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狂瀾3

 花火の白い光が地に向かって落ち、空に消えた瞬間(とき)だった。


「おい、あれを見ろ!」


 後方の隊列から男の声が響くと、その男が指差した方向に視線が波のように次々と向いた。

 フォレシア達のいる手前の山の頂。魔界の門の元でギラギラとした黄金の光。

 細くなったフォレシアの目が見開くと、


「伏せろ!!」


 黄金の光を放つ巨大な戦斧が、ニヤリとした巨漢の腕と共にブンと振るわれると、金色(こんじき)の爪のような巨大な3つの波が、凄まじい勢いでフォレシア達のいる山に向かって地を走った。

 フォレシアはすぐ様に弓を構えると、3単語程の言葉を唱え、1本の矢を放った。

 鋭い(くちばし)を持った光の巨鳥と化した、その矢が、こちらに直進してくる黄金の爪のうち、真中のものに直撃すると、熱を帯びた衝撃波が辺りの山に広がった。

 雪の地面を弾き飛ばしながら駆ける、その強風に何とか吹き飛ばされまいとフォレシア達は身を低くし耐えたが、後ろから悲鳴のような声が何度か遠くへ消えて行くように鳴り響いた。

 風が止み、雪の粉で白くなった景色が晴れて来ると、フォレシアは立ち上がった。

 山をも砕く、金色の光の爪。

 こんな力を扱えるのは、この世で勇者と呼ばれる者だけだ。

 そして、この強大な力は、脳裏にだけでなく、皮膚から骨の髄に渡るまで覚えていた。


「金色の勇者かッ!?」


 フォレシアが言うと、ミーニャ達も驚きと共にフォレシアと同じ表情になった。

 雪の粉が晴れ、山の頂に光る金の光が見えると、フォレシアの眼はその輪郭を捉えた。

 大人程はあるだろう巨大な戦斧に、腰にヒョウの皮を巻いた巨漢。その肩には最初に出会った時と同じように、生気のないような虚ろな表情を浮かべた少女を乗せている。


「フン、やはり来やがったか。エルフの勇者と紫電のチビ勇者。

 この門を封じるために色々とやってくれていたそうだが、そうはいかねェ。セアが来れなくなったとなっては、こっちとしても色々不都合だ。

 悪いが聖戦を先におっ(ぱじ)めさせてもらうぜ」


 レオーネが斧を地に突き刺し、高らかに手を天に上げると、フォレシアは眉を顰めた。

 レオーネの背後から、また1人、また1人と人影が増えて行くと、やがてミーニャ達の肉眼でも分かる程に、黒い点が山頂に広がった。

 賊軍。

 賊王と呼ばれた男の声に応え、世界中の賊たちが彼に手を貸すことなど考えるに容易いことだった。

 マーズ大砂漠の処刑場からの復活に、かつてレオーネの配下であった輩もすぐに招集に応えた。


「フォレシアさん……」


 ミーニャが指示を仰ぐように言うと、フォレシアは「ああ」と頷き、


「前方に敵軍! 奴らは私達で阻止しよう!」


 その声に威勢の良い返事が上がると、レオーネ達も、「行く手を遮る者は子どもたりとて地獄行だ! お前ら、続けェ!!」とレオーネの声に応え、一気に賊軍が山を駆け下り始めた。

 フォレシア達の軍も山の斜面を雪崩のように雄叫びのような声で駆け下り、その2つの軍がちょうど山と山の間で交わると、白い地面は血の地面へと化した。

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