二話
トバッハ自警団、取り調べ室
ここは以前もブラックウルフェンの者を取り調べたトバッハ自警団の取り調べ室、エルフの国、エルフィン王国に向かう前に捕らえたブラックウルフェンの幹部二人から情報を得ようと明日奈が二人の幹部の尋問をする。
愛理はこう言う経験も必要だと明日奈に言われ、部屋の隅で祖母の尋問の様子を見守る。
「さて、先に警告しておくわ、あなた達が素直に私の質問に答えない場合、私はあなた達二人を容赦無く殺す、覚えておいて」
まず明日奈が行ったのは部屋の空気の支配だ、本気の殺気を滲ませつつ放った明日奈の言葉は、男二人に強烈な重圧となった、愛理は普段明日奈が自分に絶対に向ける事のない祖母の殺気を感じ身が竦む。
「それでは質問を開始するわ、まずはあなた達の本部はどこ?」
ブラックウルフェンの本部の所在地、これは愛理達にとって絶対に押さえておきたい事の一つだ。
「今はどこにあるのか分からない、我々の本部は光学迷彩を備え、そして島ごと移動し常に場所を変えている、本部の場所は一ヶ月に一回、その所在地が幹部である俺達に伝えられるが、今はどこにあるのか本当に分からない」
島ごと本部が移動していると聞いた明日奈は厄介だと思った、しかも光学迷彩だ、ワールドセイバーの協力を得ても簡単に見つからないだろう。
「・・・次、何故あなた達は町を襲い始めたの?」
「闇の者の復活の為だ、彼は人々の恐怖や怒りの感情を吸うごとに復活の時が近付いて行く、俺達はその恐怖や怒りの感情を闇の者に吸わせる為に町を襲い始めた」
話を聞いて明日奈は納得する、悪魔や悪霊にとって人の悪感情は極上のご馳走だ、本の中に眠る闇の者も同じ事なのだろう。
「反吐が出るわ、次、あなた達、あの本の追い方を知っているの?」
あの本を追う方法、これも知っておかなければならない方法である。
「知らない、我々もあの本を手当たり次第に探しているが中々見つからないんだ」
「そう・・・」
ブラックウルフェンも本の追い方を知らないと聞き明日奈はそれもそうかと思う、あの本は定期的に転移をし移動している、そんな本を追う方法を確立するのは至難の技だろう。
「ありがとう、私から聞く事はもう何もないわ、私は、だけどね」
明日奈が聞きたい事はもうこれで何もなくなった、しかしワールドセイバーはまだまだ彼等に聞きたい事があるだろう、明日奈は二人に手錠をかけるとワールドセイバーに二人を送る。
「さぁて、愛理、これから良い人に会えるわよ?」
「?」
尋問を終え明日奈は愛理の方に振り返る、そしてワールドセイバーの端末を取り出すと、愛理に良い人に会えるわよと伝えてから電話をする、愛理は一体誰に会えるのだろうと首を傾げつつ楽しみにもする。
トバッハ自警団、中庭
ここはトバッハ自警団の中庭、ここに明日奈が呼び出した人物が現れ、その者の姿を見た愛理は嬉しくなり抱き着く。
「日理お婆ちゃん!」
現れた人物は九条日理だった、日理は飛び込んできた愛理を嬉しそうに抱き返す。
「久し振りだね、愛理」
「えへへ〜」
「おばあさ・・・、お婆ちゃんもお久し振りです」
日理は愛理を抱き締めつつ明日奈に挨拶する。
「ええ久し振り、日理」
明日奈は日理に近付くと頭を撫でる、日理は歳の事もあって流石に恥ずかしそうな顔をする。
「さて、お婆ちゃん、どう言ったご用件ですか?」
流石は明日奈の血筋の者、聞きたい事はやはり単刀直入に聞くらしい、愛理を離した日理は明日奈に早速用件を聞いた。
「ちょっと頼みたい事があってね、でもその前にあなた達は何か情報を掴んだかしら?」
明日奈は日理にへの用件を話す前に、彼女の組織、紫龍機関が何か情報を掴んだか聞く。
「我々は特に・・・」
しかし紫龍機関は何も情報を掴んでいないらしい、日理は申し訳なさそうに、特に情報は得てないと明日奈に伝える。
「そう・・・なら後で私達が得た情報を伝えるわ、それじゃ用件を言うわね?あなた達にブラックウルフェンの本部の位置を調べて欲しいの、頼めるかしら?」
「分かりました、でもどうやれば?」
「が、頑張って!」
「そう言う事だろうと思いました、相変わらずですねぇお婆ちゃんは・・・、まぁ努力はしてみますよ、でも次会った時に見つかってなくても怒らないで下さいね?」
明日奈の頼みは相当な無理強いである、その為次会った時に怒らないで欲しいと、日理はあらかじめ伝えておく。
「分かってる、そんな事で怒ったりはしないわ」
「・・・、それではお婆ちゃん達が得た情報を教えてくれますか?」
「ええ」
本当に怒らないのかしら?と疑う日理に情報を教えて欲しいと言われた本当に怒る気はない明日奈は、これまでに得た情報を日理に全て伝えた。
明日奈の話を聞き終わりメモも取り終えた日理は、少し離れた所でホワイトローズと遊んでいる愛理に近付いて行く。
「愛理ちゃん、もう行くね?」
「えー、もう行っちゃうの?」
「うん、私も仕事があるからねー、まぁまた会いに来るよ」
愛理はもう行くと言う日理の言葉を聞いて残念そうな表情を見せる、日理はそんな愛理にまた会いに来ると伝えてから頭を撫でる。
「・・・、残念だけど・・・またね、日理お婆ちゃん」
「ふふふ、それじゃ、またねー!」
愛理がさよならの挨拶をすると日理も挨拶を返し、手を振りながら転移して行った。
「私達も行こっか愛理、次の目的地に」
「うん!目指せ、エルフィン王国だね!」
愛理は明日奈と共に仲間達の元に向かい、ジェラやミイ、自警団の者達に別れを告げてから、船着場に向かう。




