十六話
愛理とラフォリアの部屋
「どうしたのです?愛理、そんなにお尻を気にして?」
明日奈と別れた次の日の朝、愛理がお尻を気にしているのを見たラフォリアはどうしたのか聞く。
「なんかムズムズするの」
「へっ?」
「尻尾の付け根辺りが」
「へ、へぇ」
ラフォリアは愛理が言っている意味が理解出来てないが、愛理は大体は自分の身になにが起きてるのか理解している、恐らく四本目の尻尾が生えて来ようとしているのだ。
「まっ、そのうち分かるから待っててよ、驚かせてあげる」
「ふふふ、是非驚かせて貰います」
食堂
愛理とラフォリアどこのホワイトローズは食堂にやって来て朝食を食べていた、他の仲間は居ない、まだ起きて来ていないのだろう。
「・・・、愛理?少し良いですか?」
朝食を食べ終わり満腹満腹と満足気にしているホワイトローズを愛理が微笑まし気に見守っていると、ラフォリアが話しかけて来た。
「ん?どったの?」
「あのですね・・・、その・・・滅びた私の国の話を覚えていますか?」
「うん、覚えてるよ」
ラフォリアの国と聞いた愛理はとある船着場の騎空団ギルドで開かれた宴会の後に聞いた、ラフォリアの故郷の国の話を思い出す。
「行ってみたいのです、滅びた日から一度も踏み入れる事のなかった私の国に」
「良いよ、行こう」
愛理も気になっていた、ラフォリアの国がどんな国なのか、彼女が行ってみたいと言うのなら、見に行く良い機会だ。
「ありがとう・・・、ここからでは少し時間がかかるので、食料の調達に行って来ますね?」
「うん」
愛理の行こうと言う言葉を聞いたラフォリアは、儚げに笑うと、食料の調達をする為に部屋を出て行った。
夜
ラフォリアが食料の調達に向かった後、起きて来た仲間達に愛理はラフォリアの故郷に向かうと伝えた、すると愛理達がこの家から離れると聞いたレベンの両親がパーティを開いてくれた、そのパーティを楽しんだ愛理は、現在、ホワイトローズと一緒に窓辺に座り月を見ていた、すると麗蘭から貰った札に魔力を感じる。
「おっ?呼び出しかな?」
札を取り出し、触れてみると見た事もない、月に照らされた町の様子が見えて来る、浮かんで来た町の様子を強くイメージすると麗蘭は元に向かえる筈である。
「イメージ完了!行ってみますか!」
「Yes」
見た事もない町を強くイメージし終えた愛理はホワイトローズ頭の上に乗せてから転移する、愛理が消えた後、ラフォリアが部屋に入って来る。
「あれ?居ませんね?、トイレでしょうか?」
風呂上がりなラフォリアは部屋の中に愛理が居ない事に首を傾げながら、少し残念そうな顔をする、今日は一緒のベッドで眠るつもりだったのだ。
エルッスの町
ここはエルッスの町、エルフィン王国有数の貴族が治める町で、エルフィン王都と同じく、美しい町だ。
「・・・、来たのは良いけど、麗ちゃん、何処?」
エルッスの町にやって来た愛理はキョロキョロと周囲を見渡す、しかしその姿は見えない。
「大まかに言うと屋根の上を走って、愛理の後ろを常に取って居ますね」
麗蘭の居場所をサーチしたホワイトローズは、愛理に麗蘭が屋根の上を走り、愛理の後ろを常に取っていると教える。
「わっ!」
「ひゃ!?」
ホワイトローズの言葉を聞いた愛理は振り返ろうとするが、その前に屋根の上から愛理の真後ろに降り立った麗蘭に真後ろから声を出され、少し情けない声を出してしまった。
「もう〜、驚かさないでよぉ、麗ちゃん」
「だって愛ちゃん、隙だらけなんだもーん」
「うー」
麗蘭に揶揄われた愛理はプクーと頬を膨らませる、すると麗蘭に頬を指先で押され頬の膨らみはプシューとなくなった。
「さて、お遊びはここら辺にして、早速、やる事をやりましょっか」
「うん、でも何するの?」
「それは行ってからのお楽しみよー」
愛理の質問をはぐらかす麗蘭は何処かに向けて歩き出す、愛理は何処に行くのだろう?と不思議に思いつつ、麗蘭について行く。
貴族の屋敷、庭
「ねぇ、麗ちゃん」
「んー?」
「今の私達ってさ、どう考えてもさ」
「うん」
「泥棒だと思うんだけど・・・」
愛理は現在、大きな書庫がありそうな貴族の屋敷の庭の茂みの中に居た、そして麗蘭に今の自分達の行動は泥棒ではないか?と質問する。
「違うわよ?、私達は探し物をしているの、それに私達がこの家から取るのは闇の者の書、それ以外は何も取らない、だから泥棒ではないわ」
「じゃあなんで、私達は覆面マスクで顔を隠してるのかな?」
現在愛理は麗蘭からどう見ても地球産で、付ける前は日本語の値札まで付いていた、黒い覆面マスクを付けている、これで自分達の顔はバレずに済むとは言え、どう見ても不審者である。
「ほら、今って夜でしょ?黒い覆面マスクを付けてると、目立たなくなるのよ」
「それって目立ったらヤバイって事だよね?」
「アーアー、キコエナイ」
愛理の追求に答えるのが面倒くさくなったらしい麗蘭は、アーアー言ってはぐらかす、愛理はそんな彼女をジト目で見るが無視させるのでもう何も言わない。
「よし、見張りがいなくなった、行くわよ、愛ちゃん」
「はいはい」
愛理と話すのと同時に見張りの様子を見ていたらしい麗蘭は、見張りがいなくなると身を低くしつつ動き出す、愛理も仕方なしに彼女と同じように身を低くして動き始める。
茂みから離れた二人は前方に見えていた窓に近付く、麗蘭が見張りをしてとジェスチャーで伝えて来たので、愛理は周囲の警戒をし、麗蘭がその間に窓の鍵を解錠スキルで開ける。
「開いたわ、入るわよ」
窓を開けた麗蘭は手慣れた様子で屋敷の中に侵入する、愛理はその様子を見て、今までも同じ事してたなコレ、と思いつつ後に続く。
屋敷内部
愛理と麗蘭は物音を立てないように静かに動く、その様子はやはりどう見ても泥棒である。
「ホワイトローズ?書庫って何処?」
「この廊下の一番奥ですね」
「りょーかい」
闇雲に探しても時間がかかるだけだと判断した愛理はホワイトローズに書庫の場所を聞く、すると先にこの屋敷をサーチをしていたホワイトローズが、一番奥だと教えてくれた。
「一番奥だって」
「便利ね、その子・・・」
麗蘭はホワイトローズの便利さに感心する、ホワイトローズの便利さに慣れたものである愛理は、耳をピクピクと動かして周囲の音に耳を澄ませながら、廊下を進む。
「あっヤバっ、誰か来る」
音で何者かが来ると捉えた愛理、麗蘭はこっちも便利だなと思いつつ、愛理と一緒に近くの部屋に入る。
「廊下、異常なし」
部屋の外から男の声が聞こえて来る。
「ねぇ麗ちゃん、外の人、この部屋の中に入って来るんじゃない?」
「多分ね、隠れておかないと・・・」
愛理と麗蘭は外の警備員が部屋の中に入って来る前に隠れる場所を見つける為部屋をキョロキョロと見渡す、するとベッドの下に入れそうだったので、そこに入る。
「客室、異常なし」
二人がベッドの下に入った後、すぐに警備員が入って来た、そして部屋に誰もいないのを確認すると出て行く。
「はぁー、ドキドキしたね」
「そうね、暫くここに隠れておきましょうか」
「うん」
警備員はまだ近くに居るはず、愛理と麗蘭は彼をやり過ごす為に、暫くの間、ベッドの下に隠れる。
書庫
警備員の気配が完全になくなった後、愛理と麗蘭は書庫に入った、そして本棚を見て回ってみるが、闇の者の書はなかった。
「ハズレかぁ・・・」
「そうね・・・」
この家の書庫に闇の者がいなかった事に二人はガックリと肩を落とす、そして無い物は仕方がないと書庫を後にし部屋を出ようとしたが、机の上に手帳を見つけたので、気になった愛理は手に取ってみる。
「なんだろこれ、・・・っ!」
「どうしたの?、・・・」
手帳を内容を読んだ愛理は顔をしかめる、愛理の様子を見た麗蘭も横から内容を覗き内容を見ると難しい顔をする、二人がこのような反応をする、この手帳の内容、それは主に女性の奴隷に関しての物だった。
記された内容によると、この国の女性のエルフを捕らえ他の国に売り出しているようだ、ご丁寧にこの家の物らしき、判子まで押してある。
「私、許せないな、こう言うの」
「私もよ」
「突き出しちゃう?」
「うん、でも警察とかそんな場所じゃない、もっと大きな所に持って行ってやろうよ」
「良いわね、何処に持って行くの?」
「後のお楽しみ」
少し悪い顔をする愛理は鞄に手帳をしまうと、麗蘭と共に屋敷を出て転移した。
王室
愛理が転移して来た場所、それは何度か見ている為すぐにイメージ出来た、エルフィン王都の王室である、愛理が貴族を突き出す相手、それはこの国の王様である。
「突き出す相手は王様か・・・、確かに絶好の相手ね」
「でしょ?私もそう思ったんだ」
今している行為も立派過ぎる犯罪なのだが、もう気にしない愛理は、王の机の上に、目立つようにVサインをした狐のマークを描いた紙を貼った手帳を置く。
「朝が楽しみだね」
「ええ」
良い事をしたつもりの、この日数件の犯罪を犯した二人は、転移して部屋を後にする。
翌朝、王は手帳を見つけ中身を読んだ、そして中に書かれている内容と、判子を見て驚愕し、すぐに貴族を呼び出し、事情聴取をする、動かぬ手帳と言う証拠を突き出された貴族は素直に自分の罪を自白し、逮捕された。




