ソロと三勇者3
「マナの地のペルグランデ山か……」
ミーニャ達の話を聞き終えると、幼女は静かに目を閉じ、言った。
「神域の世へ行けば、闇の勇者を負かせた光の勇者に出会うことができるかもしれません。かつて4000年前、神々や精霊と意思疎通を可能とした一族が、ペルグランデ山の頂に、神々の世界と通じる道を遺したと聞いています。その真相が知りたいのです」
ミーニャが訊ねると、ソロは幼女を見た。
「先生、何かご存知なのですか?」
ソロが訊ねると、幼女は息を溢した。
「ご存知も何も、それについては知りたくない程に知っておる。かつてマナの地で、神々や精霊と意を交わし、戦に巻き込まれ滅んだ一族。わしは、その一族の末裔じゃからの」
幼女がそう言うと、雷光のような動揺が走った。
「マジかよ……」
口を塞ぐように覆うシエナの隣でダイガが声を漏らす。
「貴方がその一族の……!?」
胸を打たれたような衝撃を帯びた声でミーニャが言うと、幼女は頷いた。
「然様。しかし今は昔話をする程の時間はないはずじゃ。結論から言おう。確かにお主の言う通り、ペルグランデ山の頂には、神域の世へ通ずる門がある」
一瞬駆け巡った喜びを制するように、表情を変えず幼女は話を続けた。
「じゃが、ペルグランデ山は世界で云われている通り、並大抵の人間はおろか、勇者とて命の保証ができぬ山じゃ」
「死ぬかも、ってことか」
アルスが訊くと、幼女は顔を曇らせ、短く頷いた。
今ここには、深緑の勇者、紫電の勇者、蒼穹の勇者の3人が揃っている。
光の勇者を味方につけることができたとあらば、闇の勇者との戦いにおける勝機は確実なものになるだろう。
しかし、ペルグランデ山を登山するとあらば、そのリスクは遥かに大きい。
最悪の場合、光の勇者の協力を得るどころか、いずれかの勇者の力を失いかねない。
「ボクで良ければ、行くよ」
沈黙の膜の中響いた声に、全員は顔を上げた。
その言葉を発したソロに、アルスは、
「おいおい、ソロ。何もお前が行くことはないだろう」
「勇者の力の半分以上はアルスが持っているから、アルス達が向かうよりは、ボクが行ったほうが良いと思うんだ。それにもし、ペルグランデ山に登っている間に闇の勇者の総攻撃が始まったとしたら、誰かがそれを止めないといけない。勇者の力を持っている3人が揃って行動していたほうが、絶対に良い」
心配そうな表情を浮かべるアルスに、ソロは微笑んで、
「大丈夫だよ。ボクがそんなに軟じゃないことは、アルスも知ってるでしょ。それに、さっきも言ったでしょ。アルスの役に立ちたいんだって」
いつもの調子で無邪気に笑みを浮かべて言うソロに、アルスも口元を和らげると、ゆっくりと頷いた。
「ソロさん、ありがとうございます。頼みました」
ヒマリがそう言うと、ソロは自信強く首を縦に振った。
「よし、じゃあ俺達も魔界の門へと向かうか」
アルスが声をかけると、その場にいる全員は強く首を縦に振った。
気合いの入った複数の声が森に響いた後、人影が去りゆく中、「ソロ」と呼ぶ声に、ソロは振り返った。
アルスはソロに歩み寄ると、優しくソロの背中に手を回し、言った。
「死ぬんじゃないぞ」
心配そうで静かな、そして、頑張れよとも聞こえた、その声に、ソロは微笑み、「うん、任せて」と返した。
お互いに笑みを交わすと、蒼い短髪をした精悍な男の人影は、去りゆく人影を追って足を走らせて行った。




