第3話:とりあえず基本情報を確認して、街へ向かう。
日付が変わってしまいましたが、とりあえず3話目を投稿します。
白い光が消えると、そこには少し見覚えのある景色が広がっていた。
修行というか準備期間中にずっと過ごしていた場所の景色と似ているが、よく見れば、奥の方に大きな山々が見えるなど違う点も見られる。そして、目の前には1本の道がある。
ここがファーロニア、これから私が新しい人生を送る世界で間違いなさそうだ。
ミコト先生の座学で、ファーロニアに関する基本情報は頭に入っている。
いま私が降り立った場所は、ファーロニアに存在する国家でも5本の指に入る大国「ベル王国」。そして、その国における中規模都市である「バシュラト」という街付近にいる…はずだ。地図を持っていないから、詳しくはわからないけど、ミコトさんは転生前にそう教えてくれた。
何でもバシュラトは、ベル王国の王都をはじめ、主要都市を結ぶ中継都市として栄えているようで、職探しにはもってこいとの話だ。異世界転生は無事に終わったようだが、結局はこの世界で生きていく以上、「生活力」が必要になるわけで。とりあえず収入源の確保が喫緊の課題だな。当然頼れる身寄りもいないし…。
さて、場所の確認ができたところで、「自分」の基本情報を確認しよう。
ファーロニアは魔法が存在する世界。ということで、RPGみたいに、自分の基本情報が魔法で確認できる。
「ステータスオープン」
そう唱えると、目の前に画面が開く。何回やっても本当にRPGみたいだなと感じる。ちなみにこの画面は、使用者の意思で、周りにも見せることが可能とのことだ。まあ見せないけど。
<使用者 基本情報>
名前:ヒコサブロウ
性別:男性
年齢:15歳
Lv:1000(外部表示設定あり/Lv:30)
技能:格闘10、剣術10、弓術10、槍術10、鍛冶10、鑑定10
(外部表示設定あり/すべて3)
魔法:火魔法10、水魔法10、風魔法10、土魔法10、雷魔法10
光魔法10、闇魔法10
(外部表示設定あり/すべて3)
特殊:魔法付与、特殊魔法、精霊魔法、自動回復、異常耐性
(外部表示設定あり/特殊:魔法付与)
称号:異世界転生者、修行の達人
(外部表示設定あり/表示なし)
…ふむ。気になる称号はあるが(修行の達人って…、この称号必要?)、まあいいだろう。
「Lv」、つまりレベルは、誕生時は「1」としてスタートする。座学によれば、成人までに20~30程度には成長するが、RPGのように単純な戦闘力を表現するわけではない。鍛冶能力とかが高い職人の中には、50以上の人も多くいる。
戦闘能力をはじめ、様々な能力を鍛えることで、レベルを上げることができるということのようだ。レベル100以上は、「達人」クラスとして一目置かれる存在のようだが、私は1000か…。まあ時間もたっぷりあったし、講師も神ってるというか、実際に神だったからな…。特に気にしないでおこう。
「Lv」とは別に表示されている各技能・魔法に表示されている数字は「スキルレベル」と呼ばれている。「Lv」の内訳表みたいなもので、1~10の10段階で表示される。当然最大値は10。レベル5で一人前で、レベル8~9で達人と呼ばれる。ちなみにレベル10は…、まあ何となく予想がつく。深く考えるのはやめよう…。
よし、決めた。あまりレベルのことは話さない方向でいこう。だって、嫌な予感しかないし。目立ちたくないし。平穏な生活を過ごしたいし。
さて、所持金はというと…、財布には「10万テーレ」あるな。ファーロニアの通貨は、世界共通で「テーレ」と呼ばれている。価値は「1円≒1テーレ」で、こちらにとってはわかりやすくて助かる。物価は国・地域で差があるようなので、街で確認しよう。
基本情報の確認も済んだので、とりあえずバシュラトに向かうことにしよう。
RPGやラノベだったら、街に向かう街道で、「盗賊に襲われた大商人を助ける」や「モンスターに襲われた女性を助けたところ、実はその女性は有力貴族の子女だった」というようなイベントが発生するところだが…。何か起きてしまうのだろうか…。少し不安ではある。そんな気持ちを抱きながら、バシュラトへと続くであろう街道をゆっくりと歩き始めた。
―――――
結局のところ、思ったようなイベントは発生することなく、城壁に囲まれた街が見えてきた。そりゃ「立たないフラグ」も存在するよな。別に期待していたわけじゃないけど…。とりあえず何事もなくてよかった。
大きく「バシュラト」と書かれた城壁の門を目指す。中継都市だけあって、ヒト・モノの出入りは多いようだ。
とりあえず、入口に結構な人が並んでいたので、ここが受付なのだろうと思って、私も並んだ。身分証を提示するか、入場料を払えば問題なく街に入れるはずだ。
「旅の者か?何か身分を証明するものはあるか?」
「すみません、身分証はもっていません。入場料を払います。」
「そうか。入場料として1000テーレ必要だ。」
門番との会話を済ませ、入場料を支払い、無事にバシュラトに入ることができた。入場料は臨時的なもので、10日間以上滞在する場合は、追加料金が必要になるとのこと。これからの予定はまだ決めていないが、とりあえず身分証は作った方がよさそうだ。
ゴォォーーン。ゴォォーーン。ゴォォーーン。
鐘の音が3回響きわたる。12時の合図だ。
この世界では時計はあまり普及していない。その代わり、1時間に1度、時鐘が鳴り、それで時間を認識する。通常は1回だが、0時、6時、12時、18時には3回鳴る。ちなみに1年=12ヶ月、1ヵ月=30日、1日=24時間となっており、これは日本とは変わらない。
さて、とりあえず何から始めようか。宿を探し始めようか。もしくは身分証を作ろうか。いや、とりあえずは腹ごなしだな。今空腹を感じている。この100年間忘れていた感覚だ。修行中は、食事・睡眠は原則不要だったから、この感覚に嬉しさを感じてしまう。空腹になって、改めて生きていることを実感した。
街を散策しながら、食事処を探す。改めて見てみると、行き交う人々は「人間」だけではない。「獣人」や「ドワーフ」も見受けられる。本当に異世界に来たことを実感していまい、少し頬が緩んでしまう。いやいや、気を付けよう。ニヤニヤしながら歩いていたら、どこかの変質者に間違われそうだし…。
どこからかいい匂いがしてくる。あたりを見回してみると、「お休み処 星のしずく」という看板が見えた。知っている店もないし、ここにしよう。中に入ると、それなりに混雑している。ハズレではないようだ。
「いらっしゃいませー!空いている席にどうぞ!」
お店の女の子が、元気よく案内してくれる。活気がある店のようだ。
とりあえずカウンターに座り、メニューを見る。ちょうど昼食時ということもあってランチメニューがいくつかある。どれにしようか悩んでいると…、
「おい、スープに虫が入ってるじゃねえか!この店は客に虫を食わせるのかっ!」
後ろのテーブル席から、男の大きな声がした。
「そうだ!そうだ!虫を食わせるなんざ、とんだ店だな、おいっ!」
同じテーブルに座っていた男2人も、それに同調してヤジを飛ばす。
「おいっ!主人を呼べっ!どうしてくれるんだ!」
「申し訳ありません、お客様。すぐに新しいものと取り換えます。」
奥から店の主人らしき人が出てきて、即座に誤っている。
「おいおい、新しいのに換えるだけで済むと思ってんのか!当然、ここの支払いはなしでいいんだろうな。それから謝罪として10万テーレ払えっ!」
「そんな…、10万テーレはいくらなんでも…。」
「親父っ!、そんな奴らの言うことなんか聞かなくていいよ。俺は虫なんか入れてない。そいつら、最近この近くで出没する奴らに決まってる。お店に難癖つけて、金を巻き上げてるって聞いたぞ。」
主人の息子らしき男性が、奥の厨房から出てきた。その息子の後ろで、案内の女の子が隠れるようにして怯えているのが見えた。
「何だとっ!俺たちにいちゃもん付ける気かっ!いい度胸だ。俺たちに逆らうとどうなるか、身体で分からせてやるっ!」
「あの…、もうそのくらいにしてはどうですか?もうちょっと静かに食事をしたいのですが…。」
とりあえず口を挟んでしまった…。というより、頭より先に口が出てしまったという方が正しいか?。
「ああん?ナンだ、テメェは?正義の味方ごっこなら、外でやりやがれっ、ボウズ!」
ボウズ…?…ああ、坊主。そうか、私は今15歳か。気持ち的には100歳+100歳=200歳だから、思わず誰のことを言っているのかわからなかった。
「どうした坊主?怖くなってびびってんのか?」
男がニヤニヤしながら言ってくる。
「いえ、ちょっと考え事をしていただけです。お気になさらず。とにかく、お店側が新しいのを用意してくれると言っているのですから、それでいいではありませんか。それとも、本当にお金を巻き上げるために、虫を入れたんですか?」
「ああ?テメェ、いい度胸だ。このオレが誰だかしらねえようだな。」
男はこめかみに青筋を立てている…ほど、怒っているようだ。顔が引きつっていて、まるで「ピクピク」と効果音が聞こえてくるようだ。
「そういうあなたは、私を知っているのですか?お互い初対面なのですから、初めてなのは当然でしょう?」
「っ…!ボウズっーー!お前から叩きのめしてやるッ!」
その男は、堪忍袋の緒が切れたようで、私に襲いかかってきた。
「パラライズ」
私は少し小さな声で、魔法を詠唱した。
パラライズ、効果は相手を麻痺させる魔法だ。闇魔法の中では低級魔法だが、使用者のレベルによって、その効果には大きな差が出る。まあ、これは闇魔法に限った話ではないけど。
だいぶ手加減したつもりだが、それでもその男は白目を剥いて、目の前で倒れている。普通は身体が痺れる程度らしいが…。今度からはもう少し手加減しよう。
一方、同じテーブルにいた男2人は、何が起こったかまだ理解できていないようで、茫然と立ち尽くしている。
「アニキ、大丈夫ですか…?てめえ、アニキに何をしやがった?」
男どもが倒れているアニキに駆け寄ってくる。
「見ての通り、麻痺をさせただけです。まあ1時間程度で元に戻りますよ。たぶんですが…。」
営業スマイルを作りながら答える。
「それで、まだ騒ぎますか?もうお店を出たらどうですか?あっ、お金はちゃんと支払って下さいね。」
その営業スマイルが利いたのかどうかは定かではないが、男どもは、何も言わず、顔をコクコクと縦に振りながら、アニキを抱えて店をそそくさと出て行った。
さて、なに食べよう…。あれ、メニューどこ?
読んで下さり、ありがとうございます。




