのだろうが、やはりそれにしても衛兵たちの巡回というか警戒の目が多い気がした。
「ぐすっ、ぐすっ…。」
まだ昼間だが、酒場にでも行って、街でも噂話でも聞いてこようかと思っていた矢先、服屋の軒先でしゃがんで泣く小さな子供を見つけた。まわりの大人も、気にはしているようだが、誰も近寄ろうとはしなかった。
「君、どうしたのかな?」
「ぐすっ…。おにいちゃん、だれ…?」
その小さな女の子は、右手にかわいいくまのぬいぐるみを持っていた。
「僕の名前はヒコサブロウ。君は?」
「うん…。わたしはエマっていうの…。」
「そっか…。エマちゃん、それでどうしたのかな?お母さんはどうしたの?」
「ううう…。ぐすっ…。えっとね…、イザベルとはぐれちゃったよ~。」
「ほらほら泣かないで。そのイザベルって人はお母さんかな?それともお姉さんかな?」
「ぐすっ…。ううん。うちのめいどさん。」
メイドか…。使用人がいるってことは、この子はどこかのお偉いさんのご令嬢という感じか。とりあえず衛兵の詰所にでも連れて行こうかと思った時だった。
「あれ、ヒコサブロウじゃない。」
振り返ると、両手に荷物をいっぱい持ったミナだった。
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