十八話
マナマナ荘
愛理達は愛理とラフォリアが以前泊まった事がある宿屋、マナマナ荘に泊まっていた。
「むー」
女性陣が泊まる部屋の中、愛理はうつ伏せになり、むーと唸っている。
「あの?愛理?どうしたのですか?」
愛理の様子を見て心配になったラフォリアはどうしたのか聞く。
「むー」
しかし愛理はむーと言うだけで質問に答えない。
「まっ、妖狐じゃないラフォリアには分からない事ですよ、健康面では問題はない事なので、放っておいてあげて下さい」
「・・・分かりました」
蒼狐の言葉を聞いたラフォリアは愛理の様子をチラチラと見つつ部屋から出て行く。
「まぁ、アレ、ですよね?、愛理ちゃん、実は風邪とかじゃないですよね?」
「うん、アレだよー、体は全然元気だから心配ないよー」
「なら、安心です、私も外に出て来ますね?」
「うんー」
愛理との会話を終えた蒼狐も、部屋から出て行った。
クーラの町
翌日、愛理はラフォリアと共に久し振りにやって来たクーラの町を歩いていた、町は相変わらず初心者冒険者達が集まっており賑やかだ。
「シリカちゃんに会うの楽しみだなぁ、色々な冒険の話し、聞かせてあげよっと」
(良かった、本当に風邪とかじゃないみたいです)
「ふふふ、そうですね」
ラフォリアは元気良さ気な愛理の様子を見て安心しつつ、彼女も久し振りにシリカに会うのを楽しみにする。
町をスタスタと歩いていると人集りが見えた、気になった愛理とラフォリアがなぜ人集りが出来ているのか見てみると・・・。
「はいはい!、今度はこの、乳無し人形が消えちゃいますよぉ!」
蒼狐が芸を披露していた、何処から調達したのか、そこそこ大きな木の看板には観覧無料と書いてある、どうやらタダで町の住民に芸を見せて楽しませているらしい。
「あのー、そのー、あの乳無し人形って物が気になるのですがー」
蒼狐が今まさに消そうとしている、明らかにラフォリアの姿を模った乳無し人形を見たラフォリアが怒り、蒼狐の元に向かおうとする、すると背後から、ツンツンとされたので振り返ると・・・?。
「・・・、わ、分かってますよ!喧嘩なんてしませんよ!」
愛理がニコニコとしつつカメラのフィルムを持っていた、それを見たラフォリアは慌てて取り繕う。
「ダヨネーケンカナンテシナイヨネー」
「だからなんでカタゴトなんですか、怖いですよ!?、さっシリカちゃんの所に遊びに行きましょう!」
近くには丁度写真屋もある、尚の事焦ったラフォリアはシリカの元に向かおうと、愛理に行った。
「ふふっ、うん」
「うー」
慌てるラフォリアの様子をみてクスクスと笑う愛理と、愛理に揶揄われたのだと理解し顔を真っ赤にしているラフォリアは、シリカの家に向かう。
「わー!おねーちゃんだ!」
愛理とラフォリアはシリカの家にやって来た、親に頼まれたのだろう、庭先で掃除をしていたシリカは二人の姿を見るとまずは、愛理に抱き着き次にラフォリアに抱き着く。
「・・・おねーちゃん達、なんで犬や猫の匂いするの?」
「な、なんでもないよ」
「そ、そうですよ?なんでもないです」
シリカの何故犬や猫の匂いがするのかと言う質問に二人はなんでもないと答えるが、実は愛理にやたらと懐いてくる犬や猫の集団に絡まれ、愛理が犬や猫に顔を舐められまくり、ラフォリアがある意味襲われている愛理を、なんとか助けた後ここにやって来た、その為二人は若干犬猫臭い。
「?、ねっ!おねーちゃん達!いっぱい冒険のお話聞かせてよ!」
目を逸らす二人を見てシリカは首を傾げつつ、二人に冒険の話を聞かせて欲しいと言う。
「良いよぉ?まずはねぇ、おねーちゃんは騎空団の団長になったのです!」
「本当!?なら騎空団カードもってるの?見せて!」
「いいよ?ほら」
愛理は騎空団カードを見せて欲しいと言うシリカに、鞄から取り出した騎空団カードを見せる、カードを見たシリカはパアッと目を輝かせる。
「すごーい!おねーちゃん!本当に団長さんなんだ!」
「ふふん、そうだよ?私は団長なの」
凄いとはしゃぐシリカを見て愛理は誇らしげに尻尾を立てて、ドヤ顔をする。
「ねっ?おねーちゃん、私がもう少し大きくなったら、おねーちゃんの団に私を入れてくれる?」
「良いよぉ?、入れてあげる」
「ふふふ、楽しみですね」
「やった!、それじゃ私、もっと頑張るね?今、冒険者になる為に戦い方を軍の人や、冒険者の人に教えてもらってるの」
シリカはそう言うと、木刀を家の中から持って来て素振りをする、愛理はその姿を見て幼い頃の自分を思い出した、明日奈に早く認めて貰いたくて必死に努力した幼き頃の日々を。
「ふふふ、シリカちゃん、ちょっと木刀を貸してくれる?」
「うん?、良いよ」
愛理に木刀を貸して欲しいと言われたシリカは、何故愛理が木刀を貸して欲しいのかと言ったのか疑問に思いつつ、愛理に木刀を渡す。
「私もまだまだだけど、参考になると思う、行くよ!」
愛理は冒険者を目指す少女に自身の幼い頃から今まで続けて来た素振りを見せる、スッと無駄な動きのない研ぎ澄まされた素振りを、シリカは食い入るように見つめる。
「まだまだ、じゃないよ、おねーちゃん、凄い・・・」
「ありがと、でももっと凄い人はもっと凄いんだよ?」
愛理が思い浮かべる、凄い人、それはその背中はまだまだ遥か遠くにいる、明日奈の事である。
「だけどね?、私はその凄い人を越えるつもりなの、そして越えた後も追い越されないように努力する、シリカちゃんも努力する事を忘れないでね?」
「忘れない、私いっぱいいっぱい努力する!」
「うん!一緒にはいられないけど、互いに頑張ろう!」
努力をし続けると、決めあった愛理とシリカはハイタッチをする。
(私も、愛理と一緒にいたい、だからもっと努力しなくてはいけませんね、どんどんと先に進んで行く愛理に置いて行かれないように・・・)




