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青春物語  作者: 鍋兼祐
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秀信事辞

——四月七日 午前十一時二十三分——

この僕、小早川秀(こばやかわしゅう)は人界に生誕した。

この時、両親は素直な元気な子に育って欲しいと思っていただろう。だがその願いは、儚くその三年後には破られた。

さあ何があったか

サンタさんだ——

多分、大半の親は物心のつく四歳頃から『いい子にしていればプレゼントが来る』など多分につまらないことを囁きかけられるだろう。

しかし僕は見てしまったのだ。枕元にプレゼントを置く父親とそれを見守る母親の姿を。

それから全てにおいて疑いから入ってしまうようになった。

例えをあげてみよう。夏には必ずと言っていいほど放映している心霊番組だ。その中で時々、偶々(たまたま)、偶然、予期せぬことに映ってしまった幽霊だ。その一つとしてバースデーソングを暗闇の中で家族が歌っており、その中に主役である人、そしてビデオを回している人がいる。そしてビデオ映像には実際にはありえない主役を写しているのではなく周りを映し出すのだ。ここで四歳の僕は思った。『いや、主役映せよ』と。

四歳のクリスマス前日。つまりクリスマスイブ両親にカマをかけてみた。

「ねえ、お父さん」

母親が食べ終わった夕食の皿を洗っている時を見計らって声を掛ける。

「ん、何かな?」

笑顔で僕の方に向く父親。

「今日、サンタさん来るんだよね?」

「うん、そうだろね。秀は今年良い子にしていたからね」

途方もなく幼稚な質問に笑顔のまま答える。そしてここからが勝負。

「サンタさんってどこから来るの?」

我ながら可愛い質問だ。そんなことを聞かれるとは思っていなかったのだろ。父親は少し表情を曇らせこう答えてみせた。

「いやー実はお父さんも知らないだ。はは!不思議だよね」

子供の視線に合わせるには模範解答と言えるだろう。

それから約一時間後。父親は風呂に入りリビングには僕と母親の二人きりだ。ここで僕はさっき父親にした質問もといカマをかけてみた。

「ねえねえ、お母さん。サンタさんってどこから来るの?」

母親は笑顔で率直にこう答えた。

「寒いところからトナカイの引くソリに乗って来るのよ」

はい。ありがとうございました。

僕が言いたいことは分かりますね。

“答えが噛み合ってないぞ、お二人さん”

そんなこんなで僕は目で見たことないものは信じない様になった。つまり宗教に入信できない。まあ別にしたいと思ったことはないのだが。

それから十三年の時が過ぎ、僕は高校二年生になった。

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