狂瀾8
見覚えのある蒼い髪。
「蒼穹の勇者の野郎か!?」
レオーネが叫ぶと、アルスは胸の奥底から喉の張り裂けそうな程の声を上げ、勢いよくレオーネに向かって駆け出した。
レオーネはすぐに斧を盾にアルスの剣戟を防ぐと、鈍い金属の音が響いた。
細身の剣。それからは想像もできない強烈な一撃にレオーネの足は地面を擦り後退する。
「くっ」
レオーネは、すぐに目の前の小僧を斧で振り払おうと斧を力いっぱい振るうも、アルスはそれを一つ跳びで後退し避け、バネのようにレオーネに突撃した。
空気を切る様な強力な剣の弧がいくつも光を帯びて現われ、レオーネに襲い掛かる。
その多くを斧で何とか防ぐも、それを掻い潜った剣の弧はレオーネの腕や頬に走った。
レオーネは剣の弧の走った場所に、熱い何かを感じると、ふと目についた腕の傷が目に映った。
(こいつ、俺の皮膚を斬り裂いて――)
レオーネは大きく宙へ跳び上がり、アルスの剣の嵐から抜け出す。
以前とは格段に違う攻撃力。
いや、それだけじゃねェ。敏捷性、判断力、全てに隙がない。
戦闘のセンスが研ぎ澄まされてやがる。
思考の盲目。それは刹那のことだった。
だが、レオーネが我に返ると、その見下ろす地面にはすでにあの小僧の姿は見えない。
そして背後の気配に体が一瞬震えると、レオーネは振り返る。
「うおああああああ!!」
雄叫びと共に、振り下ろされた大きな三日月がレオーネの体を斬り裂くと、苦痛の悲鳴と血の飛沫を噴き上げながら、レオーネは地上に叩き落とされた。
しかし、地に着く直前、レオーネは態勢を直すと地を蹴り大きく跳んだ。
そして、ペスカを抱いた手下の前に着地すると、ペスカを手下の男からぶん取り抱え、
“アウルム・ガデューカ――!”
巨大な光の波がレオーネから分かれて地面を斬り裂きながら走ると、アルスは剣を後ろへ大きくためた。
そして、素早く何かを詠唱すると、アルスの聖剣は青白い光を発し、
我に在りし渾身の力を解き放ち剣に宿し賜え――蒼の王
素早く詠唱をすると、大きく剣を振り斬った。
剣から放たれた巨大な白い三日月が、迫りくる金色の波を上下に斬り裂き粉砕すると、土を巻き上げながら爆風が大地に走った。




