十七話
船着場
レベンの家を後にした愛理達はラフォリアの故郷、今は無きグリメィス王国跡地に向かう為にメサイヤに乗り込む。
「それじゃ飛ぶよー」
「はーい」
愛理は仲間に声をかけてからメサイヤを後進させ、機体を反転させる、そしてフットペダルを踏み込んだ。
「相変わらずの、全開っぷりですね・・・」
「だな」
急加速した為、猛烈な速さで変わっていく窓からの景色を見たラフォリアとケーニはその全力加速っぷりに呆れる。
「さぁ行くよ!ググリメィス王国!」
船着場の塔の上で明日奈は離れて行くメサイヤを見守っていた。
「元気でね、愛理」
腰に母から貰った刀を装備した明日奈は愛理の旅の無事を祈りつつ、飛空船に乗り込んだ。
エルフィン王国〜ベレー島
グリメィス王国跡地は愛理がこの世界で初めて訪れた町、ベレー島の先の空域に存在する、その為、無人島に何度か立ち寄り愛理の魔力を回復させつつ、色々な物の補給も兼ねてベレー島に立ち寄り、それからグリメィス王国に向かう予定だ。
「楽しみだなー、シリカちゃんに会うの」
愛理は楽しみにしていた、以前必ず会いに行くと約束した少女シリカと会うのを、クーラの町に向かい、シリカにこれまで経験した沢山の冒険の話を聞かせてあげるつもりである。
「私はあの町にはお世話になった人が沢山いるので、会って回るのが楽しみです」
ラフォリアはクーラの町に愛理よりも長く滞在していた為、島には沢山の知り合いがいる、ラフォリアが島から離れ姿が見え見えなくなった事で心配をかけている筈なので、姿を見せて安心させるつもりだ。
「ベレー島か、何回かグラブさんと船着場には行った事があるな、蒼狐とレベンさんは行ったことあるのか?」
「私はありませんね、故郷の島から出たのもこの前が初めてですし」
「私もないな」
三人の話によると、ケーニはクラブと何度か、蒼狐とレベンは島に訪れた事がないらしい。
「そっか、なら私とラフォリアで町を案内してあげるね」
「うむ、楽しそうだ、頼む」
「うん!」
愛理はクーラの町の事を良く知らない三人の案内を楽しみにしつつ、メサイヤを走らせる。
ソウフーの森
「あーもう!この森!やっぱり私に恨みでもあるんじゃないですか!?」
三日後、ベレー島に辿り着いた愛理達は早速島に乗り込み、クーラの町に向かっていた、その途中のソウフーの森で、ラフォリアが再び激しい風の餌食になっている、具体的にはパンツ全開である。
「ないと思うよ」
ソウフーの森の事を覚えており、あらかじめズボンを履いておいた愛理は、そもそも森に意識はない筈?なので、冷静に彼女の言葉を否定する。
「なんて情けない姿なんですか!パンツ全開って・・・、笑えますよ!」
蒼狐はスカートが捲り上がり、パンツ全開となっているラフォリアを笑う。
「・・・」
それに怒ったラフォリアは、蒼狐の後ろにスッと忍び寄ると、彼女のズボンをズリ下ろした。
「ツー!?!?」
異性がいるのにズポンをズリ下ろされ、男二人は慌てて目をそらしたが、パンツを二人に見られてしまったと考える蒼狐は顔を真っ赤にし、ラフォリアを睨む。
「ふっはっは!私を笑うからそうなるのです!」
ラフォリアは睨んでる来る蒼狐をドヤ顔で煽る、しかしスカートが風で捲り上がっており、パンツ全開なので、何か情けない。
「こ、こんの!こうなったらそのパンツ、ズリ下ろしてやります!」
「こっちだって!」
そしてラフォリアと蒼狐はパンツズリ下ろし合戦を始めた、互いに互いパンツ全開の戦いである。
「俺達としては見てられないんだが・・・」
「うむ・・・」
二人の男にとって、ラフォリアと蒼狐の戦いは見てられない戦いである、女性がパンツを大胆に晒しながら戦っているのだ、男としてはどうしてもパンツに目が言ってしまう、しかし二人の女性は仲間なので堂々とその黄色と青のパンツを見る気には慣れない。
「もう堂々と見ちゃっても良いと思うよ」
鞄からカメラを取り出していた愛理は、もう堂々と見てしまえと二人に言う。
「いやいや、駄目だろ」
「うむ、駄目だ」
「意気地なし」
あくまでパンツを見ないつもりらしい二人の男に意気地なしと伝えると、愛理はわざとシャッターを炊きつつ写真を撮り始める、シャッターの光を見たラフォリアと蒼狐は、驚いた様子で愛理を見る。
「あ、愛理!?何を撮ってるんですか!?」
「そして撮った写真をどうするつもりですか!?」
「リビングにでも貼ろっかなぁって」
慌てた様子の二人の質問に愛理はニコニコ笑いながら、写真を撮った目的を話す。
「なっ!?やめて下さい!」
「やーだよー」
愛理の言葉を聞いたラフォリアは愛理に駆け寄りカメラを奪い取ろうとするが愛理はヒラリと躱し、またパシャリ、スカートが捲り上がりパンツ全開のラフォリアがまた記録された。
「くっ!」
蒼狐はどこからともなく取り出したマジックハンドでカメラを奪い取ろうとするが、マジックハンドが迫る間にもパシャリパシャリと愛理は蒼狐のパンツを撮り続け、限界まで迫ったマジックハンドを躱し、蒼狐から距離取る。
「ひでぇ」
「鬼だな」
鬼モードな愛理の行動にケーニとレベンは引きつつも、そっぽを向き、三人の追いかけっこが終わるのを待った。
クーラの町
あの後結局、カメラにフィルムは入っていない(光っていたのはシャッターではなくそれっぽく操作した発光魔法、シャッター音はホワイトローズがそれっぽい音声を出していた)と二人に教えた愛理は、次やったら今度は二人からパンツを奪い取って町を走り回ってやる、と警告した。
それを聞いた二人はシュンと反省し、暫く、は喧嘩しませんと愛理に伝えた、愛理は暫くの部分が気になったが、また喧嘩するようなら本当にパンツ持って走り回ってやろうと思いつつ、今回は、許した。
「はぁ、愛理は意外と鬼ですから安心出来ません」
「ですよね、本当にフィルムは入っていないのでしょうか?」
表面上は仲良くしつつ、実はこっそり互いの腹を抓り合っている二人は前を歩く愛理に本当に、フィルムは入っていないのか聞く。
「入ってないよ、ほら」
愛理はカメラを取り出し、フィルムが入る部分を開けて二人に見せる、確かにフィルムは入っていないようだ。
「そうですか、なら安心です」
「愛理ちゃんもそこまで、鬼じゃ・・・」
「あっ」
カメラの中にフィルムが入っていない事を確認した二人はホッと安心仕掛けたが、愛理がポロリとフィルムを落としたのを見て、慌てる。
「あ、あの?それは何も記録されてないフィルムですよね?」
「あ、愛理ちゃん?、う、嘘ついてませんよね?」
「ダイジョウブダヨ、トッテナイヨ」
「何でカタゴトなんですか!?本当は撮ってるんじゃないですか!?」
「サー、ドウダロ」
ラフォリアの質問をはぐらかす愛理、何か嫌な予感を感じたラフォリアと蒼狐は愛理からフィルムを奪い取ろうとするが、またヒラリヒラリと逃げられ続けたので結局は諦めた。




