声1
セアの大鎌を振る構えが見えると、ソロ達は咄嗟に身構えた。
セアの甲高い、興奮染みた狂気の声と共に大鎌が振るわれると、白光の三日月の刃が走った。
「くっ!」
余りの大きさにソロ達が回避の構えから、相殺する攻撃の構えになるのを見ると、シエルは盾を持った腕をブンを振るった。
現われた盾形の光の防御結界に、剣技を放とうとしたソロ達の腕がビクッと止まると、巨大な刃がそれぞれの結界に音を立て激突した。
結界は空気の中に消えるように、一瞬で消滅すると、シエルは大きな声で、
「彼女からの攻撃に触れてはなりません! もし体が触れてしまえば、魂もろとも、消えてしまいます!」
シエルの言葉に、アルス達の表情に怖気が微かに浮かんだ。
「だったら、遠距離から攻撃するまでだ!」
ウィルは手で宙に文字型を切り、短い魔法を詠唱した。
すると、ウィルの周囲に淡い紫の光を帯びた、魔導書のような本がそれぞれ左右に6つ浮かび上がる。
そして、ウィルが呪文を詠唱すると、それぞれの魔導書が強く光り輝き、巨大な光の玉をセアの真上に向かって放った。
それぞれの玉が光の矢の雨を無数に振らせると、シエルは再び盾を構え、ソロ達全員を覆う結界を張る。
豪雨に呑まれたようにセアの姿が完全に見えなくなり、光の玉が全ての光を放出し消えるも、シエルは結界を張ったまま、その様子を見つめた。
ソロ達がハッとする。
セアの姿は無傷のまま、そこにあった。
絶えず唱えていたウィルは、次の呪文の詠唱を終えると、魔導書は巨大な雷撃の閃光をセアに向けて放つ。
それが直撃した時だった。
6つの雷柱は、セアの目の前で、セアに吸い込まれるかのように消えた。
「違う、あいつは攻撃を吸収しているんじゃない」
それに気が付いたアルスは言った。
「あいつは受けている攻撃を消してやがるんだ」
「消している……」
ソロが疑問符を帯びた声で言うと、セアは白い牙を見せながら高らかに笑った。
そして、白い尾をブンと大きく振り落とすと、ソロ達の立っている地面には稲妻のような亀裂が走り、そして、ガラガラと音を立て崩れ出した。
「うわっ!?」
ソロは、崩れた足場と共に落下すると思った。
だが、崖を落ちる時のような感覚はなく、不思議なことにまだ硬い何かの上にいるように思えた。
ソロが目を開けると、足元には暗い奈落が広がっていた。
「これは……」
シエルやアルス達も同じような顔をしていた。
まるで透明な地面がそこにあるように、ソロ達の身体は暗闇だけとなった空間の中に浮かんでいた。
セアの尾に叩かれ崩れた地面の瓦礫は、雲散するように消え、闇だけの世界に包まれると、そこはもう魔界とは別の世界のような歪な雰囲気が渦巻いていた。
「貴方達の攻撃はもう私には効かない。全てを"無"に帰する力――古の神々の力である勇者の力を超えた力を持つ私に敵う者など、もうこの世にはありはしない!」




