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三章「個人練習と個人的なこだわり」

3章です。

やっと野球小説っぽい感じになってきましたが……


ああ、言い忘れましたが宇宙世紀シリーズ以外ももちろん好きです。ターンエーとか。

「お疲れした!」

「したー!」

 初日の練習が終了した。マシンガンノックのあとも、横一列に並んだ三人が同時に投げてくる球を打つ練習とか、サイコロの出た数だけ進むベース間ダッシュとか、ちょいちょい奇妙な練習が混じっていたが、とりあえず研二は無事終了したことを神に感謝していた。

「じゃあ、コガケン。先に着替えちまえ」

 キャプテンの山田薫子が言う。

「いいんですか? お先で」

 研二が、一応遠慮して言うと、

「あー、うん。いいぞ、気にすんな」

「……なんか、歯切れがわるいですね 」

 研二が微妙な雰囲気を感じ取って言うと、

「当たり前ですわ!」

 小鳥が偉そうに言う。

「わたくしたちの着替えの後に、お前のような類人猿が入るなど、ゾッとしませんわ! このような下品なツラをして、お姉さまの残り香をかいだり、髪の毛の一本も落ちていないかと床を血眼で探したり……ああ! 考えただけで怖気が立つのですわ!」

 ……しねーっつーの、そんな事。

 疲れていて面倒だったので何も言わずに部室に入り、制服に着替えた。


 着替え終わった六人は揃って校門を出る。女子ばかりの集団に一人混じっている研二は、はたからはどう見えるのだろう。

 ハーレム?

 ……いやいや。多分使い走りか、せいぜい飼い犬的ポジションじゃないだろうか。

 心中複雑ではあったが、全員が野球好きなことに違いはなく、話題には事欠かない。

 ペナントレースにおける推しチームの現状からメジャーで活躍する日本人選手の話題、去年の夏の甲子園の印象に残った試合など、話しているうちに時間は過ぎ、やがて帰宅方向の都合で研二はひとりになった。

「おつかれさまです!」

「じゃーなコガケン。次は水曜だからな!」

 色々とめちゃくちゃだったけど、とにかく野球ができるのは嬉しい。それに、人数が少ないとはいえ、妙にすごい選手ばかりだ。春の一回戦負けが信じられないくらいに。

 試合だけのサポートメンバーが足を引っ張ったのか? それとも意外に本番に弱いとか?

 つらつらと考え事をしながらそぞろ歩く研二の後ろから、騒がしい足音が近づいてきた。

 振り返ると、セーラー服に大きなエナメルバッグをナナメがけにした少女が全速力で走ってくる。

 さっき別れたばかりのユーカ……、早乙女優華だ。

「な……なに、どげんした?」

 思わず身構える研二。とりあえずバットは持っていないようだが……。

「ねえ古賀!」

 しばらく息を乱していたユーカが顔をあげ、言った。

「あたしに、野球教えてよ!」


 ……疲れたな、昨日は。

 常南中学校一年A組の教室、翌日の昼休み。

「どうした、古賀くん。浮かない顔だね」

 クラスメイトの中村が話しかけてきた。

「別に」

 そう言えば、と中村は言う。

「君、ホントウに野球部に入ったんだって? いやあなかなか、肝が据わっているというか被虐趣味にあふれているというか……」

 ……おい。何かひどいこと言ってないか中村?

「俺は野球が真面目にできればそれでいいの。別に、部員が女子ばかりだって……」

 研二は、ひと晩考えた結論を口にする。

「そうかそうか。まあ、頑張れよ古賀くん」

 中村は研二の肩をたたいて去る。一緒に昼食を食べる気はないらしい。

 まあいい。あの部もそう居心地は悪くないし、同級生とも個人的な付き合いができそうだし……。


「あたしに、野球教えてよ!」

 ユーカは、まっすぐな目でそう言った。

「はあ? 何言ってんだよ。俺は同じ一年だし…… そういうのは上級生に頼めよ」

 とりあえず拒否する。だって人に教えられるほど上手くないし、俺。

「あたしさ、六年の時に転校してきたんだ常南に。つまり去年ね」

 研二の言葉を無視して、昔を振り返るように話し始めた。

「元々、野球は好きだったの。何度もプロ野球の試合は連れて行ってもらってたし、土日はいつも、お父さんとキャッチボールしてもらってた。でもさ……」

 悲しげな表情をつくって目をふせる。なんだ、シリアスシーンなのか?

「お父さん、脱サラしてコンビニのフランチャイズで独立したの。それで、本社が用意したアパートに引っ越して……」

 なるほど、それでここに来たって訳か。

「バカな上司に使われるのが嫌だ、ってコンビニ始めたけど、そしたらお母さんも一緒になって休みなく働いてさ。とにかく忙しいみたい。だってあたし、アパートで一人暮らし状態よ? 二人ともいつ帰ってきていつ出勤してるんだかよくわかんないし。とりあえず冷蔵庫にはいつもコンビニ弁当あるから、食事には困らないけど」

 研二には想像できない家庭環境であるらしい。

「話それたけど、とにかくね! あたしは野球上手くなりたいの。山田先輩みたいに」

 M市から引っ越してきたばかりのユーカは、自分が来年通う事になる中学の野球部の噂を聞いた。

 全国的にも珍しい、女子だけのチーム。人数が足りず半分が他の部からの応援なので、なかなか勝てないけど本当に良い選手が集まっているという。

 それまで野球は男のスポーツ、と思い込んでいた彼女は興味を持った。そして、常南中で行われた練習試合を観戦に行ったのだ。

「言っとくけど、その頃のあたしはもっと髪も長くて。いつもスカートの、女子力のカタマリみたいな可憐な美少女だったのよ?」

 ユーカは真面目な顔で言う。

 余計なことは言うまい、と研二は内心思い、それでと先を促す。

「その時の感動は忘れられないわ。相手は開明学園。野球推薦で遠くから入学する人もいる県内トップクラスの強豪校よ。その試合で、一年なのにクリーンナップに入ってた山田先輩はホームランを打ったの! それも、開明のエースから!

 そのピッチャー、小学校の時は硬式やってたのに中学でわざわざ、山田先輩と対決したいからって軟式に戻ったらしいの」

 へえ。そりゃあ……

「熱心なことで」

 研二の妙な相槌に、ユーカはそうなの、と真面目な顔で応える。

「なんか小学生時代にあったらしいんだけど、山田先輩をライバル視してるらしいわ。それでなんと、その選手はね」

 ……と、そのピッチャーのスゴさを力説する。いわく、小学生時代から日本代表のメンバーに誘われていた、プロ野球選手を数多く輩出してきた関西の強豪高校からスカウトマンが見に来た、社会人野球のトップクラスの企業が親に挨拶に来た、などなど。あくまで噂、らしいが。

 で、そのピッチャーにライバルと思われている山田先輩はスゴイ、という結論に至るわけだ。

「山田先輩もね、野球始めたのは小四からなんだよ? 家が柔道の道場やってるから、ずっと柔道少女だったんだって。それが四年生にして親の意向を振り切って野球の道へ……なんか、感動だよね?」

 ユーカはそう言って目を輝かせるが、まるでピンと来ない。

「だからさ! 野球教えてよ。古賀」

 急に、そのセリフに戻った。

「だから何で俺なんだよ? 先輩とかもっと上手い人に頼めばいいだろ」

 はあっ、とユーカは嘆息する。

「あんな、人種の違う人たちに教えてもらって上手くなれると思う?」

 ……なるほど。

 研二は、妙に納得した。確かに、自分は一般人だ。


 その翌日の火曜日、放課後に研二とユーカは近所の公園に集合した。二人ともジャージ上下にグローブとバット持参である。

 小さな公園には人の姿はない。

「じゃあ、どうしよう? 守備と打撃、どっちを強化したい?」

 研二は軟式球を片手でトスしながらながら言った。

「どっちも!」 

 ユーカは即答する。

「二兎を追うものは一兎も得ず、ってことわざ知らんと?」

「知らないわよ。何それ」

 研二は深くため息をつく。

「二刀流はごく限られた人にしかできん、ってこと」

 おお、なるほどとユーカは納得する。

「じゃあ、バッティングで! やっぱさあ、山田先輩みたいに豪快にホームラン打ちたいし!」

 脳天気に答える彼女に、研二はジト目で言う。

「……じゃあ、まずは下半身強化のために走り込みからやってもらうけど」

「ええー。他にないの? 何かこう、スイングの分析とかして画期的な器具を使ってさ、一日五分でメキメキ上達、みたいなの」

「あるかい! あったら自分でやっとるわ」

 研二の怒りも特に気にすることもなく、

「じゃあしょーがない。守備の方、いってみよっか」

  ……こいつ、本気で上手くなる気あるとやろか。

「じゃあ、まずはキャッチボールから」

 内心の怒りを押し殺した言葉に、

「ああ。アップね」

 と応えたユーカに、研二の目が光る。

「キャッチボールは、守備練習の基本やぞ? 全ての基本がそこに詰まっとると言うても過言じゃあ、なかぞ?」

「え。どうしたの古賀」

「そげんいい加減な気持ちでやっとるけん、ちーとも上手くならんのじゃなか? まずは自分に向かって飛んでくる球を、全部打球と思って処理することったい」

 それはつまり、どんな球でもきちんと捕球し、その後スムーズに送球できるようにする練習だ。

 ただ漫然と球を捕り、のんびりと投げ返すだけではただのウォーミングアップにしかならない。

 そうではないのだ。キャッチボールだけでなく全ての練習の意味を考え、何を意識してやるべきなのかと考えて行なった練習は、ただ言われたままにメニューをこなすのとは天と地ほどの違いがあるのだ。

「わかった、わかったから。自分から教えて、って言ったのにごめんね」

 しおらしくなった彼女に、研二はちょっと気恥ずかしくなってしまった。

「いや、俺もなんか、えらそうな事言って……」

「でも古賀ってさ」

「なに?」

「九州弁でしゃべると、ミョーにオッサンくさいよね」

 ……ほっとけ。



さてさて。この小説は夏の大会の第一試合がクライマックスとなる予定で、そこに向かってゆるーく書き進めております。

何かの間違いでここまで読んでしまった方が居ましたら、どうぞ

ゆるーい気持ちで、お待ちください。

気分転換として書いているので筆は遅いですが、ちゃんと完結まで書きますので。

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