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第51話:とりあえず、宝物を探索する。(盗賊団③)

ブクマや評価ありがとうございます。

 パカッ、パカッ、パカッ。


 快晴に恵まれ、暖かな日差しが差し込む今日この頃。私たちは、ベル王国の南部にある港町「デニズリ」を目指し、バシュラトから乗合馬車で移動していた。そう私たち(・・)である。


「デニズリって港街よね。名前は聞いたことあるんだけど、行ったことはないんだよね~。王国の玄関なんて言われてるし、バシュラトとはまた違った物が集まってそうで楽しみ~。」

「お姉ちゃん、遊びに行くんじゃないんだからね。」

「わかってるわよ。セレン。だけど、セレンも楽しみじゃない?港町だから海の幸もきっと多いよ。」

「まあ、それは楽しみだけど…。」

「ミナの言う通りだよね。私も海の幸楽しみ。というより海自体が楽しみかも。私たちの故郷はまわりが山ばかりだから、海を初めて見るんだよね?ハーレ。」

「そうね。湖なんかよりも断然大きいって聞くし、それを見られるのは楽しみね。あと買い物も楽しみね。」

「………。」

「いや~お客さんも隅に置けませんね。可愛らしい女の子と旅行ですかい?」

「ははは…。」


 確認だが、私は陛下の直接依頼により、盗賊団「黒い霧」を追い、盗まれた宝物を取り返すために、デニズリに向かうことになった。もちろん一人で。しかし現在は5人。ミナとセレンの姉妹。アイラとハーレの幼馴染。そして私。


 どうしてそうなったかと言えば、話は昨晩まで溯る。


 昨晩ミナが急に一緒に旅に出ると言い始めたからだ。セレンはそれに驚き、姉を宥めたが、ミナ曰く「このままだと、その内、ヒコサブロウは拠点を移すかもしれないから、付いてくことにした。」とのことだった。私はそれを否定した。いや、否定し切れなかった。しばらくはバシュラトを拠点にするつもりだったが、今回の依頼を見るに、しばらくはバシュラトに帰ってくることはできなさそうだった。それに今後の活動の如何によっては、拠点を移すことも大いに考えられた。冒険者にとって、活動拠点を移すことはそんなに珍しいことではない。多く儲けられる場所へと移動するのは、何も商人だけではない。


 最初はミナを説得していたセレンも、いつの間にかミナに説得される側に回っており、最後は「お姉ちゃんが行くなら私も。」と一緒に同行することを願い出た。そしてその光景を見ていたアイラは、意を決したように「じゃあ私も行く。」と言い出し、ハーレもごめんねと言いつつ、どこか楽しそうに「じゃあ私も。」と言い出したのである。ミナとセレンはともかく、ジャンやビルとパーティーを組んでいる二人までそんな勝手なことを言っても大丈夫なのかと彼らに問い質すと、答えは「是」だった。どうやら冒険者稼業も板に付いてきたから、一度故郷に戻ろうという話になっていたらしい。彼女たちがいないならいないで、彼らもその間は自由に過ごすと言っていた。


 そういうわけで外堀を埋められてしまった私は、彼女たちの同行を渋々許可するしかなかったというわけだ。一応旅の目的というか依頼内容は機密事項に引っかからない程度に話しておいた。彼女たちは盗まれた宝物を取り戻すという認識になっており、それが国宝級だということも、これが国王陛下直々の依頼だということも知らない。ミナは「宝物探しなんて、いよいよ冒険って感じね。」と楽しそうに話し、案の定セレンから「真面目にやってね。」と窘められていた。


 そして時は今に戻る。彼女たちは楽しそうに、これから向かうデニズリについて話に花を咲かせていた。ちなみに乗合馬車といいつつ、車内には私たちしかいなかった。


 いくつかの宿場町を経て、バシュラトを発って10日目の朝。私たちはバルト家が治める港町デニズリに到着した。


―――――


「うわぁぁぁー、大きいぃぃぃ!これが海なのね!」

「ほんとだー!村の近くにあった湖より全然大きいー!」

 ミナとアイラは初めての海に大きく感動しているようだった。セレンやハーレも何も言わずに、ただ海を眺めている。私は前世で当然海を見たこともあるし、泳いだこともある。だが、よく考えればこの世界での海は初めてだ。そういう意味では、彼女たちと同じようなリアクションを取るべきなのかもしれない。案の定、ハーレからは「海見たことあるの?」と訊かれ、とりあえず「まあ…。」と何とも言えない返答をした。


 さて、これから仕事の時間である。無事にここでの宿を取り拠点を得た私たちは依頼に着手することにした。とは言っても、ミナたちとは別行動である。これから公爵家に向かうにあたり、さすがに彼女たちを連れていくことはできないと判断した。彼女たちには公爵家の宝物が盗まれたことは秘密にしているからだ。彼女たちは、自分たちも依頼主から話を聞くと言ってはくれたが、全員で言っても仕方がないからと適当な理由を付けて断った。依頼主から話を聞いてもすぐに行動に移せるかはわからないからな。結局私が依頼主に会う間、彼女たちは街を散策するそうだ。


「こんにちは。ここはバルト様のお屋敷で間違いないでしょうか?」

「なんだ、坊主。ここはお前のような者が来る場所ではない。即刻立ち去るがいい。」

 デニズリの街は海に面している港から順に商業街、平民街、そして貴族街に分かれている。貴族街は小高い丘に区画されており、丘の一番高い場所に、この地を治めるバルト家の屋敷がある。これは商業街で住民に聞き取りしてわかったことだ。まあ港からも目立つ屋敷だから何となく予想はしていたが。そして、屋敷の門番ともこういうやり取りになることも容易に想像できたことだった。


「ここのご当主様とお会いしたいのですが…。」

「何だと。お前、名前は?」

「はい。ヒコサブロウと申します。冒険者をしています。」

「一介の冒険者が当主様にお会いできるわけがないだろう。早く立ち去れ。さもないと衛兵に突き出すぞ!」

「はい…。わかりました…。」

 私は門番に取り付く島もなく追い返されたのであった。


 とりあえず商業街まで戻ってきたものの、これからの予定がなくなってしまった。というより予定が狂ってしまった。おそらく商業街を散策しているであろうミナたちと合流するということも考えたが、それだと依頼が先に進まない。何とかバルト家と面会しなくてはならない。まずは情報収集が必要かな…。そう思った私は、この街の冒険者ギルドへと足を運んだ。


 こちらが予想した通り、ここの冒険者ギルドのバシュラトと同じように酒場が併設されていた。酒場で情報収集というのは前世で言うところのRPGの基本だ。ここで早速、事に取り掛かりたいと思ったが、何分時間が早いせいか、酒場にいる人はまばらだった。ギルドの受付嬢から話を聞いてもいいのかもしれないが、ここのギルドは初めてで、いきなり領主であるバルト家のことを詮索すれば、あらぬ疑いをかけられるかもしればいと思い、結局ギルドでの情報収集は断念した。


 しかし、ギルドの建物を後にし、目的もなくふらっと歩いていた時、とある看板が目についた。それはベルニ商会の看板だった。さすがの大商会。当然この街にも支店があるようだった。そこで私はあることを思い付き、その建物へと歩みを進めた。

読んで下さり、ありがとうございます。


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もし「おもしろい」「続きを読みたい」と思われた方は、宜しくお願い致します。


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