十九話
クーラの町
愛理とレベンは町を歩いていた。
「それにしてもケーニはなんでついてこなかったんだろね?町回るのって楽しいのに」
「そうだな、分からん」
宿から出る前に愛理は宿の中に居たケーニを誘ったのだが断られた、二人は何故彼が断ったのか理解してないが、ケーニ的には愛理に気を使ったのだ。
「まーよく分からないけど、ほらここが噴水広場、綺麗でしょ?」
ケーニの気遣いに全く気が付いていない愛理は、レベンと共に噴水広場にやって来た、円形の広場には沢山の冒険者達が集まっており、情報交換をしているようだ。
「確かに綺麗だ」
愛理に噴水広場を紹介してもらったレベンは、綺麗に掃除された噴水を見る。
噴水広場には出店が出ており美味しそうな匂いが漂っている、それを見た愛理はレベンの腕をツンツンと突き、レベンが愛理を見てからそれらを指差す。
「何か食べる?」
「ふむ、見て回ってみようか」
「うん」
愛理とレベンは出店に近付くと出ている店を見て回る、串焼き屋や、ソフトクリーム屋、クレープ屋があるようだ。
「クレープが美味しそうだな」
三軒ある店の中からレベンはクレープ屋に注目した、愛理が店を覗いてみるとかなり沢山のメニューがあり、どれも美味しそうだ、お店のオススメはバナナチョコクレープらしい。
「確かに、おじさん!バナナチョコクレープ、二つちょうだい」
「はいよ」
愛理はバナナチョコクレープを二つ頼む、するとおじさんがすぐ作り始めてくれて、二分後には完成した、料金は二人で払う。
「はい、レベンさん」
「うむ」
愛理は完成したクレープを受け取りレベンに渡した、そして二人はクレープを食べ始める。
「おいしー!」
「うむ、チョコとクリームのバランスが絶妙だ」
「だよねー」
レベンと美味しいねーと言い合いつつ、愛理はパクパクと一気にクレープを食べて行く。
「食べ終わったら、店を見て回ろうよ、色々あるんだよ?」
「良いぞ」
愛理はレベンに店を見て回ろうと誘う、レベンはその誘いを受け入れ、二人はクレープを食べ終わった後、店を見て回りに向かった。
道具屋
二人が最初に入った店は道具屋、様々なポーションや、便利な魔道具が売られているようだ。
「そう言えば、魔力ポーションを切らしていた、買わないとな」
レベンのような魔法使いには魔力が回復出来る魔力ポーションは必需品である、出来れば魔力が切れないうちに敵に勝利するべきだが、備えがあるに越した事はない。
「私は、うーん、三つくらいでいいかな」
精霊魔導士であり剣士でもある愛理は、魔力が切れたとしても、精霊は召喚出来なくなるが、剣である程度は戦える為、魔力ポーションはあまり必要としない、そして愛理にはセラピーかいるので、怪我の治療が出来る通常のポーションはいらないのだ、それでも一応魔力ポーションを三つ買っておく、備えはあった方が良いからだ。
「って、レベンさん、そんなに買うの!?」
魔力ポーションを三つ手に持った愛理がレベンの方を向き会計を済ませようと言おうとした所、彼が籠の中に大量に入れている魔力ポーションを見て愛理は驚く、ザッと見て彼は五十個ほどの魔力ポーションを籠の中に入れていたのだ。
「備えは大切だぞ?、愛理」
「う、うん、私ももうちょっと買おうかな?」
大量にポーションを買い込む彼に影響され、愛理はもう二、三個魔力ポーションを取りに向かおうとするが、レベンが引き止める。
「これだけあるのだ、もしもの時は私の物を使えば良い、この数はその可能性も踏まえた数だ」
「そっか、みんなの為にありがとう、レベンさん」
レベンが大量に買おうとしている魔力ポーションはどうやら、仲間が使うかもしれない数を含んだ数だったようだ、愛理はそんな彼の気遣いをとても嬉しく思う。
「それでは会計を済ませよう」
「はーい」
愛理とレベンは魔力ポーションの会計を済ませ、次の店に向かう。
次の店に使う道中
店と店の間の通りで、愛理はある事に気付いていた。
(あれ?これデートなんじゃ?)
愛理が気付いた事それは、今の状況がデートなのでは?と言う事だ。
(デートだ、これ)
そして愛理はレベンと二人っきりであるこの状況がデートであると確信する、男性と女性が一緒に町を回るこの状況、それをデートと言わずなんと言う。
(な、なんか急に恥ずかしくなってきた!)
今の状況が急に恥ずかしくなった愛理は、顔を真っ赤にし尻尾をバタバタ振る、そしてレベンの顔を見てみるが、普段と変わらない、どうやら彼は純粋に愛理と町を見て回っているだけらしい。
「どうした?顔が赤いぞ?」
愛理の様子に気付いたレベンは顔を真っ赤にして自分を見て来る愛理にどうしたのか?と聞く。
「な、なんでもないよ!」
「そうか?」
「そうなの!」
「う、うむ」
レベンは愛理がなんでもないと言うのなら、そうなのだろうと思う事にする。
一方の愛理は深呼吸して気分を落ち着かせる、この若干興奮した状態では、勢いで告白まで行ってしまいそうなのだ、勢いでの告白、それは愛理の望む物ではない、ちゃんと心が決まった時に好きだと伝えたいのだ。
「次はここに入ろう」
「服屋、・・・」
レベンが次に入ろうと行った店それは服屋だった、服屋を見た愛理はとある町でのレベンの面白い服のセンスの事を思い出した。
(うん、私が選ぼう!)
どうせなら好きな彼にカッコいい格好をして欲しい愛理は、彼が変な服を選ぶ前に、自分が彼に似合う服を選んであげようと思い、やる気を出す。
「それじゃ入ろっか!」
「う、うむ」
やる気満々になった愛理は意気揚々と店に入って行く、レベンは急にやる気満々となった愛理を不思議に思いつつ、一緒に店に入る。
服屋
愛理は取り敢えずは自分が服を選ぶ前に彼が自分で選ぶ服を見てみる事にした、すると・・・。
「どうだ?」
自信満々で、彼はジャージのような服を選んで来た、値札に付いている商品名を愛理がコソッと読んでみると、どうやら彼が選んだ服はこの世界で流行りの運動用の服らしい。
(だめだこりゃ)
愛理は彼の服のセンスにだめだこりゃと、思いつつ、店を見て回り選んだ服を彼に渡す。
「レベンさんには、これが似合うと思うの、ちょっと着てみて?」
「うむ?、分かった」
愛理から服を受け取ったレベンは試着室に戻る、愛理もその間に自分の為に選んだ服を着る為に試着室に入った。
「どうだ?」
服を着替えた愛理が外で待っていると、レベンが試着室から出て着た、今の彼は上は薄手の青いチェックのシャツ、下は肌色のズボンだ。
「うん!、似合ってる!、私はどうかな?」
愛理が今着ているのは、上は白色のフリルの付いたブラウス、下は赤いチェックのスカートで、それにタイツとブーツを合わせている。
「か、可愛らしいと思う」
女性を褒めた事が余りないレベンは頬を掻きつつ、着替えた愛理を褒めた。
「えへへ、ありがと」
彼に褒めてもらった愛理は満面の笑顔を見せる、愛理の笑顔を見たレベンは、少しドキッとする、今の愛理の笑顔は本当に可愛らしい物だったのだ。
「この服、買ってしまおうか」
「うん」
折角愛理に選んで貰ったのだ、レベンは服を買う事にした、愛理も今着ている服が気に入ったので、二人は共に新しい服を買った。
マナマナ荘
町の観光を終えた二人はマナマナ荘に戻って来た、二人は二階に上がり、それぞれが泊まる部屋の前で分かれる。
「レベンさん、今日は楽しかった、ありがと」
「私も、楽しかった、たまにはこうして町を見て回るのも良いものだな」
「だね、また一緒に、今度は別の町を見て回ろうよ」
愛理のこの提案、それは次のデートのお誘い。
「あぁ、また見て回ろう」
愛理の誘いが次のデートのお誘いだと気付かないレベンは、頷き誘いを受けた。
「約束だよ?」
「うむ」
「えへへ、やった」
彼が誘いを受けてくれた、愛理はその事を嬉しく思いつつ、少し頬を赤らめ、レベンに向けて笑顔を見せると部屋に入って行く、その笑顔を見て、またドキリと心臓が高鳴るのを感じたレベンは、愛理達女性陣が泊まる部屋のドアを暫く見つめていた。




