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青春物語  作者: 鍋兼祐
8/9

女案僕案

「まじか……」

本気(マジ)じゃ」

と驚いたものの、よくよく考えればあり得なくはないよな、納得できるものだった。

数時間(いままで)のことを経験していればだが

あの会話の後、僕は座敷わらしに言われた通りに鈴谷には本当に申し訳ないが減笑荘に引き戻した。

何故ならばフェイストゥフェイスでなければ言いたくないという謎のわがままに付き合わされ、そしてドアを開けると、こう告げられた。

「を主の身体、少しの間、儂に貸せ」

そして一行目(いま)に至る。

「あのさ、ちょっといいか?ふと思ったんだけど僕らの中だけを入れ替えるって事は出来ないのか…?」


——あ、あれ?

僕、そんなに間の抜けたこと言っちゃったかな——?

「は———!」

今まで見せたことのない顔で驚きの感情を表す少女。

「あ、さてはお前、気づいてなかったな?」

「え!そんなことないし!最初から分かってたし」

そっぽを向いて強がる少女の姿は本当の年齢を知らなければ可愛いと思えるんだろうけど……

「を主の案でも良いが…」

もう僕の案で決まったらしい。

「儂がお主で、を主が儂か」

確認するように僕の案を口にする。

こうしている間にも鈴谷は逃げてるんだよな…

座敷わらしの身体には人間の僕が入り、人間の僕の身体には幽霊である座敷わらしが入る。

そうすれば、座敷わらしは暴走化する事なく減笑荘から出ることができる。

まあ、簡単に言えばプラマイゼロの考えなのだ。

僕の考えだけど…

「どうだ…?」

と聞いたものの本当に考えているわけではなさそうだった。

「何をそんなに考えてるんだよ?」

「いや、別の何も」

何もじゃないやつじゃないか…その言い方は

「何に考えてるんだよ」

さっきよりも張った声で言う。

反応はない。

意地でも僕の案を認めたくないらしい。

はあ——

鈴谷のことも心配だし、仕方ない折れてやるか…

「ああ、分かった。僕の案は却下だ。座敷わらし何か良い考えはないか?」

かなりの棒読みになってしまった。

「そうじゃな。一つ思いついたのじゃが、おいを主。ひとまず入れ」

言われるがままに玄関に入り、扉を閉め再び対峙する。

「そして全裸になれ」

ん?

「いやいやいやいや。ふざけている場合じゃないんだよ!ってなんでお前まで脱ぎ始めてんの⁈」

こいつとんでもない痴女なんじゃないか——?

「良いか、今から儂を抱き上げ、儂の合図で飛べ」

そんなことを言い終える前に座敷わらしは全裸になった。

訳がわからない。支離滅裂とはこのことだろう。

いや、この場合は尻滅裂かな……?

いや!ふざけてる場合じゃない!

もうこいつを信じるしかないんだよな……?

そんなことを考えている間に下から目線がかなりキツイ。

「分かった!脱ぐよ!脱げば良いんだろ⁉︎だからその目はやめて…!」




…なんだこの状況は。

部屋には全裸の青年と幼女。

完全なる犯罪現場である。

そしてこれから、この幼女を抱き上げなければならない。

両腕を広げ、早くしろと急かす座敷わらしを僕は一生忘れないのは確かだった。

そして、抱き上げた。

「良いか」

首元に息がかかり、ぞわっとすることにも反応する事も出来ず、いや別に反応をしたかった訳ではないけど…

「三、二、…一」

そして、ジャンプ

そして僕と座敷わらしの数ミリの間から光が溢れ出す。

「良いぞ」

あまりにも眩しかったせいで目を瞑った僕は座敷わらしの声で目を開ける。

あれ…?座敷わらしってこんなに声低かったっけ?

目を開けると目の前には全裸(ぼく)がいた。

「ちょちょちょちょっ!早く何か着ろ⁉︎」

そして甲高い声が部屋中に響き渡った。

「お主、なぁ、そんなに慌てんでも自分の身体じゃろうが…」

呆れ半分に衣服を身につけながら言う座敷わらしに背中を向けながら僕も着物を羽織ろうと——したが、生まれてこの方、こんな和なものを身につけた事はない。

つまり、着方が分からない。

「なあ、座敷わらし…着物ってどう着るんだ?」

この声には未だに慣れない…

僕が着ていたものを全て装備し終えた座敷わらしは僕の方へやって来ると、ありがたいことに着物の着付けを教えた。


玄関で肩を並べ、ドアを見つめる。

「なあ、座敷わらし。一つ良いか…?」

「なんじゃ?」

その喋り方を止めてくれと言っても、すぐ変わるものではないのはないのは僕は分かっている。

それが言いたいのではない。

「服——脱ぐ意味あったのか?」

「今から移動しながら説明しても良いならな」

しょうがないか…

「移動っていうか、まず鈴谷の場所が分からないと……あ。そうか。匂いか」

まあ、チートキャラがいるんだ。すぐに見つけられるだろう。

「よし、任せた。早く行くぞ」

自分(しゅう)のふくらはぎをパンと叩く。

「何言っとるんじゃ。儂にはもうその力ないぞ。今はお主がその力を持っとる」

チートキャラが雑魚キャラにジョブチェンジをした。

「やり方……教えてくれよ。頼むぞっ⁈」

そして座敷わらしはドアノブに手を掛け、外に踏み出すと同時に

「教えるも何も感じ流だけじゃからな。don’t think feel 、じゃ」

はいはいはい。分かってましたよ。こいつの説明なんて最初から当てにしてなかったよ!本当だよ?

あと何で僕の体に入ったばかりなのに、英語発音良いんだよ!

「行くぞ」

座敷わらしに一言で僕たちは減笑荘の二階から駆け下り、道へ駆け出す。







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