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第39話:とりあえず、商人を護衛する③

ブクマありがとうございます。

 翌朝。まだ陽が昇りかけている頃、私たち冒険者はすでにバシュラトの正門に集まっていた。あとはファビアーノ氏一行を待つだけである。


「それにしても、ヒコサブロウ。お前荷物それだけなの?どう見ても野営準備とかなさそうだけど。」

「大丈夫です。バートさん。これマジックバックなんで。」

「ええっ。それマジックバックなの?本物初めて見た…。」

「そうなんですか?やっぱりマジックバックって希少な物なんですか?」

「そうね。私たち魔法使いの間でも空間魔法の使い手はそうはいませんからね。マジックバックは、その空間魔法を付与しなきゃいけないから、どうしても希少になってしまうのよ。」

「そういえば、お前。前にギルドの鍛冶場で何か作ってたよな?まさかそのマジックバックを作っていたのか?」

「えっ…。い、いやいや、まさかそんな訳ないじゃないですか…。ははは…。これは、えっと…、そうだ。お爺ちゃんの形見なんです。」

「それが形見なんて、お前のお爺ちゃんどんだけなんだよ。」

「ははは…。」


 バートさんとそんな話をしていると、こちらに向かってくる馬車と人が見えた。馬車が正門前に到着すると、中から3人の人物が降りてきた。ファビアーノ氏とミーナ、そしてメイド長のロレッタさんだ。どうやらロレッタさんは旅の途中もミーナの世話係として付いてくるようだ。


「商人のファビアーノ・ベルニだ。こっちは孫娘のミーナ。今回は護衛よろしく頼む。」

「はい。ファビアーノ様。無事にコザシェヒルまで送り届けます。」

 バートさんが今回の冒険者側のリーダーとして、彼に応答する。


「うむ。それからこっちはロレッタ。ミーナの世話係だ。あと護衛隊長のアロルドだ。冒険者諸君はうちの護衛隊と協力しながらその任務に当たってほしい。」

「わかりました。アロルド殿、宜しくお願い致します。」

「わかった。こちらこそよろしく頼む。」


 全員が集合したことで、早速出発となった。冒険者5名、護衛隊10名のそれなりに大きな一行になった。目的地はコザシェヒル。初めての護衛依頼。絶対に成功させようと決意を新たにしたのであった。


―――――


 初日と2日目の行程は問題なく進んだ。盗賊やモンスターの類いも出現せず、穏やかな旅となった。ミーナからは冒険者の話が聞きたいと言われ、ファビアーノ氏も乗り気だったため、バートさんに断って一時的に馬車に同乗させてもらった。

 ミーナは幽霊屋敷やイェシル村の一件に興味を持ち、興奮しながら私に質問攻めをしていた。ロレッタさん曰く、彼女は普段気軽に外出できないから、よく冒険譚を読むと言っていた。冒険者に興味があるのもこの影響だろう。

 一方でファビアーノ氏は、私の話というより、私の持ち物に強い興味があるようだった。件のマジックバックである。やはり王国屈指の大商人にとっても、マジックバックは希少なものであるらしく、入手経緯や性能を詳しく質問された。まさか、自分で作ったとは言えず、お爺ちゃんの形見作戦で適当にごまかしておいた。ごまかしきれたかは不明だが…。


 こうして、両日とも予定通り街に到着することができ、それぞれ宿で休んだ。ファビアーノ氏と護衛隊の宿が同じであるのは、少し不思議に思ったが…。てっきりファビアーノ氏とミーナは高級宿、護衛隊は普通の宿というイメージを持っていたからだ。まあ、彼は護衛隊のことも大切に扱っているということなのかなと考え、それ以降はその考えを頭から取り除いた。


 私たち冒険者は普通の宿だったが、野宿に比べると断然いいとバートさんは言っていた。野宿をする時は交代で見張りをするから、身体の休息具合が全然違うと言っていた。私もそんな印象は持っていたけど、それほど違うものなんだなと改めて勉強になった。この依頼中もそういう場面はあるだろうから、しっかり学びたいと思った。


 3日目~5日目は宿泊施設があるような街や村がないため、野営をすることになる。これは事前にバートさんから聞いていた。彼は何度かコザシェヒルに行ったことがあるらしく、道のりには詳しかった。


 3日目の夕方。手頃な野営地を見つけ、それぞれ野営の準備を始めた。ファビアーノ氏は大きな荷馬車を3台連れてきている。商談用の商品類以外に、野営用具もそこに入っており、護衛隊がそそくさとテントを立てていた。一方でロレッタさんは、魔導コンロを使って夕食を作っていた。やはり大商人。野営用具も魔道具も準備に抜かりがない。


 斯くいう私と言えば、例の自分で作った小さなテントをマジックバックから取り出すだけ。夕食もバシュラトの飲食店で入手した新鮮なパンや出来立てのスープを取り出すだけだった。

 特に必要はないのだが、私もお手製の魔導コンロを出して、スープ鍋に火をかけた。出来立てだから必要ないのだが、何となく野営気分を味わいたかったのだ。しかしそのせいで料理の匂いがあたりに漂ってしまい、バートさんのパーティーから羨ましそうな視線を浴びてしまった。

 結局、スープをバートさんたちと護衛隊の皆さんに振る舞った。「野営でこんな温かい食事にありつけるなんて」と好評だった。ミーナもこちらを気にしているようだったが、ロレッタさんの手前何も言わなかった。今度機会があれば振る舞おう。


 やっぱりここでもファビアーノ氏は、私の持ち物に興味を持ち、テントや魔導コンロに興味津々だった。当然入手経路を訊かれたが、「お爺ちゃんの形見です…。」と自信無さげに答えるしかなかった。結局、ファビアーノ氏とミーナにシャワーを貸し出すことになり、「気持ちよかった。」と高評価を頂いた。


 さて、夜も深まり、ファビアーノ氏とミーナは自身のテントで就寝した。見張りは冒険者、護衛隊それぞれ交代で就くことになった。私はアンナさん、クロエさんと後半に見張りに就くことになった。バートさんから見張りの仕方を覚えるいい機会だと言われたので、寝過ごさないように注意しようと、基本的なことを密かに思った。


―――――


 途中で目を覚ました。

 それは見張りの時間がきたからではない。複数の気配を察知したからだ。まだここにはそれほど近付いていないが、ゆっくりと確実にその気配はこちらに近付いている。私は外に出て、たき火の近くで見張りをしているバートさんに近寄った。


「どうした?まだ見張りの交代には早いぞ。初めての野営で眠れないか?」

「いいえ。不審な気配がこちらに近付いています。数は20名程度です。」

「なに?それは本当か?まだ何も見えないぞ。」

「ええ。こちらから視認できる程の距離はまだありません。しかし、確実に近付いています。護衛隊にも伝えた方がいいと思います。」

「それが本当なら用心する必要があるな。お前が嘘をつくはずもないしな。わかった。護衛隊にはこちらから連絡する。ちなみにあとどれぐらいで視認できると思う?」

「向こうの移動速度にもよりますが、あと15分ぐらいでしょうか。」

「わかった。すぐに行動に移そう。エラルド、二人を起こしてきてくれ。」

「わかった。」


 護衛隊にも不審な気配の件が伝わり、ファビアーノ氏とミーナもその睡眠を中断することになった。


 そして、約15分後。

 私が指し示した方向に黒く蠢く人影が確認できたのだった。

読んで下さり、ありがとうございます。


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もし「おもしろい」「続きを読みたい」と思われた方は、宜しくお願い致します。


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