第4話:とりあえず「冒険者ギルド」という言葉にワクワクしてしまうのはしょうがない。
今週中に投稿できて良かったです。
ランチを済ませた後、宿を確保することができた。「お休み処 星のしずく」は宿屋も兼ねて…というより宿屋が本業で、食堂を兼ねていた。
騒動の後、店の主人であるラスクさんからお礼を言われた。何かお礼をしたいと言われたので、宿屋を紹介してほしいとお願いしたら、「それならぜひウチに!」と言われたというわけだ。しかも、お礼ということで宿泊費をまけてもらった。これからの人生、幸先がいい。
さて、いまはバシュラトのメイン通りを歩いている。目的地は「冒険者ギルド」だ。これから生きていく上での収入源として、「冒険者」を生業にしていくことにした。これは修行中に決めていたことだ。修行中にいろいろな技能や魔法を学ぶことができたので、それを活かせる職業に就きたいと考えた。
生前は普通のサラリーマンだった。毎朝、満員電車に揺られて、会社に出勤し、残業して帰宅する生活だったが、せっかく生まれ変わったことだし、働き方を変えたいとも思っていた。それらの条件を満たしていそうなのが、「冒険者」というわけだ。
それにRPGやラノベのイメージで「冒険者」って自由を謳歌しているイメージがある。実はこれが一番の理由で、憧れもあったのだ。
通りにある雑貨屋や武器屋、食料品を売っているいくつかの屋台を過ぎると、右手側に大きな建物が見えた。ここが冒険者ギルドのようだ。看板にも「冒険者ギルド」と書いてあるので間違いないだろう。
やっぱり荒くれ者が、昼間から酒を飲んでたりするのかな…?
そういう期待?もしながら、中に入ると、意外にも人は少なかった。日本でいう市役所みたいな雰囲気があり、左手の奥に「登録受付」という看板が下げられていた。
「あの、すみません。冒険者の登録をしたいのですが…。」
「はい、登録希望の方ですね。それでしたら、こちらの申込用紙を記入して下さい。向こうに記入場所がありますので、そちらでご記入下さい。」
「あっ…はい。ありがとうございます。」
やっぱり思っていたのと違う…。てっきり「何だ、ボウズっ!ここは、お前みたいなガキが来るところじゃねえぞ!」みたいに絡まれたりするのかな、とか勝手に想像していた…。
記入した申込用紙を、受付の女性に渡す。まあ、受付の人がキレイだというのは、イメージ通りだけど。
「はい、確認致します。名前は、ヒコサブロウさん、15歳。記入漏れはないようですね。続いてこちらの水晶に手をかざして下さい。ギルドカードを発行します。ギルドカードには名前や年齢などの個人情報、技能や魔法などのステータスが表示されます。ちなみに犯罪歴は…ないですよね?」
「もちろん、ありません。」
なるほど、個人情報は予想していたけど、ステータスも表示される仕組みなのか。ステータスがあのまま表示されるのは避けたいな。やっぱり外部表示設定の機能があってよかった。
ミコトさん曰く、その機能は転生時に特別に付与してくれたとのことだった。レベルがあまりにも高くなってしまったため、この世界に無用な騒ぎを起こさせないようにするための処置だそうで、普通のステータスにはない機能らしい。
自分のこの数値が高いのか低いのかは、いまいち実感が無いけど、直感的に隠した方がいい気がするから助かる。
受付台に置いてある水晶に手をかざした途端、それは輝きを放った。気が付くと、かざした右手の中には、1枚の銀色のカードがあった。
「カードを見せて下さい。ええと、個人情報は記入されてますね。ステータスは、技能・魔法ともに平均値ですが…、習得技能が多いですね。それと魔法は…って、あれ…?えっ!全属性!?能力値は平均的ですが…。すごい、初めて見ました。しかも魔法付与も持っているんですね。」
受付の女性は、「久しぶりの有望株が来ました」とか言って、少し興奮しているようだった。
「ええと…、登録はとりあえず完了でしょうか?」
「ハッ!申し訳ありません。登録は完了です。ですが、初期登録時には導入研修を受けて頂く必要があります。」
「研修があるんですか?」
意外としっかりした職業というか、組織なんだな。
「研修と言っても、冒険者という職業に関する基本的ルールや罰則規定などの説明です。またランク分けの実技試験も受けて頂きます。」
「実技試験もあるんですか…。もしかして、その試験に落ちたら冒険者にはなれないということですか?」
少し心配してしまう。いきなり就職失敗とか困る…。
「いえいえ、そんなことはありません。実技試験に不合格の場合は、最下ランクのGランクから冒険者稼業を始めるということです。ご安心下さい。
なお、合格と認められた場合は、戦闘能力が必要になるFランク以上から始めることができます。」
冒険者が不用意に生命を落とすことがないように、ギルドにはランク制度というものが存在する。初心者には実技試験や低ランクの依頼を通して、着実に経験を積んでもらえるようにするための制度のようで、よく考えられている。
「研修と試験は…、ちょうどこれから受けることができますが、どうされますか?」
「これから受けようと思います。」
「わかりました。それでは時間になったら、お呼びしますので、あちらでお待ち下さい。」
少し待っていると、準備が整ったということだったので、地下1階にある部屋に案内された。ここは研修で使用される大会議室らしい。
その部屋は、100人くらいが入りそうな広さがあったが、そこにいたのは10人程度だった。どうやら彼らも研修を受けるようだ。同じぐらいの年齢かな?全員が前方の席に、いくつかのグループになって座っている。
「ミル、そいつも研修を受けるのか?なら、早く案内しろ。もう始めちまうぞ。」
「また、『そいつ』って…。もう少し丁寧な言葉遣いで話してください。ヒコサブロウさん、前方で空いている席に座って下さい。」
「まあ、そう言うなって。この話し方のほうが、『冒険者』っぽいだろ?それよりも、そいつはソロか?珍しいな。最近ではパーティーを組む奴が多いんだが。」
ソロは珍しいらしい…。パーティーと言われても、友達いないし。てか、生まれたばかりだし(笑)。
それはともかく、やはりソロは珍しいのか、まわりから好奇の目で見られている感じがする。
「ソロだと問題がありますか?」
「いやいや、気を悪くしないでくれ。単純に最近では見かけないってだけだ。ソロだと依頼達成の難易度が上がるからな。まあ報酬は独り占めできるが…。詳しいことは研修で話そう。」
「はい、宜しくお願い致します。」
斜め45度のお辞儀で答える。
「まあ…、そんなに固くなるな…。やりにくいから…。」
背後から「クスッ」と女性の笑い声が聞こえた気がしたが、気にしないでおこう。
「ゴホンッ!…さて、研修を始めるぞ。大事なことだから、しっかり聞けよ!」
そんなこんなで研修が始まった。いま話している人は、ここのギルドでサブギルドマスター、通称「サブマス」のゴンザさんだ。
研修は約1時間程度で終了した。
内容は、ギルドの仕組み、ランクの説明、依頼に関する決まり、最後に罰則規定だった。要約すると、ギルドは国家から切り離された独立組織で、各地域に支部が存在する。国家の首都には本部があり、それを総本部が管理しているという一大組織のようだ。ちなみに総本部は、ここベル王国ではなく、通称「冒険者の国」と言われる「マーブル共和国」にあるそうだ。
国家から庶民にいたるまで、様々な依頼を受け、それらを冒険者に斡旋するという仲介業を生業としている。依頼内容が多岐に及ぶため、冒険者のレベルに応じた「ランク」が存在し、高ランク冒険者の中には、国のお抱えになる人もいるとか。
冒険者は、依頼を達成することでその報酬を得ることができる。そして、ギルドは依頼者から手数料を得られるという仕組みだ。依頼の内容によっては、いくつか冒険者が協力して依頼にあたることもあるようだ。
冒険者のランクは、最高位の「Sランク」から始まり「Aランク」「Bランク」「Cランク」「Dランク」「Eランク」「Fランク」そして最下位の「Gランク」までの8つがある。
初心者は実技試験に応じて、「Fランク」もしくは「Gランク」からスタートする。依頼達成数や内容、本人の状況などを加味してランクは上がっていく制度になっている。当然ランクが高い程、受け取る報酬は高くなるというわけだ。
尚、一つ上のランクまでなら依頼を受けることができる。
さて、話を導入研修に戻そう。
現在私たちは、部屋から移動して、鍛練場に移動した。鍛練場はギルドの裏にあり、結構広い。これから実技試験を行うとのこと。
「いいか、実技試験で見るのは『技能』と『魔法』だが、どちらか一方でも構わん。ステータス自体は、ギルドカード作成時にこちらで確認しているから、試験では一番得意なもので受けてくれ。」
ゴンザさんの説明の後、早速開始となった。まずは「技能」部門からのようだ。
内容は至極簡単で、ゴンザさん相手に模擬戦を行うというものだった。ゴンザさんは元冒険者で、現役時代ではBランク冒険者だったらしい。SランクとAランク冒険者は数が少ないらしく、通常の冒険者で考えれば、Bランクは一流冒険者と言える、と先程の研修で教わった。
「さて、技能は全部で5人か…。まずは、左端のお前からだ。」
技能5人・魔法5人と分けられ、試験が始まった。私は技能部門を選択した。順番は最後になりそうだ。
「はい、そこまでっ!お前は合格だ。」
一定時間の模擬戦が行われた後、その場で合否が言い渡される。私の手前までは全員合格。つまりFランクからスタートする。私も頑張ろう…。少し不安だが…。
「最後はお前だな。ソロ活動するなら、ある程度は戦闘能力がないといけないからな。評価は少し厳しくなると思え。」
「はい、宜しくお願い致します。」
少し緊張しながらも、身構える。
「…一応聞いておくが、『格闘』で受けるということでいいんだな?」
「はい。」
私は格闘ということで素手。一方、ゴンザさんは両手剣(木剣)を持って構えている。武器を持っている相手に、素手で対応しようとすることに疑問を持たれたのかな…。格闘が最も得意だから選んだけど、剣術にすればよかったかな…。
お互いに構えたまま時間が経っていく。
向かい合うだけでも、ゴンザさんの強さを感じることができる。鍛え上げられた能力とこれまでの経験は伊達ではないらしい。向こうは顔を引き締めつつも、動こうとはしない。いつのまにか、他の受験者も私たちを見ている。
その後、模擬戦が始まることなく、ゴンザさんは剣を腰に納めた。
「ふう…、わかった。これで終わりにしよう。お前も合格だ。」
「えっ…よろしいんですか?まだ始めていませんが…。」
「まあな。この試験で見るのは最低限の能力だからな。あれだけの闘気を出せるのなら問題ないだろう。…てか、本当に『格闘3』か?まあ、カードは偽造できないから、本当なんだろうけど…。まあ、これから頑張ってくれ。」
「はい。ありがとうございました。」
というわけで、無事にFランク冒険者として出発することができた。
読んで下さり、ありがとうございます。




