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少女達の意志7

 ソロはリダイアに今までの事を様々に話した。

 自分の生まれ育った村、先生との出会い、長閑(のどか)な村や大きな町、綺麗な国、そこで出会った人達。ドレッサーコンテストに無理やりに出場させた気の置けない道具屋や、雪桜の舞う地で疲れた旅人を癒す精霊に、病んだ自分を看病してくれた魔物。アルス達との出会い、そして擦れ違いからの再会。フォレシアやウィル、自分を支えてくれる仲間たち。

 些細な話でも、リダイアとオルディウスは熱心な顔つきでソロの話に耳を傾けた。

 ソロが真剣な表情になれば、リダイアは敬虔(けいけん)に近い瞳でそれを聞き、可笑しな話を(まじ)()れば、くすぐったいようにクスッと笑った。

 ソロもいつの間にか、そんなリダイアに、まるで親しい友人に話しているような気分になり、しばらく話は尽きる事がなかった。

 リダイアが眉を上げたのは、その単語がソロの口から出た時だった。


「ノウ帝国だと?」


 リダイアとオルディウスは顔を合わせると、オルディウスは思い出したようにリダイアに言った。


「確か、2000年前に栄えた、この大陸一番の大帝国です。当時、我等の国はまだ興ったばかりで大帝国には至りませんでしたが、数々の大国が栄えていたと云われています。

 しかし、大災厄(インフェルヌス)の中でそのうちの(ほとん)どが滅亡を迎え、ノウ帝国もその一つであったとか」


 オルディウスが言うと、ソロは頷き、話を続けて言った。


「ノウ帝国は、広大な知恵を持ち、高度な技術を持った国だった。叡智(えいち)の杖と呼ばれる、この世界の事についてのあらゆる問いに答える杖を持ち、その恩恵に(あやか)り、魔界の脅威を迎える時でさえも、敵無しと言われていた程だった」


「叡智の杖は、賢者の神器の一つと云われている杖の事か?」


 リダイアが訊くと、ソロはキョトンとした顔をした。

 それを察したオルディウスはリダイアの言葉に説明を加えた。


「賢者達に伝わる伝説の秘宝だ。

 一つは、今、話にあった叡智の杖。

 もう一つは、万物を生成する事のできるユグナ・ノエルの錬金釜。

 そして最後の一つは、身に付けた者に強力な魔力を授ける極光(きょっこう)の衣だ。

 その全てを手にした者は、如何なる愚者であったとしても大賢者になることができると伝えられている」


「現存する、どんな歴史の書にも、ノウ帝国については大災厄のうちに滅んだとしか記されていない。賢者の神器のうちの一つを持っていた国が一体何故(なぜ)滅んだのだ?」


 リダイアが言うと、ソロは答えた。


「叡智の杖は、この世の事についてしか答えない。魔界という、未知のものに対しては、その対処法を伝えることはなかったんだ。

 結局、ノウ帝国の人々は、他の国に頼ることもなく、最後までその杖に(すが)りつき滅んで行ってしまった」


「…………」


 リダイアはそれを聞くと、何かを思考するように(うつむ)いた。

 

「皮肉なものだな。当時強国として(おそ)れられていた国々は滅び、彼らから弱小勢力として蔑まれていた(れん)の国を始め、小国の国々が協力し、難を(しの)いだというのは……」


 リダイアは深く、重く瞳を閉じると、しばらくの間、沈黙した。


「他を無用とし、独りの力で生きて行こうとした帝国――まるで、今の我等の行く末を聞いているような気分ではないか」


 リダイアの声が空気の中に消えて行くと、オルディウスも深く息を漏らした。


「我等は」


 リダイアが口を開くと、ソロは顔を上げた。


「我等は、攻防の戦術には長けていても、協力し合い、共に戦う事には無知に等しい。

 自身ら以外への信頼を怠って来たがゆえ、その裏切りを必要以上に恐れている。

 それに、これまでも独断の限りを尽くしてきた国だ。今更に、力を貸してくれる国など……」


 リダイアの悔やむ声に、ソロは首を横に振った。


「ボクに、良い考えがある。絶対に君たちを裏切ったりしない、信頼できる国だ。

 紹介しようと思えば、今すぐにでもできる。

 ただ、一つだけお願いがあるんだ」


 リダイアとオルディウスは互いに顔を合わせると、再びソロに視線を戻し、頷いた。


「私達にできることであれば、限りを尽くそう」


 ソロは一度微笑むと、表情を戻し、


「どうか、その国が危機に瀕した時には、その国にも手を差し伸べてほしい。大災厄で自分たちの国を一番に護りたいのは、当たり前のこと。ボクも国の王様だったら、きっとそうしている。

 だけど、どの国も自分の国ばかりを優先していたら、一緒に魔界に立ち向かうことなんてできない。どうか、その国も、君たちが、君たちの国の民にするように接してほしいんだ」


 その言葉を聞くと、リダイアとオルディウスは深く頷いた。


「分かった。騎士の誇りにかけて、誓おう。

 我等は必ずや約束を果たす」


 リダイアが手を差し伸べると、ソロはその白い手に、自分の小さな手を伸ばした。

 そして、ギュッと固く結ばれると、2人の勇者は、凛々しく、そして優しく微笑んだ。

 

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