第46話:とりあえず、国王陛下に拝謁する。
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ベル王国。
ファーロニアの5大国の一つに数えられ、その地理的条件の優位性から、昔より交易を中心に栄えた国家である。また、国民の教育にも力を入れ、王都バシュケントを始め大都市には教育機関も多く存在する教育国家でもある。その国の国王に謁見するというのは名誉なことなのだろう。
私、ヒコサブロウは非常に緊張している。ファビアーノ氏からは「国王陛下が君に会いたい」的なことを聞いたが、こちらはお偉い方に会ったことがほとんどないのだ。領主様によくしてもらってる程度で、まさかこの国のトップに会うことになるとは思ってもいなかった。「ヒコサブロウさん、もうあなたは神様に会っているじゃありませんか~。」とミコトさんに突っ込まれそうだが、それはそれ。これはこれだ。とにかく前世100年間生きた私でも、こういう経験はなかったため、非常に緊張している。
「ヒコサブロウ殿でもそういう表情をするのだね?」
「もちろんです。ファビアーノ様。ずっと緊張しています。強いて言えば、服装に決まりがなかったのは良かったですが…。本当によろしいんですか?いつもの普段着で?まあ、私は正装みたいなものは持っておりませんが…。」
「ああ、大丈夫だ。君は冒険者だからな。過去に冒険者が陛下に拝謁した際も、冒険者は普段の恰好だった。だから問題ない。それともう私のことは様付けしなくていいぞ。一応依頼主という関係は終わったからだ。これからはファビアーノとでも呼んでくれ。」
「はあ…。それではファビアーノさんとお呼びします。」
「まあ固いがいいだろう。君は冒険者なのに固いな。」
「ファビアーノさんの冒険者がどういった人物を指しているのかは図り兼ねますが、私はこういう姿勢ですので…。」
「はっはっは。その実力でその謙虚さ。ますます気に入ったぞ。」
「ありがとうございます…。」
その後、お付きの人から「謁見の間にお入り下さい。」と言われ、二人で中に入った。
―――――
あれが玉座か。跪いているから、はっきりとは見えなかったが、玉座は前世のイメージ通りだ。玉座の隣にも席がいくつかあり、合計4つの席が用意されていた。おそらく王族が座るのだろうと推測する。そして玉座を中心に両端には、王国の重臣と思われる方々がすでに並んでいた。緊張は最高潮だったが、ここは100年生きた前世の社会人の記憶を思い出し、社長に会うだけ、役員に会うだけと自分で自分に言い聞かせた。そうすると、少しだが緊張が和らいだ気がした。
一方で、私の前で跪いているファビアーノさんは堂々としているのでさすがだと思った。
「王様の御成りである!」
その言葉で誰かが入ってくる気配がした。私は再度姿勢を正す。
「ふたりとも、表を上げるがよい。」
低くもしっかりと心に響く声がした。その声に合わせて、私は顔を上げた。そこに鎮座していたのは、40歳後半と思われる男性。その顔からは覇気が感じられ、この巨大国家をまとめてきた自負と何ものにも屈しないという力強さが感じられた。
「余がエンゲルベルト・フォン・ベルである。こたびの一件、ご苦労であった。」
ファビアーノさんは何も言わない。当然私もだ。私が何かを言う場面ではないからだ。
「よい。余への発言を許す。」
「はっ。この度は我が商会が王国に多大なるご迷惑をおかけして申し訳ございません。このファビアーノ・ベルニ、どのような罰も受ける所存です。」
ファビアーノさんが言っていたことは事実であった。暗殺事件や不正事件があったが、ある意味それは内部での争いで、王国とは無関係だった。しかもダミアーノは禁制品にも手を出していたとなると、商会自体に何かしらの罰があっても文句は言えないのだ。
「よい。その件は報告を受けている。今回はお前の弟とその一派がしでかしたこと。奴らには裁きを与えるが、商会自体にはこれまでの王国への貢献を考慮して不問とする。だが、今後はしっかりと商会の舵を取り、王国への忠義を果たしてくれると有難い。」
「ははっ。寛大なご処置、誠にありがとうございます。このファビアーノ・ベルニ、粉骨砕身して国家のために働きたいと存じます。」
「うむ。だが、お前も寄る年波には勝てぬであろう。早く後継者を見つけろよ。」
「ははっ。有難きお言葉。」
「さて、商会の話はここまでで良い。それでファビアーノ、後ろに控えるのが…。」
「はい。冒険者のヒコサブロウ殿です。今回の件については、その卓越した能力で暗殺部隊の壊滅、ダミアーノ一派のアジト探索、役員会議での一派捕縛と縦横無尽の活躍でございました。」
ファビアーノさん…。それは褒め過ぎです。嘘ではないけど、もっと謙虚さを出して下さい…。まわりの重臣たちからも「まだ子供ではないか」とか「だいぶ若いな」という声が聞こえてくる。
「うむ。そうか。あのファビアーノがそこまで褒めるとはな。冒険者のヒコサブロウよ。それに相違ないか。」
「ははっ。概ね相違ございません。ただ私は自分にできることをしたまでです。」
「はっはっは。そうか。確かに報告にあった通り、最近では見ない謙虚な冒険者だな。」
最近よく思うんだが、冒険者というのはもっと威張っているものなのだろうか…。謙虚、謙虚とよく言われるが、それが普通のことだと思っている。これも前世での経験によるものなのだろうか。まあ、最近では謙虚でいて悪いことはないからいいかと思っている。これで普段通りなのだ。
「ヒコサブロウ。聞けば、お前はDランク冒険者のようだが相違ないか?」
「はい。相違ございません。」
「だそうだ。アルノー。もう少しランクを上げてやったらどうだ?」
「はい。こちらでも調べてみたところ、彼はこれまでバシュラトでいくつかの難事件を解決しているようです。これらから推察するに実力はCランク以上で問題ないでしょう。そして今回のファビアーノ氏の件。特殊ではありましたが、Cランク冒険者に求められる護衛依頼もこなしたと見るべきかもしれません。」
「ほう。それは興味深いな。ということは…。」
「はい。昇格の条件は満たしているかと…。」
「そうか。それではヒコサブロウ。お前は今日よりCランク冒険者として活動せよ。」
「ははっ。これからも冒険者として王国のために微力ながら貢献して参ります。」
「うむ。それでは今日はこれまで。」
こうして、私の国王陛下への拝謁は終わったのだった。
―――――
場所は変わり、王城の一室。
私はここで待たされている。陛下への拝謁も無事に終わり、帰ろうかと思っていた矢先、王城の執事みたいな人にここに案内され、待つように言われたのだった。一方でファビアーノさんは、「また今度ゆっくり寄ってくれ。」と言って、自分の用事は済んだとばかりに、先に帰っていった。不安。
さすが王城の一室。素人目からしても高価な調度品が揃えられているのがわかる。鑑定能力で見れば、詳しい情報もわかると思うが、怖くてそんな気もしなかった。
そんなことを考えていると、背後の扉が開く気配がした。私は誰が入ってきたのが気にはなったが、わざわざ振り返るのも失礼かと思い、そのまま座っていた。しかし、すぐさま立ち上がり平伏した。
そこにいたのは、さっきまで拝謁していた陛下ご自身だったからだ。
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