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第42話:とりあえず、商人を護衛する⑥

 ダミアーノの不正を暴く。


 そのためには確実な証拠を掴まなければならない。ここコザシェヒルには、奴の拠点があるらしく、そこに証拠もあるだろうとファビアーノ氏は言っていた。しかし、その拠点の場所を突き止めていたと思われるファビアーノ氏の部下はすでにこの世にいない。したがって、私たちで拠点を探し出し、証拠を掴まなければならない。


「それで、どうするよ。ヒコサブロウ。」

「そうですね。ファビアーノ氏にはああ言いましたが、私たちも目立つことは避けたいのが正直なところですね。」

「そうだよな。一応俺たちも死んだことになっているしな。」

「そうですね。護衛を含めて死亡扱いですからね。」

「じゃあ、おいそれと聞き込みもできねえな。まあ、直感的にスラム街が怪しいとは思うが…。」

「スラム街ですか…。いかにもという感じですね。」

「行ってみるか?」

「いいえ。止めておきましょう。これから夜になるのに、スラム街に行くなんて、ことさら目立ちそうです。」

「そうだな…。じゃあ、打つ手なしか…。」

「いいえ。ここは精霊を使います。」

「えっ…。」


「出でよ、風の遣いよ。我が求むは麗しき精霊。」

 私の詠唱に応じて、シルフィーネが召喚される。それを見たバートさんたちは、もう突っ込まなかった。


「じゃあ、シルフィーネ。配下の精霊も使って、ダミアーノの拠点に関する情報を集めてきて。」

「かしこまりました。主。」


「私たちは情報が集まるまで宿で待機しましょう。」

「なんか、もう突っ込むのも疲れたわ。てか俺らいらないんじゃね?」

 バートさんは笑いながら部屋に戻っていった。


―――――


(主。いまよろしいでしょうか。)

 シルフィーネから念話が入った。

 時刻は夜中。もうすでに街は寝静まっていた。


(どうした?シルフィーネ。)

(我が配下の精霊が、ダミアーノの拠点らしき建物を発見したようです。とある建物にいる男たちが「ジルド様」と話しているところを聞いたようです。)

(わかった。場所は?)

(はい。スラム街の端にある建物で、どうやら地下室があるようです。)

(わかった。そこまで案内を頼む。)

(かしこまりました。主。)


 私はバートさんたちを起こし、シルフィーネに案内されて、その建物に向かった。スラム街を横切るかたちとなったが、幸い人目にも触れず、そこまで辿り着くことができた。


 その建物は連絡があった通り、スラム街の一画、一番端に建っていた。他の建物との違いは見受けられず、傍から見てもそれが大商会副会長の拠点には到底見えなかった。唯一の違いと言えば、出入口に見張りがいることぐらいだった。


「あれか?」

「はい。あの見張りがいる建物がそうです。」

「見た感じはただのボロ家だな。しかも小さいな。」

「どうやら地下室があるようです。」

「なるほどな…。それで見張りはどうする?騒がわれると厄介だぞ。」

「私が行きます。運よく見張りは一人ですし。何とかしてみます。」


 私は建物に向かって歩き出した。ある程度近付いていくと、向こうもこちらに気付いたようで、じっと見てくる。


「あの~。」

「あっ?何だお前?ここはガキがくるところじゃねえよ。さっさと失せな。」

「スリープ」

 彼の言葉が終わるが終わらないかのタイミングで睡眠魔法をかける。効果は絶大で、見張りの男はその場に倒れ込んだ。男は抱えて建物のわきに追いやり、バートさんたちに合図を出した。


「お前もう何でもありだな。」

「そんなことありませんよ。ここからはバートさんのパーティーに期待してます。」

「おう任せとけ。雑魚はこっちで片付けておくぜ。」

「中には5名程しかいないみたいので、何とか制圧できるでしょう。もしかしたら、証人になるかもしれないので、できるだけ殺さない方向で。」

「ああわかってる。」


 私たちは建物にそっと侵入した。1階には誰もいない。全員地下室にいるようだ。奥に地下室へと続く階段が見えた。静かに音をたてないように階段を下りる。すると、男たちの声が聞こえてきた。


「さっさとしろ!ジルド様からの指示だ。今日中に拠点にある書類を移すんだ。」

「「「「へい。」」」」


 どうやら拠点を移すつもりらしい。ギリギリセーフだったというところか。あまり時間をかけてられないな。


「スリープ」


 指示役と思われる男以外を睡眠魔法で眠らす。いきなり倒れ出した部下たちに、その男は整理が追い付かなかったようで、こちらに気が付くのに時間を要した。


「だ、誰だ。おまえら…。」

「動かないで下さい。あなたまで殺すつもりはありません。」

 ちょっと脅しをかけてみたが、まわりの部下が全員死んだと思い込んだのか、男はガクガクと首を縦に振りながら、手を上げた。それが降伏の合図だった。


 その後、バートさんが男を部屋にあったロープで縛り上げ、私たちは証拠の捜索を開始した。しかし、書類が散乱し、どれが不正の証拠なのかが見極められなかったため、全ての書類を念のために持参したマジックバックに収納した。男はそれを茫然としながら見ていた。


 全ての書類を仕舞いこみ、再び男に視線を向ける。男は全く抵抗の意志を見せず、ただ怯えているようだった。


「で、どうするよ。こいつら。」

「どうしますかね…。」

「た、頼む。命だけは…」

 私は助命を懇願するその男を睡眠魔法で眠らせた。そしてコンフェッションをかけた。他の男たちにも同様にコンフェッションをかけた。だが、特に目新しい情報はなかった。ダミアーノの右腕、ジルドに指示されたことだけだ。回収した書類の詳しい情報までは知らなかったようだ。要は末端の人間だったわけだ。


「処分するか?」

 バートさんは躊躇することなく、その言葉を口にした。確かにそれが最適な方法だった。こいつらから私たちの情報が洩れるのは避けたい。


「いいえ。さっきコンフェッションをかけましたが、こいつらはこの街で強盗や殺人まで手を染めています。その罪は償わせるべきでしょう。」

「それなら、どうする?衛兵にでも突き出すか?」

「それだとこちらの手間がかかりますので、催眠魔法で自首するように仕向けます。」

「そうか…。まあお前がそう判断するなら、こっちは文句はねえ。」

「ありがとうございます。」

「いや、殺さないで済むなら、それが一番いい。」


 私はルタンを召喚して、こいつらに催眠魔法をかけた。自首して自身の罪を供述するようにと。それが終わると、私たちはすぐさま宿に戻った。


 明朝。

 私たちはファビアーノ氏に昨晩の顛末を話した。そして、回収した大量の書類を手渡した。すると彼は精査に1日欲しいと言い、部屋に閉じ籠った。


 翌朝。

 ファビアーノ氏は夜遅くまで書類に目を通していたのか、若干目が赤くなっていた。しかし「これで何とかなりそうだ。」と言っていた。


 私たちは早速王都に向かって旅立つことにした。

読んで下さり、ありがとうございます。


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