第27話:とりあえず、ビルの秘密を探る(孤児院④)
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「みなさん、はじめまして。エミーリア・フォン・バシュラトです。お父様の言いつけで、今回の依頼でヒコサブロウ様に同行することになりました。まだまだ未熟者ではありますが、よろしくお願いします。」
「あの…、エミーリア様。そのヒコサブロウ様というのは…。ヒコサブロウと呼び捨てで結構です。」
「なら、私のこともエミーリアとお呼び下さい。」
「はい…。善処します。」
冒険者ギルド2階の一室。そこに集まった冒険者の面々。エミーリア様、改め、エミーリアの簡単な挨拶とまさかの呼び捨てで結構です発言。何故か私のことをジト目で見てくるミナ、セレン、アイラ。それをどこか楽しんでいるように見ているハーレ。さらに私にかわいそうな眼差しを向けるジャン。そして我関せずのビル。今回の魔物調査依頼はこのメンバーで取り組むことになった。
なぜだろうか…。不安しかない…。
領主から調査依頼達成の引き換えに、孤児院の新たな移設地の提供を受けるという話を早速イルザさんとビルに話したところ、ビルもその調査に参加すると言い出した。イルザさんは彼に危険なことをしてほしくなさそうだったが、事実、孤児院の窮状を打開する現実的な方法が他にない以上、それに頼らざるを得なかった。彼と私に「ごめんなさいね…。」と申し訳なさそうに頭を下げていた。
ちなみに現在院長のルーカスさん、つまり先代院長のルッツさんの息子にはこのことを彼女から話をしておくとのことだった。ただ、ビル曰く、ルーカスさんはそもそも孤児院にあまり関心を示しておらず、運営についても熱心な感じではないようだ。いまは金策に走り回っているというがそれも怪しいものだと言っていた。
私は、この調査依頼にビルが参加する件はOKと言ったが、その条件として、これまでの経緯をちゃんとアイラたちに話すことを提示した。彼は最初渋っていたが、「大切な仲間なんでしょ。」と言ったら、素直に承諾した。
彼はその足でギルドにいたアイラたちに事の経緯を話した。アイラから「水臭いじゃない。」と少し怒られていたが、そういうことならパーティーで協力しましょうと、彼女たちが参加することが決まった。そして、その話を聞きつけたミナとセレンも乗りかかった舟ということで、この依頼に協力することになった。魔物の正体が不明で、もしかしたら危険な依頼になるかもしれない旨を伝えたが、ミナの「まあヒコサブロウと一緒なら大丈夫でしょ」の一言で参加が決まった。というより、「アイラを入れて私を外すつもり」と凄まれ、断り切れなかった。セレンは「またお姉ちゃんがごめんね。」と謝ってくれた。彼女はやはりいい子である。
その翌日、エミーリアと最終確認するため、みんなで集まることになった。最初はこちらから領主の館に赴くと言ったが、彼女が冒険者の依頼を身近に感じたいと言い、ギルド内での打合せになった。まあ、受付嬢のミルさんが、こうして部屋を用意してくれたのは、ギルドなりの配慮だったのだろう。というわけで、現在に至る。初顔合わせということもあり、それぞれが簡単な自己紹介をしていった。
「それで、これから具体的にどうするんだ?」
ビルの言葉で打合せに入る。
「まずスケジュールだけど、明朝に出発。3日目にはイェシル村に到着するだろう。そこで村長をはじめとする村民から情報を収集して調査開始だ。」
「ギルドへ依頼が出されていたのであれば、ギルドからも何かしらの情報を得られそうですね。」
「ああ。それについては、ミルさんにすでにお願いしている。実際に死者も発生しているようだから、気を引き締めていこう。」
「ええ、そうね。」
「調査は具体的にどうするの?」
「魔物の情報次第にもよるけど、今回は時間との勝負だ。だから少し危険度は増すかもしれないけど、パーティーごとに調査をしようと思う。まあ、エミーリアは僕と組むことになるけど。エミーリアはそれでいい?」
「はい。問題ありません。」
「ふーん…。」
「なに?ミナ。」
「別に~。随分ヒコサブロウとエミーリアは仲が良さそうだなと思って。」
「そうかな…。まあ今日初めて会ったわけじゃないから。」
「そっか~。まあいいけど。」
「?」
なぜかミナがご機嫌斜めらしい…。わからん。
「ねえ、ちょっといい?」
「なに、ハーレ。」
「いま思ったんだけど、ミナとセレンの二人組だと何かあった時危険じゃない?」
「確かにそうだね…。じゃあ、ミナとセレンは僕たちと組もう。」
「その方が助かります。」
「じゃあ、今日は遠征準備だね。各自しっかり準備を。だけどその前にミルさんから情報を聞こう。」
―――――
「イェシル村から調査依頼があったのは約3週間前です。村からの情報によれば、村の狩場となっている森に見知らぬ魔物が生息したようだから調査してほしいと。1ヵ月以上前からしばしば不自然な森の動物や低級モンスターの死骸が発見されるようになり、その内、その森を通行する商人、終いには森に入った村民にも被害が出るようになったとのことで依頼がありました。」
「それで冒険者が調査に向かったと。ちなみに依頼ランクは?」
「ギルドではEランク依頼に該当すると判断しました。襲われているのは森の動物やゴブリン等の低級モンスターでしたので。それで事足りると考えました。」
「しかし、結果的にはそうでなかったと…。」
「…そうですね。結果的にはEランクパーティー3名が全員死亡しました。」
「魔物の正体についての情報はあるのですか?」
「いいえ、エミーリア様。これまでの経緯から、何かしら獰猛な魔物が生息しているのは間違いないと思いますが、その正体を突き止めるまでには至っておりません。それで困り果てた村が領主様に訴え出たということです。」
「なるほど。何でも冒険者の遺体には切り刻まれた形跡があったと伺いました。」
「はい。そういう報告を聞いております。」
「やはり、現地で詳しく調査するしかなさそうですね。どう思いますか?ヒコサブロウ。」
「そうだね。エミーリアの言う通り、現地で詳しく調査するしかないね。いまだけの情報だけだと何とも。大きな爪か牙を持つ魔物ということぐらいしか。」
「もし狼系の魔物だとやっかいね…。群れができているとなると厄介だわ。」
「確かに…。まあ、もし群れが形成されているなら、もう少し被害が出ていても不思議じゃないけどね。」
「それに今回は時間が限られている。」
「そうだ。ビルの言う通り、今回は時間をあまりかけてられない。最悪調査だけして、領主に説明もしくは説得するしかないな。まあ討伐しろとは直接言われていないけど。」
「私からの報告は以上ですが、他に何かありますか?」
「いいえ。ありがとうございます。じゃあ、みんな明朝、正門前集合で。」
「「「はい。」」」
打合せを無事に終えた私たちは、それぞれ準備を進め、明日の出発に備えた。
―――――
そして明朝。
まだ陽が昇り始めた頃、私たちはすでに正門に集合していた。
「エミーリアお嬢様の護衛を務めるクリスタです。今回はよろしくお願いします。」
「こちらこそ、宜しくお願い致します。」
クリスタさんは、エミーリアが幼少の頃から護衛を務めている女性騎士で、今回の護衛に抜擢された。領主の娘の護衛を務めるだけあって、その腕は相当なものらしい。確かにこうして相対しているだけで、それなり実力者だというのがわかる。この分だと、エミーリアの護衛はそんなに気にしなくていいかもしれない。
「全員そろったな。では行こうか。」
私たちは出発した。正体不明の魔物が生息するというイェシル村へ。
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