本当の別れ
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里親が見つかった凛花。
きっとこれからの世界はキラキラしていて、家族があったかくて優しくて。そんな日常が待ってる。でも凛花の全ては修也であった。
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「君はなんで生きてるの?」
凛花の口から出た言葉はこの世で幾つもある哲学のひとつで、僕には答えなんて知るよしもなかった。だけど、生死について考えたら”親”がでてきた。だから
「死んだ親の代わりに生きること!」
凛花の表情が一瞬だけ消えた気がした。
でもその間は一瞬で、いつもの微笑みを浮かべていた凛花が目の前にいた。
「そう。生きてね。頑張って。」
なぜ、今それを聞いてきて、その言葉を返してきたのか。考えたくもなかった。
「お、おう!凛花もな!」
そんな言葉しか返せなかった。
ふふっと笑った笑みは瞼の裏に焼き付けた。
「じゃあね。」
その言葉を最後に背を向けて段々小さくなる彼女を僕は見つめていた。
それから数年後僕は自立できるようになり孤児院を出た。先生や子供たちが見送りに来てくれて、先生の泣きそうな顔をみて、少し涙が出かけたが、僕は笑顔を貼り付けた。きっと歪だった。
大丈夫。僕は大丈夫。
「修也。ちゃんとご飯食べなよ?何かあったら相談してきなさい。待ってるから」
心配そうだな。
「先生。ご飯は僕が1番食べるだろ?」
いつもの巫山戯た会話のようにヘラヘラと笑いながら。
「そうね」
やっと笑顔になった先生が、躊躇いがちに手に持っていた封筒を渡にきた。
「これ、ずっと渡そうかと思ってたんだけど……」
白い封筒は、孤児院の名前が書いてあった。
「これはなに?」
「ゆっくり見なさい。」
意味深な先生の言葉に首を傾げながらも、皆と別れを告げた。
暗い部屋。電気をつけても温かさがなかった。
憧れてた一人暮らしは、思ってたよりも寂しかった。先生の笑顔もないし、子供たちもいない。
確かにあそこは寂しいところだったが、楽しくもあった。それに凛花もいた。
「そうだ。」
僕はズボンのポケットに無造作に突っ込んでしまっていたシワのよった封筒を取り出した。
「なんなんだろ。」
少し嫌な予感がしながらも、封を切った。
凛花の2文字が一番最初に目に入った。
名字が変わったのか、大園になっていた。
○○孤児院様。
大園凛花を、○月✕日首吊り自殺をしているところを発見しました。また、幼少期から育ててもらった孤児院様に——
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大園宅
最初の数行。いや、数文字だろうか。その言葉しか見えなかった。まだ続きがあったが読む気にならなかった。なんとも言えない。涙も出ない。きっとこれは先生のいつもの上段で本当の話じゃない。
だって、凛花が死んだなんてありえないだろう??
数年前、生きて。って。生きろよってそんな会話しただろ?それに自殺?あの凛花が?
嘘だ。笑えないよ……
僕はこの日一日中泣いていた。いや、記憶が無い。だけど、気がついた時には朝になっていて、
目が腫れていた。
部屋のカーテンを開けて、朝日を浴びる。
顔を洗って、軽いご飯を作って、私服に着替えた。
「明るい空だな。」
部屋の窓を開けた僕は高い高いマンションから飛び降りた。
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修也は知らなかった。凛花の家庭事情を。
凛花は考えていた。修也がいない世界を。
修也は知っていた。なにかを失うことを。
凛花は知らなかった。失うことを。
ここまで、読んで下さりありがとうございました。この話は終わりにさせていただきます。
また、新しい話を投稿していきたいと思うので、よかったら見てくれたら嬉しいです。
アドバイス等があれば教えてください。