第24話:とりあえず、ビルの秘密を探る(孤児院①)
最近更新が遅くなってしまいすみません。
もっと早く更新できるように頑張ります。
というわけで、孤児院編 開始です。
「最近ビルの様子が変なの。」
「様子が?」
現在、私とミナ、セレン、そしてアイラ、ハーレとギルドの酒場で夕食を取っている。今日も各々依頼をこなし、完了報告の際にギルドで鉢合わせ、一緒に夕食を取ろうということになった。
ミナの髪には、この前贈ったエメラルドグリーンの髪飾りが今日も輝いている。気に入ってくれたようで何よりだった。しかし、それについて、ミナはセレンとアイラが「どこで買ったの?」「もしかして誰かに買ってもらったの?」と問い詰められたらしく、ミナはミナで嬉しそうに「ヒコサブロウに買ってもらったの」と答えたもんだから、彼女たちから「ミナだけずるい」と責められ、今度一緒に買いにいく羽目になった。あの3人は何かで競っているのだろうかと疑問に思う。まあ本人たちには訊けない雰囲気だが…。
閑話休題。
「それでビルの何が変なの?」
「うん。ビルがすぐにふらっといなくなるの。」
「いなくなる?」
5人で食卓を囲っているが、主に話すのはアイラで、それにミナと私が反応する感じになっている。セレンとハーレは特に何も話さず、話の行き先を気にする感じだ。
「別にいなくなるぐらい、特段不思議なことじゃないのでは?」
「そうなんだけど…。だけど、今までは4人で集団行動することが多かったの。宿も同じで、朝は宿で集まって、依頼をこなして、夕食を取って、また一緒に宿に戻る感じ。だけど、最近は依頼をこなすとすぐにいなくなるの。何も言わずに。」
「じゃあ、ジャンに聞いてみれば?男同士、女には言えないことぐらいあるんじゃないの?」
「それがね、ジャンにも訊いてみたんだけど、彼も知らないんだって。依頼が休みの日だと、彼にも何も言わず、ふらっと朝早くに出かけて、夜に宿に戻ってくるんだって。」
「そうなんだ。まあ、別にパーティーがメンバー全員の行動を一々把握する必要はないし、彼にもいろいろあるんじゃない?」
「確かに、ヒコサブロウの言う通りなんだけどね。だけど、そういうわけにはいかない事情ができちゃって…。」
「事情?」
「うん、実は昨日ギルドのミルさんに言われたんだけど、何かビルね、ギルドに借金できないか相談したそうなの…。」
「借金って…。それは穏やかじゃないわね。」
「でしょ?しかも金額が金額だったから、ミルさんが『何か問題でも起きたの?』って心配してくれて、そのことを教えてくれたの。」
「ちなみにどのぐらい借金しようとしてたの?ビルは。」
「えっと…、500万テーレ。」
「500万!?ちょっとってレベルじゃないじゃない!ビルって何か借金とかがあるの?」
「いや、そんな話は聞いたことはない。」
冒険者ギルドには借入制度が存在する。それは主に初心者冒険者が生活に目途が立つまでの間、ギルドが生活費を一部肩代わりする制度で、それ以外にも武器や防具の貸出、提携する宿屋の割引などがある。このような冒険者生活が軌道に乗るための支援活動も、ギルドの重要な業務のひとつになっている。しかし、金銭の支援はあくまで支度金レベルのものであり、先程のような高額の金銭支援は聞いたことがないし、冒険者支援の範疇を超えるものだ。
「じゃあ、ビルに直接聞いてみれば?」
「私たちもそう思って、彼に問い質してみたんだけど、『なんでもない』の一点張りで、何も教えてくれなかったの。同じパーティーの仲間なのに…。」
アイラはそこまで言うと、少し涙ぐんでしまった。その背中をハーレが摩る。
「それで?何でそのことを私たちに話してくれたの?」
「うん、えっとね…。ビルが私たちに何かを隠しているのは間違いないと思うの。だからその辺を探ってほしいと思って。もちろん少ないけど依頼料は出すわ。」
「状況はわかった。だけどいいの?事と次第によっては、最悪パーティー解散の憂き目に遭うことになるかもしれないよ。このまま放っておくというのもひとつの手だと思うけど。」
「…いいの。やっぱり、これからもこのパーティーで活動することを考えたら、ビルの問題はパーティーの問題として取り組むべきことだと思うから。そういう意味では、本当はヒコサブロウたちにお願いするのはお門違いなのかもしれないけど、私たちは問い質しの一件から余計に警戒されてるみたいで…。」
「そうか。わかった。できる限り探ってみるよ。ミナとセレンはどうする?」
「もちろん、協力するわ。ね、セレン。」
「うん…。できるだけやってみる。アイラたちは友達だし。」
「わかった。」
―――――
翌朝、というよりまだ早朝の部類に入る時間帯。
私とミナたちは、アイラたちが宿泊する宿を遠目で監視していた。アイラの話では、今日は依頼を休みにしたという。最近のビルは、依頼が休みの日は、朝早くからどこかへ出かけ、夜に戻るという生活を送っているらしい。
そういうわけで、朝から彼を見張り、尾行することにしたのだ。本当は尾行は少人数、言ってしまえば、私だけでやりたかったが、ミナたちが私たちもと譲らなかった。したがって、3人で彼が宿から出てくるのを待っているというわけだ。
「ねえ、ちょっとわくわくしない?尾行なんて初めて。」
「ちょっと、お姉ちゃん。遊びじゃないんだから、真剣にやってよね。」
「わ、わかってるわよ。ちょっと興奮しているだけだって…。」
「はあ…。」
「いい二人とも?尾行は大人数になればバレる可能性が高くなるから、昨日打合せした通りにね。」
「はい。」
「は~い。」
尾行するにあたり、3人で固まって尾行すると、いやでもまわりから目立ってしまうため、私が先行してビルを尾行し、その私を二人が尾行するというかたちを取ることにした。
それからミナ、もう少し緊張感持とうね。
そんなことを言っていると、宿から件の人物が現れた。ビルだ。彼は辺りを見回すと、ゆっくり歩き始めた。
「よし、手筈通り始めるぞ。」
宿の窓からアイラとハーレが不安そうに、こちらを覗いているのが確認できた。
ビルは迷うことなく道を進む。途中で屋台の店でお菓子を買っていたが、彼はお菓子を好むような人には見えなかったので、意外だなと感じた。しかし不思議に思ったのは、何もお菓子を買ったことではない。その買った量だ。どう見ても、一人で食べる量ではないように見受けられた。もしかして、彼は余程の甘党なのかという考えが一瞬頭を過ったが、いまは尾行に集中しようとその考えを頭から取り払った。
尾行は順調に進んでいる。彼に気付かれている気配はない。背後も気配察知で確認したが、ミナたちも問題なく付いて来れているようだ。
しばらくして、彼は屋台通りからその進路を外れ、裏道に進み始めた。
バシュラトは交易都市として栄えているが、「裏道」というのが存在する。これは単なる裏側の道を意味するものではない。光があれば影があるという感じで、裏道とは主に貧困地域を指す。治安も決していいわけではない。いくら日光が差す朝とはいえ、理由がなければ、普段は近付かない場所だ。そこに彼はたくさんのお菓子を抱え、その歩みを進めていった。
何となく雲行きが変わったなと思いながら、素早く背後にいるミナたちに手信号でこちらに来るように指示した。彼の尾行を続けていると、彼女たちがこちらに近付いたのがわかった。
「もう裏道に入っている。何が起きてもいいように、こちらも固まって行動しよう。」
「「うん。」」
そのまま彼の尾行を続けていく。幸いにも彼にはまだ気づかれていない。彼はどこになにをしに向かっていくのだろうかと疑問に思っていると、彼は急に立ち止まり、とある建物に入っていった。
そこは見窄らしい佇まいながらも、それなりの大きさを持つ家みたいな建物だった…。
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