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第38話:とりあえず、商人を護衛する②

ブクマや評価、いいね ありがとうございます。

「ちょっと困ります。」

「別にいいじゃねえか。なあ、ただ茶を飲みに付き合ってくれるだけでいいからさ。」


 バシュラトの中央にある噴水広場前。そこでは人相の悪そうな男が、一人の女性、私と同年代ぐらいの子をしつこく誘っているところだった。その女性は水色のワンピースを着て、金色の髪が良く似合う美少女であった。一方男の人相は、まあ言うまでもなく、下心が見え見えで、絶対にお茶だけでは返してくれそうもなかった。


 まわりの人たちは、我関せずというか、少し引きながらそれを眺めていた。これは仕方ないな…。


「ちょっと、お兄さん。彼女が嫌がってるじゃないですか。そのあたりで諦めたらどうですか?」

「ああ、誰だ、てめえ!ガキはすっこんでろ!」

「あ、あぶない!」

 そう言って、その男はいきなり殴りかかってきた。これは容赦しなくていいな。その男の拳をかわし、代わりに相手のお腹にワンパンした。そうすると、男はその場で蹲ってしまった。しまった、少しやり過ぎたか?


「行きましょう、お嬢さん。」

「は、はい。」

 その男をそのまま放置し、私たちはその場を後にした。まわりで引き気味に見ていた人たちも、興味を失ったのか、その場から立ち去った。噴水だけがいつも通りその水を噴出し続けていた。それはまるでその男が最初からいなかったかのようだった。


「あ、あの、先程はありがとうございました。助かりました。」

「いいえ。気にしないで下さい。災難でしたね。」

「ええ。いつもはお供の人間が一緒にいるのですが、たまには一人で出かけようと思ったら、あんなことに…。」

「お供の人ですか…?」

 お供の人がいるということは、普通の住民じゃないのかな。貴族の子弟とか。


「あ、挨拶が遅くなりました。私はミーナ・ベルニと申します。」


 ミーナ・ベルニ。どこかで聞いたことあるような…。


「もしかして、ファビアーノ・ベルニ氏の…。」

「まあ、お爺様をご存じで?」

「ご存じという程知り合いではありませんが…。まあ有名な方ですので…。」


 こういう出会いもあるんだな。まさか依頼主にこんなかたちで会うことになるとは。助けてよかったかもしれない。もしあのまま無視していたら、実際に護衛する時に、「あの時無視した人ですわ」なんてことにならないとも限らないからな。


「とりあえず、またあんなことがあってもアレなんで、ご自宅まで送ります。」

「本当ですか?ありがとうございます。あ、あの…。」

「はい、なんでしょう?」

「あなたのお名前を伺っても?」

「あ、ごめんなさい。僕はヒコサブロウといいます。この街で冒険者として活動しています。」

「まあ、冒険者でしたのね。冒険者には興味があったのですが、初めてお会いしましたわ。じゃあ、ヒコサブロウ様、よろしくお願いします。」

「様はつけなくていいですよ。ヒコサブロウと呼んで下さい。ミーナお嬢様。」

「わかりました。じゃ、じゃあ、私のことも、どうかミーナとお呼び下さい。」

「…わかりました。じゃあ、ミーナ。行こうか。」

「はい!」

 私は彼女を自宅まで送り届けるため、商店街を歩き始めた。


―――――


「ここですわ。ヒコサブロウ。」

「…はぁ~、さすがに大きな屋敷だね。まるで領主様の館みたい。」

 さすが王国でも屈指の大商人。その屋敷も立派なものだった。門番までいる。


「ふふふ。さあ、中にどうぞ。」

「えっ…。いや、ここまで送り届けたらお暇しようと思っていたので…。さすがにお邪魔するのは…。」

「いいえ。助けて頂いたお礼をまだしておりません。それではこちらの気が済みません。どうかお上がり下さい。」

「はあ…。じゃあ、せっかくなので…。」

 そんなやりとりをしていると、こちらに走って近付いてくる影がふたつ。ふたりともメイド服を着ている。


「お、お嬢様!どこへおいでになっていたのですか!?リベリオにお嬢様が戻ったと伝えて。」

「はい、ロレッタ様。」

「もう、ロレッタ。そんなに騒ぎを大きくしないでちょうだい。」

「何をおっしゃっているんですか。どれほど心配したことか。お供も付けず外出されるなんて…。」

「たまにはいいかなと思っただけよ。」

「はあ…。まあ無事にお戻りになられてよかったです。あら、そちらの方は…。」

「ああ、彼はヒコサブロウ。あぶないところを助けて頂いたの。」

「あぶないところって、ほら、危険な目に遭っているじゃありませんか。ヒコサブロウ様、ありがとうございます。」

「だから彼にお礼をしたいの。私の客人としてもてなしてね。」

「承知致しました。ではこちらへどうぞ。」

「はい…。」

 私は少し緊張しつつも、屋敷へと足を踏み入れた。


―――――


 現在私は応接間でお茶を飲んでいる。部屋の隅には執事のリベリオさんがいる。彼から聞いたが、ロレッタさんはここのメイド長らしく、ミーナのお世話係だそうだ。今日はロレッタさんが知らない間に、ミーナがふらっと出かけてしまい、屋敷はお嬢様が行方不明とてんてこ舞いの騒ぎだったらしい。ミーナは意外にお転婆気質があるみたいだ。


「ヒコサブロウ、待たせてごめんなさい。着替えるのに手間取ってしまって。」

 彼女は外出着から部屋着に着替えていた。傍らにはロレッタさんが侍っている。

 こうして改めて彼女を見ると、とても可愛らしく清楚な感じがあり、先程のお転婆な様子とはギャップを感じる。


「いいや。全然待ってないよ。お茶、美味しく頂いてます。」

 リベリオさんやロレッタさんの手前、彼女への口調を丁寧に改めようと思ったが、彼女の性格上、また指摘されそうなので、フランクに接することにした。もしそれで注意されたら、丁寧へシフトチェンジしよう。


「お爺様もあなたにお礼がしたいと言っていましたわ。まもなく来ると思います。」

「えっ…、ファビアーノ氏が自ら?」

「そうよ。でも大丈夫よ。普通のお爺ちゃんだから。」

 そりゃあなたにとってはね…。でもこっちからしたら、王国屈指の大商人であり、しかも今回の依頼主である。一端の冒険者がおいそれと簡単に会える人物ではないため、少し緊張してしまう。やっぱりミーナとの口調を丁寧へシフトチェンジした方がいいかな…。


 そんなことを考えていると、応接間の扉が開かれた。入ってきたのは、恰幅のいいご老人。これがファビアーノ・ベルニ氏か…。一見穏やかそうな面持ちだが、何とも言えない威圧感はある。王国屈指の大商人は伊達じゃないらしい。


「いや、お待たせした。私がファビアーノ・ベルニだ。今回は孫娘の危機を救ってくれたということで感謝している。」

「冒険者のヒコサブロウです。いいえ、今回は偶々居合わせただけですので。」

「ヒコサブロウ…。どこかで聞いた名前だな。確か明日から護衛任務に就く冒険者だったかな。領主様推薦の。なあリベリオ。」

「はい、ご主人様。その認識で間違いございません。」

「そうか、君がヒコサブロウか。領主様から話は聞いている。何でもいろんな難事件を解決したそうじゃないか。」

「まあ、そうなんでしたの。まさか腕利きの冒険者にお会いできるなんて。」

「いえいえ。私はまだDランク。冒険者としては半人前です。」

「はっはっは。やはり領主様の言うことは間違いないらしい。年齢の割に随分謙虚だとおっしゃっていた。しかし、戦闘能力は突出していると聞いている。これは期待できそうだ。」

「ご期待に沿えるように努めます。」

「うむ。明日からよろしく頼む。」


 ファビアーノ氏はそこまで言って、部屋を退出した。やはり忙しい身のようだ。私もそれからミーナと少し世間話をしてお暇をした。依頼中に私の冒険者話を聞かせることになってしまったが…。


 明日からの護衛任務。緊張しながらも少しワクワクしている自分がいた。

読んで下さり、ありがとうございます。


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もし「おもしろい」「続きを読みたい」と思われた方は、宜しくお願い致します。


また、感想もお待ちしております。

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