四十一話
リロットの町
愛理達はサビシート島、三つ目の町リロットの町にやって来た。
「この近くにダンジョンがあるみたいだね」
周囲を歩く人々に適当に話しかけ情報を得て来た愛理は、この町からダンジョンがあるみたいだと、仲間に伝えた。
「ふーん、どんなダンジョンなんだ?」
「なんでも最近見つかったダンジョンなんだって、まだ最深部まで調べ終わってないから、高く売れるお宝が手に入る可能性があるみたい」
「ふーん、それは魅力的ね、私達はまだまだ資金が心許ないし、資金稼ぎにそのダンジョンに行ってみましょうか」
愛理達の現在の総資金は百七十万ゴールド程、それに六人の食事代、宿代、メサイヤの弾代、小型飛空艇の燃料代と弾薬代が必要と考えると最低でも常に五百万ゴールド程の資金を持っておきたい、その資金を得る為にその未開拓ダンジョンの話は非常に魅力的なのだ。
「ですね、ダンジョン探索、楽しそうですし」
「だね、それじゃ早速ダンジョンに向けて、ゴー!」
愛理達は資金稼ぎを目的にダンジョンに向かう。
コペラの遺跡
「ここはコペラの遺跡、冒険者どもよ!宝はこのダンジョンの各地に隠した!探してみろ!この俺の全てをここに隠した!ですって」
コペラの遺跡にやって来るなり、入り口の側に刻まれている言葉を蒼狐がやけに芝居かかった様子で読み上げた。
「うわぁぁぁぁ!」
蒼狐の様子を見て愛理がクスクスと笑っていると、ダンジョンの奥から叫びながら冒険者の一団が飛び出して来てそのまま走り去って行った、彼等の身に一体何があったのだろうか?。
「あのー愛理、入り口付近でブルブルと震えてる人達が私、やけに気になるのですが・・・」
ラフォリアが言った通りダンジョンの入り口付近には余程何かが怖かったのだろう、冒険者達が膝を丸めてブルブルと震えている、愛理はそれを見て尻尾を股の間に入れる、ブルブルと震える彼等の様子を見て若干ダンジョンの中に入るのが怖くなったのだ。
「さーて!行くわよ!」
おっ宝!おっ宝!と嬉しそうに尻尾を揺らす明日奈はワクワクした様子でダンジョンに入って行く、明日奈ほどの実力ならば大抵の状況に対応出来るため、何か恐ろしい物、魔物、悪霊がいるかもしれないこのダンジョンも怖くないのだろう。
「怖いですね・・・ここは白いのだけ明日奈様について行かせましょう」
「いえいえ、蒼いのあなたがついて行くべきです」
仲の悪い二人はお前が行け合戦を始めた。
「はいはい!怖いけど私達も行くよ!喧嘩しない!」
愛理は大きな声を出して喧嘩する二人の間に割って入ると二人の手を引きダンジョンの中に入って行く。
「ふむ、私達も行こうか」
「おう」
男達も愛理達を追ってダンジョンの中に入る。
コペラの遺跡一層
コペラの遺跡の中に入ると明日奈が遅いぞと言った感じで腕を組んで待っていた。
「遅いわよ」
「えへへ、ごめんねおば・・・」
遅いと言う明日奈に愛理は謝ろうとしたが言葉の途中で、明日奈の後ろを見て顔を引きつらせて固まる。
「どうしたの?って!キャァァ!」
固まった愛理を見て後ろに何かいるのか?と振り返った明日奈は、後ろにいたアンデットモンスターを見て、拳に光属性の魔力を溜めるとぶん殴った、するとアンデットモンスターは明日奈の光に焼かれ成仏する。
「はぁーびっくりしたわねー」
「アンデットモンスターって強いのに一発で撃退する明日奈様に驚きですよ・・・」
アンデットモンスターは高レベル冒険者ですら倒すのに数分かかる魔物である、それは彼等は物理攻撃無効の魔法を使用して来るためこれだけでも対応に時間がかかるのだ、それを破る為には光属性の魔法か聖水をかけた武器で攻撃しなくてはならないが。
光属性の魔法はレア属性の為、使用可能な者がそもそも少なく、聖水は乾けば意味がなくなる、その為通常武器を使いアンデットモンスターを倒す場合は何度も聖水を振りかけなくてはならない為時間がかかるのだ。
その為光属性も聖水も持たない場合は物理的に勝てない敵である為、アンデットモンスターは高位の魔物としてギルドでも、規定されている。
「まぁそのお婆ちゃんの攻撃はどれも馬鹿威力だから・・・」
「それほどの物でもあるわ!」
愛理が自分の攻撃に対して馬鹿威力だと言ったのを聞いた明日奈は、胸を張り誇らしげに張り尻尾ピン!と立てる。
「自分で言わないでください・・・まぁ私達には光属性を使える仲間が二人いるので安心ですね、頼りにしてますよ?」
今回のダンジョン探索の要は光属性を自由に使える明日奈と愛理である、この二人がいればバンバンアンデットモンスターをあの世行きに出来るので、他の者達に比べて楽な探索が出来るだろう。
「任せなさい」
「うん、頑張る」
ラフォリアに頼りにされた愛理も尻尾を誇らしげに立て、明日奈は引き続き同じポーズを取っていた。
一行は一層の廊下を進む、人の気配はない。
「・・・歌いますね!」
暗いダンジョンの内部の恐怖に負けた蒼狐が歌を歌うと宣言する。
「やめておけ、アンデットモンスターが集まって来るぞ」
レベンが言った通り、アンデットモンスターは音にも反応して集まって来る、その為出来れば音を立てずに移動するのが好ましい、どうしても音を立てなければならない状態の場合は、音を立てた後に出来るだけ迅速にその場から離れるべきだ。
「や、やめておきます・・・」
音に集まると聞いた蒼狐は口を閉じ黙る、アンデットが怖いのか?と蒼狐を煽ろうとしていたラフォリアも、レベンの言葉を聞いて黙る。
カーン!
「なんだ!?」
一行が出来るだけ静かに歩いていると遠くの方からカーンと缶が落ちた時のような音が聞こえた、その音に驚いた明日奈以外は振り返る。
「ウォォォ!」
「グワァ!」
音に反応したアンデットモンスター達、ゾンビや悪霊が目を覚まし、一斉に音がした方向に向かい始めた、その移動速度はかなり速い。
「間に合ったか・・・」
レベンは潜伏魔法をアンデット達に見つかる前に仲間達に施していた、その為彼等に見つかる事はなかったが。
「イヤァァァ!」
「うわぁぁぁぁ!」
後方にいるらしい冒険者達はアンデットに見つかり追いかけられてしまったようだ、バタバタと慌てて走って逃げる足音がダンジョンに響く。
「うわぁ・・・」
響く足音に反応してかアンデットモンスターが次々と出て来る、これはアンデットモンスターの生者に群がる性質の為であり、彼等は生者の精気が好物なのだ、その為何としてでも逃げる他の冒険者達の精気を得ようとしているのだろう。
「落ち着くまでは、動けんな、暫くここに居よう」
「だね」
愛理達はアンデット達が落ち着くまでこの場に待機し、暫くの間やり過ごす事にした。




