ミーニャ篇 不穏の影
*この物語は「アルスと深緑の勇者」を御読みになった後にお読み頂けると、よりお楽しみいただけます。
「どうやら、上手くいったようじゃのぉ」
エルダ老がそう言うと、窓の外を見つめ、ミーニャも微笑ましく頷いた。
「いやはや、フォレシアは何かと気難しいところがあってな。わしも彼女と出会った時は苦労したものじゃ。人間の客人がわしの所に訪ねて来た事があってな、その時も今日のように早とちりをしてしまったんじゃよ。その時はこの杖でコツンと叩いてやったもんじゃ」
「まぁ」とミーニャは思わず笑いの声を漏らした。
「しかし、まさかこのような場でエルダ老とお会いできるとは思いもしませんでした」
「わしもじゃ。あんな可愛い女の子が、まさかこんなピチピチの美人になるとは思わなんだ。しかもそれが賢知陣となったのだから、ソフィアの奴も今頃天上界で大いに自慢していることだろうなぁ」
エルダ老は、ミーニャがまだソフィアの弟子であった頃、自然界について教授を賜った師だった。
エルフやドワーフ、上位では精霊とも交流のある師で、恐らくその道に詳しい者は彼をおいて他にはいないと言われるほどであった。
2人は茶を一口含む。
「さて、本題に戻るとするか」
エルダ老が柔らかな声から芯の通ったような声になると、ミーニャも眉を張る。
「先程の話によれば、本来アルス殿を導くべきであった賢知陣、アーリッシュが別の村の者に彼を預けたと」
ミーニャは頷くと、エルダ老に説明した。
「私が伺った話では、アルフォリア王国は12年程前に滅んだと聞いています。青の勇者の力を持つアルスさんはその年にあの村に預けられたとすれば、その預けた男性の方は、恐らくアーリッシュさんかと」
「もし、その話が本当だとするならば、アーリッシュがこの世にいる可能性は極めて低い。現にお主がアルス殿の導き手として神託を賜ったのであれば、最悪の事態は確実であろう」
エルダ老がそう言うと、ミーニャも顔を曇らせた。
「ミーニャ。お主も聞いたかもしれぬが、前代の聖戦でも、賢知陣が何者かに襲われ、命を落とすという事はあった。そしてその悪行に手を染めたのは、闇の勇者じゃった」
「闇の勇者が……」
「うむ。もし今回の件が闇の勇者の手先によるものだとすれば、赤子の勇者ごと亡き者にするつもりじゃったのだろう。聞けば、最近魔物たちの気性も荒々しくなっていると聞いている。ミーニャよ、よく用心するのじゃぞ」
エルダ老がそう言うと、ミーニャは強く首を縦に振り、
「ご忠告、ありがとうございます。エルダ老もお気をつけて」
「うむ」




