ソロと三勇者1
その訪問者が訪れたのは、アルスに向けてコンタクトバードを飛ばしてから2日後の事であった。
東の青い山々の上から差し込む白い朝日が薄い窓ガラスを突き抜け、小さな小屋の中を照らしていた。
「どうぞ」
小屋の主である少女から茶の入った入れ物を差し出されると、客人の少女は、ニコっとし、「ありがとうございます」と返す。
その横に大人しく座している、少年はぎこちなく頭を軽く下げた。
サイドテールに結んだサラサラとした薄茶色の髪に、瞳は丸く、可愛らしい輪郭と華奢な容姿は、10の歳にも満たない印象を与えた。太い帯で結んだ着物状の衣服は片側を着流し、身体の輪郭にピチッとした薄い黒色のタートルネックが露わになっている。首元には紐で結ばれ、先端に宝石のついたネックレスのようなものを身に付けていた。
一方でもう1人の少女のほうは、17,8程の見た目容姿で、礼儀正しいお姉さんという印象を与えた。白い法衣に身を包んだその姿は、ミーニャにそっくりなものであるが、髪は肩を少し越すほどの長さで、三つ編みにまとめられた前髪を片側から斜めに額にかけている。
「まさかこのような場所に、紫雷の勇者が訪れるとはな」
席に着いたソロの近くの机上で、チョンチョンと歩く小鳥が、向かいに座る2人に言うと、少女は若干の苦笑まじりの笑みを浮かべた。
「私もまさかこのような場所で、グレイビアド様にお会いするとは思いもよりませんでした。けどこの子が、この地の近くで勇者の力を感じたと言うものですから」
少女が隣に座る少年に視線を向けると、少年は曖昧に頷いた。
「こんなチンチクリンの力を感じる程の魔力の持ち主とは、流石は紫電の勇者の力を継ぐ者といったところかの」
「私も驚きました。賢知陣の私でさえも、この近くに来るまで他の勇者の力など察知できなかったのに、この子はこの大陸に入った時からそう言っていましたから」
すると、少女は自身の胸元に手を当て、
「挨拶が遅れました。この子は、紫電の勇者の力を受け継ぐ、ウィル。そして私は、この子の導き手である賢知陣のヒマリと申します」
ヒマリに紹介され、ウィルがお辞儀をすると、ソロも自己紹介をする。
「ボクはソロ。一応、青の勇者……です」
ソロが、そのように名乗って大丈夫なのか、と訊ねるように小鳥に視線を向けると、小鳥は言葉を加える。
「少し複雑じゃが訳があってな。青の勇者の力は、こやつと、あるもう1人と分かたれておる。さて、前置きはこれくらいにして、本題に入ってもらおうかの。その様子じゃ、聖戦を前に一戦を交えようという訳ではあるまい」
小鳥がそう言うと、ヒマリは真剣な面持ちになり、首を強く縦に振った。
「はい。北の大陸にある、魔界の門についてはご存知でしょうか」
「あぁ、知っておる。魔界の門の現状についても、闇の勇者が企んでおることについてもな」
小鳥が言うと、ヒマリは口元を和らげ、
「ならば、話は早いです。ソロさん」
ソロは名前を呼ばれると、目の前に座す少女に視線を向ける。
「私達は、青の勇者の力を継ぐ貴方に、御力を貸して頂きたいと思い、この場に参上致しました」
そう言ったヒマリに、ソロは少し目を見開くも、静かにその賢知陣の話を聞いた。
「闇の勇者はかつて、その大いなる力で他の勇者達だけでなく、地上のあらゆるものを蹂躙したと云われています。闇の勇者が聖戦を前に、この世界に総攻撃を仕掛けようとしている今、これを止めなければ、かつての大災厄の時代のように聖戦に無関係な多大な犠牲を招き兼ねません。しかし、闇の勇者は七勇者の中でも強大な力の持ち主。私達は、勇者達が協力して、これを食い止める必要があると考えています。ソロさん、単刀直入にお願いします。どうか私達と共闘して頂けませんか」
その返事は、すぐだった。
ソロが二つ返事をすると、ヒマリは驚いたように口をポカンと開けた。
出会ったばかりで、お互いの事も良く知らない相手。ましてや聖戦では敵対しかねない存在に、快く返事をしてくれるとは思えない。説得は必然だろう。
そう考え覚悟をしていたヒマリは、少し口をパクパクとさせると、
「い、良いのですか!?」と訊き返した。
ソロは微笑み、頷くと、ヒマリは大きく頭を下げ、礼を何度も言った。
「ヒマリと言ったな。闇の勇者の事については、わし自身もお主と同じ考えじゃ。このまま魔界の門が開かれ、総攻撃を受けようものなら、あの地獄が再現されることは免れない。この事態を止めるには、複数の勇者が協力する必要がある。そんなお主達に朗報じゃ」
「朗報?」




