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闇の苦杯3

 茫々と揺れる青白い炎が照らす螺旋階段。玉座の間から通じる、魔族の長のみが通ることを許される道は、まるで奈落に繋がっているかのように、凍てつく闇の中に伸びていた。

 階段が終わり、同じような景色の長い通路を歩いていくと、3重の魔法陣で封じられた巨大な扉が現われる。その扉を護るように立つ、巨大な戦斧を持った2体の鬼の像は、扉の前に立ったセアをギョロリと見下ろした。

 喩え、魔族の王を前にしても、決して屈せぬ2体の像は、まさにその部屋の守護者たるに相応しいものだった。

 セアは、白い掌を魔法陣にそっと添えるように付けると、静かに魔法文字(マジック・スペル)を詠唱した。

 詠唱に応えるように、魔法陣が1つ1つ解かれ、全てが開錠されると、「お通り下さい、我等が王よ」という像の言葉に迎えられ、セアはその部屋に足を踏み入れた。


 壁と天井のない、ひたすらに闇の続く円形の広間。

 その中央には、宙に浮かんでいるように伸びる階段が伸び、1つの玉座が広間に入って来た少女を見下ろしていた。

 少女はその階段を上がり、 上の城内にあったものよりも遥かに古く、少女の背丈どころか人間には合わぬ大きさで造られた、その玉座に深く一礼をすると、その座に腰を据え、そして、そっと瞼を閉じた。




――セアか。


 重みのある、畏れ多い声が広間に響くと、玉座に座った少女は、「はい」と返事を返した。

 

――セアよ。事の備えのほうはどうだ。滞りなく進んでおるか?


 同じ声が訊ねるように聞こえると、セアは落ち着いた声で再び返事をした。

 その声を聞くと、訊ね主の声はほくそ笑むように、


――万事万全に備え、抜かること無く、事を遂行せよ。


 すると、ボッ、ボッと音を立て、壁画のように広間に次々と青白い線で描かれた絵が浮かび上がる。

 セアは目をゆっくりと開けると、それを見渡した。

 ある絵は、人の様な者が光を放つ剣を掲げ、魔物たちが逃げていく姿を映し、またある絵は、複数の杖を持った人びとが、鎌を持った魔物を鎖の円の中に封じ込めている光景を映していた。


――もはや敗北は許されない。もし、光が世界を再び治めたとあらば、それはお主が再び闇と還る時。古の時代に我等が世界から我等を追放し、傲岸にその王の座につく愚なる神々の末裔を必ずや葬り去れ。我が力を継ぎしお主が望むこと、我もそれを望まん。


 その声が闇の中に消えて行くと、光の壁画も闇に溶けるように消えていく。

 セアは玉座から立ち上がると、赤い瞳を輝かせ、ゆっくりと階段を降り、その間を去って行った。


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