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プロローグ

「ライラ、俺は騎士団へ行く」


夏の日差しを浴びて咲き誇るポーチュラカに彩られた学園の中庭で。

ライラとルーク、2人きりの甘く匂い立つ空間の中で。

あまりに晴れやかに、爽やかにそう言った彼を、

ライラはただぽかんと口を開けて見つめるしかなかった。



アークランド王立高等学園は、このアークランド王国でただ一つの高等教育機関だ。

中等学園までは全国民に義務化されているものの、高等学園への入学は一握りの優秀な学生と潤沢な資金を持つ貴族の入学に限られていた。

なぜなら、一部の例外を除けば、高等学園を卒業することだけが王宮で働く唯一無二の足掛かりとなるからだ。


ライラ・フィッツジェラルドは後者の立場だ。

彼女に王宮で働く意思はなかったが、フィッツジェラルド家はアークランド有数の貴族の1つで、一人娘のライラは将来の跡取りを期待されていた。

彼女の意思に関わらず、高等教育は定められていたものだったのだ。

特に勉学への興味はなく、ライラにしてみれば憂鬱でしかなかった進学。

だが入学して彼女の気持ちは180度変わった。

彼と出会ったのだ。 


ルーク・ロス。

ライラが1年前から想いを寄せる彼は、高等学園2年の夏、黒い癖のない短髪を風にたなびかせて高らかに宣言した。学園を辞めて王宮騎士団へ入団すると。


「ルーク、どうして?騎士団へは卒業してから入ればいいじゃない。

 なぜ学校を辞めてまで今行かなければいけないの?学園の卒業資格がなければ指揮官への登用はなく、

 一生一兵卒のままだよ・・」


「分かってる。でも今なんだ。俺は尊敬できる人に出会った。そしてその人の元で働けるチャンスをもらった。」


「あの人って?この前偶然お会いしたフィン第二師団長のことを言ってる?

 確かにすごくかっこよかったよ?私たち市民を守ってくださる英雄だもの。でも・・」


「ライラ、俺は思い付きで言っているわけじゃない。安穏と学園生活を送っている間、ずっと考えていたことなんだ。」


「ルーク・・。でも・・。」


ライラはその先の言葉を続けられなかった。

ライラは信じていた。ルークは優秀だから、卒業したらすぐにでも王宮のどこかに配属になって活躍するだろう。

そうなれば彼の生まれなど気にならなくなる。

そうなれば、フィッツジェラルドを継ぐ婿として向かい入れても何も問題はないと。

でも、考えてみればライラとルークは想いを確かめ合ったことなどない。

ただ仲が良かっただけ。

彼との将来を密かに夢見ていたのは、ライラだけだったのだ。

ルークは、違う未来を見据えてあんなに輝いた目をしている。

今の彼の目に、自分など少しも映っていない。

ライラはたまらなく恥ずかしかった。


「うん、わかったよルーク。応援してる。」


彼女に残っていたプライド全てを賭けて、そう声を掛けた。



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