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第43話:とりあえず、商人を護衛する⑦

ブクマありがとうございます。

 当初の予定よりも早くコザシェヒルを発った私たちは、特に問題なく王都に着くことができた。しかし、まだ街へは入らず、街の近くで休息を取っていた。


 ベル王国の王都にして最大の商業都市バシュケント。王国内全ての物流の中心地でもあり、王立学院がある教育都市でもある。ヒト・モノが集まるこの大都市は、バシュラトとは比較にならないぐらい程の賑やかさを持っていた。そして、ここにベルニ商会の中心拠点もあった。


 ここまで無事に来ることができたことを踏まえると、やはりダミアーノは、こっちが死んでいるものと思っているようだ。しかしそれは裏を返せば、こちらは王都で動きに制約があるということだった。特に事が起きるまでは、ファビアーノ氏とミーナが生きていることは絶対に秘密にしておかなくてはならなかった。


「ファビアーノ様。とりあえず王都近くまでは無事にくることができました。しかし、それをダミアーノの一派に知られては面倒です。どうされますか?」

「うむ。屋敷には戻れんな。おそらく屋敷には奴の目が光っているであろう。それに最悪の場合、私が死んだという情報がもたらされているかもしれん。」

「どこかに身を隠れる場所はありますか?」

「一応当てはある。私の部下の家だ。」

「その人は信用できる人なのですか?というより、ファビアーノ様の部下であれば、奴らに監視されているのでは?」

「問題ない。ヒコサブロウ殿の言う通り、私の側近や派閥に属しているものは、もうすでに奴の監視下にあるだろうが、その者は陰で私を支えてくれたものだ。」

「わかりました。ではそこに向かいましょう。」


 ファビアーノ氏に案内され、王都の郊外へ向かって移動を開始した。聞くところによれば、近くにデミル村という小さな村があり、そこにその人物はいるらしい。小さな村であれば、街に入る時に必要な身分証明も必要ないだろうから、隠れるのには打ってつけと言えるだろう。


 私たちは夕刻にデミル村に到着した。荷馬車は近くの森に護衛隊とともに置いてきた。さすがに目立つと考えたからだ。ここにいるのは1台の馬車と、ファビアーノ氏とミーナ、世話係のロレッタさん、護衛隊長のアロルドさん、そして私たち冒険者だ。それでも結構な人数になる。しかしこれ以上人数を減らすと、何か不足の事態が起きた時に、対応が後手を踏むと判断した結果だった。


 デミル村は言ってはなんだが、そこは少し寂れた村だった。近くに王都があることを踏まえると、余計にそれを引き立てた。

 馬車がある家の前で停まる。それは質素な2階建ての一軒家だった。フード被ったファビアーノ氏がドアをノックする。すると奥から誰かが来る気配がした。一応私とバートさんが前に出る。家から出てきたのは、初老の男性だった。


「どうぞ…。」


 その男性はそれだけを言って、私たちを中へ案内した。ファビアーノ氏が先頭に入り、私たちは仕方なくそれに従った。しかし、特段怪しい気配は感じられなかった。家に入った私たちを静寂が支配する。


「ラニエロ。久しぶりだな。」

 その静寂を破ったのは、ファビアーノ氏だった。


「はい、ご主人様。やはり生きていらっしゃったのですね。お嬢様も大きくなられて。」

「うむ。しかし、やはりということは…。」

「はい。ご推察の通りです。ダミアーノはご主人様が急死したとして、日程を早め、急遽役員会議を招集するようです。その情報にご主人様の陣営も衝撃を受け動揺しています。少なからず離反した者もおります。」

「わかった。状況は思った以上に緊迫しているようだ。お前にも迷惑をかけた。」

「ほっほっほ。私が何十年ご主人様に仕えているとお思いで。ダミアーノがご主人様が死んだと言った時、私は直感しました。これはご主人様の策略だと。そしてこの通りです。」

「ふむ。まあ、この策略の図面を引いたのは、ここにいるヒコサブロウ殿だがな。」

「ほう。この若者が。なるほど、相当な切れ者のようですな。」

「ああ。しかも相当の手練れだ。奴が差し向けてきた暗殺部隊を一瞬で制圧しおった。」

「いいえ。偶々です…。」

「ほっほっほ。謙虚さも一流ですな。さすが、ご主人様。良き人材を見つけましたな。」

「はっはっは。それこそ偶々だ。それで、役員会議はいつだ?」

「はい。明朝です。」

「そうか…。それはギリギリだったな。」

「どうなされるおつもりで。」

「当然、役員会議の場で奴の悪事を証明し処断する。その証拠集めはすでに終えている。」

「かしこまりました。王都へ入場する時の細工はお任せ下さい。しかし、この人数はさすがに厳しいかと…。」

「わかっている。王都に行くのは私とヒコサブロウだけでよい。あとはここに残す。」

「ご主人様!それはいくらなんでも危険です。」

 それに異を唱えたのは、アロルドさんだった。彼はファビアーノ氏の護衛隊長。自分の主人を憂うのは当然だった。しかしファビアーノ氏は譲らなかった。


「いや、王都に入るのはごく少数だ。お前にはここでミーナを守ってもらう。それに単純な戦力で言えば、ヒコサブロウ殿が適任だと判断した。何もお前が頼りないと言っているのではない。お前は奴らに顔も割れているし、それに何よりもその目で見たはずだ。彼の実力を。」

「はい…。かしこまりました。ヒコサブロウ殿、どうかお願いします。」

「わかりました。絶対にファビアーノ様をお守り致します。」

「ミーナもそれでいいな?」

「はい。お爺様のお言いつけならば喜んで。」


 私たちはその晩はラニエロさんの家に泊まり、明け方、馬車で出発した。馬車の御者はラニエロさんで、馬車には野菜や雑貨等の荷物が入っている。ファビアーノ氏と私はその荷物に紛れて王都の門を潜ろうとしていた。


 王都の正門前。まだ朝が早いというのに、正門には結構な人だかりができており、王都に入ろうと列を為していた。ラニエロさんはそのまま馬車で列に並び、何の躊躇もなく入場しようとした。衛兵が身分証明を行う。


「次はと…。なんだ、ラニエロか。今日は早いな。」

「ええ。今日は新鮮な野菜も取れましたので、市場に卸しに行こうかと…。」

「それにしては随分大荷物だな。これで全部か。」

「はい。」

「一応改めるが…。」

「グイド様。いつもご苦労様です。これは少ないですが…。」

「ほう…。いつも悪いな。よし通っていい。」

「ありがとうございます。」

 さすがファビアーノ氏が信頼する人物だった。あれは私には真似できない。普段からの積み重ねだなと思った。


 私たちは無事に王都へ入った。目指すは役員会議が行われる商会の中心地。私たちの戦いは佳境を迎えようとしていた。

読んで下さり、ありがとうございます。


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もし「おもしろい」「続きを読みたい」と思われた方は、宜しくお願い致します。


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