二十一話
ダビスの町跡地
煤の匂いがするダビスの町、家は全て焼け落ちており人の気配は全くない。
「・・・」
神の血を引く愛理は仲間達より、余計に殺された人々の怨念を感じてしまう、清らかな愛理の血を求め目に見えない怨念達は愛理に迫り、愛理の体に震えが走る。
「愛理ちゃん?、大丈夫ですか?」
妖狐である蒼狐も、愛理ほどではないが通常の人より怨念を感じる為、浮かない顔をしているが、それでも愛理よりは顔色が良い、余裕のある蒼狐は愛理の心配をする。
「大丈夫だよ、来て、レオ」
愛理は心配してくれた蒼狐に笑い返すと、レオを召喚する、師である白花に教わった、怨念の浄化の術を使い、地上に縛り付けられている、哀れな魂を天に送るつもりなのだ。
「やる事は分かっている、力を貸そう」
召喚されたレオは愛理の肩に触れると彼の聖属性の魔力を愛理に送る。
「ありがとう、・・・、迷える魂達よ、天に還れ、怨念浄化!」
白花に教わった陰陽術、怨念浄化を愛理は使用する、カッ!と言う光と共に愛理の聖属性の魔力が解放され、町を覆って行く、そして愛理は感じる、地上に縛り付けられていた魂達が天に昇って行くのを。
「愛理、少し、感じます、縛り付けられていた魂達が天に昇って行くのを、ありがとう」
少しだが、天に昇って行く魂達を感じたラフォリアは、彼等を解放してくれた愛理に、この国のたった一人の生き残りとして、そして一国の姫として感謝した。
「うん」
聖属性の魔力を解放する愛理の頬には涙が流れていた、それを見たラフォリアはそっとその涙を拭き取った。
グリメィス王都
人々の魂を天に還した後、生気を感じないグリメィス平原の中心部を抜け、愛理達はグリメィス王都にやって来た、石造りの立派な城壁は焼け残っていたが、城門をくぐり城下町に入ると、建物は全て焼け落ちており、城壁と同じ石造りの城だけが残っていた。
ここにも沢山の怨念を感じた愛理は若干魔力を使いすぎているが、先程と同じく怨念浄化を行い、地上に縛り付けられた魂を天に送った。
「愛理、魔力を使いすぎているだろう?、これを飲んでおけ」
「ありがとう」
魔力を使いすぎな愛理を心配したレベンは愛理に魔力ポーションを渡す、正直意識が朦朧としていた愛理は、有り難く頂き魔力ポーションを飲む。
「苦い・・・」
ポーションとは苦い物だ、特に多くの魔力を含んでいる魔力ポーションは、ポーションの中で最大の苦さを誇る、愛理はウゲーと言った顔をしつつも全部飲んだ。
「俺、魔力ポーションって飲んだ事ないんだよな、どんな感じなんだよ?愛理」
魔法銃は威力の割に魔力消費量が少ないエコな武器だ、その為魔力量が少ない者でも手軽に使え人気である、そんな魔法銃を使うケーニは勿論魔力ポーションを使う必要がある状況になった事がないので、今しがた魔力ポーションを使った愛理に使った感じを聞いてみた。
「うーん?、なくなった魔力が、急に湧き出してくる感じ?」
愛理は魔力ポーションを飲んだ瞬間に感じた体の変化をケーニに話す。
「へー、なくなった魔力が湧いてくる感じか、おもしれぇな」
愛理の感想を聞き興味を惹かれたケーニはその感覚を感じてみたいと思い、今度魔力を消費したときにでも魔力ポーションを飲んでみようと思った。
「さて、王城に行きましょうか、何かあるとすればあそこですから」
この王都に唯一焼け残っている王城を寂しそうに見上げていたラフォリアは、仲間達に王都に向かおうと言った。
「うん、行こう」
魔力が回復した愛理はラフォリア残る言葉に頷くと、仲間達と共に王都に向かう。
王城
王城は焼け残ってはいるが、中は酷い物だった、中まで火に焼き尽くされたのだろう、どの階を見て回っても全部焼き落ちており焼け残りボロボロな机やタンスが辛うじて残っている程度だ。
「・・・」
王城を見て回りながらラフォリアがやって来てのは最上階の一階下にある、彼女の部屋だ、かつては存在した立派なベッドも、豪華なクローゼットも、母が作ってくれたぬいぐるみも焼け落ちてなくなっている。
「大丈夫か?、ラフォリア」
ラフォリアを心配したケーニが声をかける。
「はい、大丈夫です」
ラフォリアはケーニに笑い返す、しかしその笑顔は明らかに無理をしたものだと愛理達には分かった。
悲しそうな表情を浮かべるラフォリアは自分の部屋を出て、最上階に向かう、最上階には王座とラフォリアの父と母の部屋がある、ラフォリアは考えていた、何かがあるとすれば父と母の部屋だろうと。
ラフォリアを心配し、彼女の隣を歩き、彼女の腕に尻尾を触れさせる愛理と仲間達は最上階のラフォリアの父と母の部屋にやって来た、ドアは焼け落ちており、内部は本棚の本は全て燃え尽きており、ボロボロになっているが机が焼け残っていた。
焼け残った机を見たラフォリアは、机に近付き、引き出しを開けてみる、しかし机はなんとか焼け残っているだけで内部まで火が通っているようで、煤しか残っていなかった。
「ラフォリア、机の足元に何かがあるぞ」
ラフォリアが引き出しを開ける様子を見ていたレベンは、机の足元に取っ手があるのを見つけたので、ラフォリアに教える。
レベン残って声を聞き机の足元を見たラフォリアは取っ手を掴み引き上げてみる。
「これは・・・」
取っ手を開けて現れたスペースには防火魔法がかけられた一枚の手紙が入っていた、そしてその手紙にはこう書いてある。
『ラフォリア、生き残ったお前が、この国に戻り、この手紙を見付けてくれるか分からぬが、これを記す、地下の宝物庫の奥の我が国の紋章が記された壁にお前が手を触れよ、扉が開く、その先にある物をお前に託す』
と、どうやらラフォリアの父は生き残ったラフォリアが、もう一度ラフォリアがこの国に戻ると信じてこの手紙と、何かを残したようだ。
「地下に行ってみましょう!、愛理!」
「うん!」
手紙の内容を見た愛理達は、ラフォリアの父が残した物を確認する為に、地下に向かう。




