浮立つ心
翌日の時間は驚くほど穏やかにスムーズに流れていった。
ユリウスがまたしても会議に次ぐ会議で、ろくに顔を合わせていないのだ。
湧き上がる自分の喜びを押し殺さなくていい解放感は、ライラの作業効率を一段と上げた。
ユリウス本人宛の文書や手紙の検閲、訪問アポイントメントの管理、調整。執務室の掃除も済ませた。
今日は来客もないので他に残っている仕事はひとまずない。
ここ数日会議の頻度もかなり多いが、枢密院会議と違ってそれほど公式なものでもないためか、ライラも速記に駆り出されなくて助かっている。
時刻は既に午後3時。
あとはユリウスが会議から戻り次第、明日のスケジュールの申し送りをして終了だ。
(あと3時間後にはルークと会えるんだ・・)
そう考えるだけで、気持ちがどんどん高揚していくのを感じる。
今この瞬間、生きているのがとても幸せで楽しい。
周りの同僚の仕事を手伝いに回りたい気分だ。
5時に仕事が終わったらメイクを直して髪の毛も整えよう。
今日この場で想いを伝える気などないが、せめて2人の絆は今も変わらずそこにあるのだという共通認識を持っておきたい。
そんなことを考えていると、目の前の廊下を複数の足音が通るのが聞こえてきた。
少し机から身を乗り出すと、やってきたのはユリウスとノーランだった。
どうやら会議は終わったようだ。
昼食後すぐに会議室に入ったから、2時間は経過している。
ノーランに至っては歩くのも辛いのか、背中を深く折り曲げて四つん這いになりそうな勢いだ。
相変わらず素直な男だ。
その三歩先を行くユリウスはさすがに騎士団長の威厳の成せる業か。平然とした顔で優雅に歩を進める。
「ユリウス閣下、ノーラン様、お疲れ様です。」
ライラは遠慮がちに声を掛けた。
「あぁライラ。あと30分したら明日の申し送りに来てくれ。先ほどの会議の中で、少し片づけなければいけないことができた。」
ユリウスはいつもと何ら変わりない涼しい顔でそう告げると、そのまま執務室へ入っていった。
それを見送ってから、ノーランは恨みがましい目であらぬ方向を見つめて吐き捨てた。
「僕は今後指示待ち人間になる。事細かに部隊長の許可を取ってから仕事を進めて、責任は絶対に部隊長に取ってもらうんだ。」
優秀な男も何かと苦労するようだ。




