三十七話
レッドスカル三階
愛理は鎌の男に苦戦していた何故なら、ジェラ、ミイ、蒼狐が面白い能力しか使えないからである。
ジェラは強烈な光を放つスキルを持つ、しかし戦いには意味は無い!。
ミイは自在な裁縫スキルを持つ、しかし戦いには意味は無い!。
蒼狐は宴会芸を使える、今もピューと水を鎌の男の顔に当てて、男の視界の妨害をしている為、三人の中では一番働いているが、しかし大して意味は無い!。
「くっ!」
精霊を一体ずつしか召喚出来ない愛理は、二階で戦う者達の為にイフリートを置いて来た為、新たに精霊を召喚出来ない、出来ないからこそ本来の仲間の強さを改めて実感する、こう言う時にラフォリア達が居てくれればもっと楽に戦闘が出来る筈なのだ。
そしてジェラ達は自警団を立ち上げたばかりの為か戦闘経験が少ないのだろう、自前の武器を使い男にチクチクとダメージを与えようとしているが、攻撃は全く当たらない、その為この戦いは実質一対一なのだ。
「衝破!」
愛理は男から武器を奪おうと手を狙い衝破を放つが、躱され逆に腹に蹴りを喰らう、蹴られくの字に曲がる体をなんとか奮い立たせ、後ろに飛んで次の攻撃を躱す、すると愛理が先程まで居た場所に、鎌が横振りに振るわれる、もう少し飛ぶのが遅ければ愛理はやられていただろう。
(くっどうする?このふわふわな絨毯のせいで動きにくいしって絨毯?布・・・)
眼科の絨毯を見て愛理はある事を考え始めた、ミイの裁縫スキル、これを上手く使えば、あの男の動きを・・・。
「一人では俺には勝てんだろう?諦めて俺に斬られろ!」
「そんな事したら死ぬじゃない!嫌だよ!」
俺に斬られろと言う男の攻撃を躱した愛理はダガーを手に持ちアワアワしているミイの隣に降り立つ。
「ねぇミイちゃん、その裁縫スキルって布を自在に動かせたりする?」
「えっ?そんな事やって見た事ないから・・・」
愛理に布をうごかせるのか?と聞かれたミイは絨毯に手を付け魔力を注ぐ、すると確かに絨毯の毛が少し動いたのを愛理は見た。
(ふふーん、これは行けるね)
迫る男をいつもより大きめのホーリーブレイドを振るう事で引かせた愛理は、次はジェラの元に向かう。
「その光を発生させるスキル、多分私の考えだとあなたが攻撃の意思を持たないから、攻撃出来ないんだと思う、だからあいつを倒したいって思いを込めて力を使ってみて!」
「わ、分かった」
愛理に攻撃する意思を持てと言われたジェラは明確な攻撃の意思を持ち、スキルの行使の準備を始める、すると愛理の尻尾にビリビリとした、魔力を感じる、これなら攻撃出来そうだ。
「蒼狐ちゃんは・・・うん・・・頑張って!」
宴会芸スキルのアドバイスなど愛理には出来ない、そもそも何が出来るのか不明すぎる、取り敢えずは水を出せるようだが、水鉄砲レベルだ。
「なんで私だけそんなアドバイス・・・良いですよ!全力の芸を披露してあげます!」
「・・・」
蒼狐は芸を披露するようだ、愛理はそんな彼女をシラーと見つめた後、身を低くして前方に飛び出す準備をする。
「それじゃ行くよ!」
そして愛理は男目掛けて駆け出した。
「ジェラ君!今だよ!」
「ああ!」
ジェラは手のひらに光弾を出現させると男に向けて放つ、男はそれを見て大きく横に躱し光弾は壁を貫いた先で消える、ジェラは愛理が思った通り光属性の魔力を持ってのだ、愛理も最初は強烈な光を放つ事しか出来なかったので彼の属性が分かった。
「ミイちゃん!今だ!あいつの足を拘束して!」
「ええ!」
愛理は男が絨毯に足をつけた瞬間ミイに絨毯の布を操り拘束してくれと頼む、ミイは言われた通り絨毯の毛を操り男を拘束する。
「行きます!ほっ!」
どこからともなく大砲を出現させた蒼狐は部屋の中であるのにもかかわらず、大砲を放つ、放たれた弾は爆発し、パーン、蒼孤が放った弾は花火だったようだ。
「危ないよ!?」
愛理は爆発した花火をシールドで防いでいた、それでなんとかダメージを喰らわずに済んだが、大変危険である。
「あはは〜、でもあの人燃えてますよ!役に立ちましたよ!」
そう男は花火を受けて服が燃えているのだ、慌てて火を消そうとしているが消えない、愛理は正直した。
「そうだけどさぁ、・・・これでトドメ!衝破!」
そして愛理は燃える男に衝破を放ち気絶させた。
「ふぅ勝ったな、それじゃ後はそこでこそこそしている、ボスを拘束しよう」
コツを掴んだのか手を銃の形にしているジェラは、ボスに詰め寄り顔の前に手を突き付ける、ボスはジェラの光弾の威力を見ている為、素直に手を上げて降参する、こうしてレッドスカルは壊滅、この後自警団は他の自警団と協力してギャングを町から追い出した、逃げて行くギャング達はその先で待ち構えていた軍に拘束されお縄となる。
トバッハ自警団
「さてあなたには色々と聞かせてもらうよ」
愛理はトバッハ自警団の一室で鎌の男の尋問を行う、この島と近くのブラックウルフェンのアジトの近さを考えると、この男はそこから来た者の筈、アジトの情報を沢山得られそうだ。
「誰が話すか!」
男はどうやら話すつもりはないらしい、自分の組織の不利益な情報を敵に与えたくないのは、当たり前であるが。
「ふぅーん、良いよ、蒼孤ちゃん、花火」
愛理は話さないのならと隣に立つ蒼狐と自分を覆うようにシールドを発動させると花火を要求する。
「はーい!」
「分かった!話すから!話すからこの狭い部屋で花火を放つな!」
余程蒼狐の花火がトラウマになっているのか、蒼狐が花火を放つ前に、男はペラペラとアジトの事について話し始めた。
情報を得た愛理は明日奈に頼み男をワールドセイバーに送って貰う。
トバッハの町
数日後、ギャングが居なくなり平和になったトバッハの町では宴が開かれていた、ジェラと蒼狐が派手に光と花火を放ち場を盛り上げ、ミイは裁縫スキルで作った飾り物を町のあちこちに飾り付けて行っている。
「ふふふ、綺麗ですね」
「だな」
空に輝く花火を見てラフォリアとケーニは嬉しそうに空を見上げる、キラキラと光る沢山の光はとても美しい。
「おお!ドラゴンの花火だよ!」
「うむ、凄いな」
次に放たれたやたらとリアルな花火に感動する、魔法で作り上げたリアルなドラゴンの花火など、中々見れる物ではない。
「・・・」
明日奈は花火を見て幼い頃や、結婚してから娘達と夫と楽しんだ楽しんだ花火大会の光景を思い出していた。
(ウィリアム、あなたに見せたかったわ)
今も愛する今は亡き夫の姿を思い浮かべ明日奈は目を閉じる、すると今まで生きて来た中で一番幸せだった夫婦生活の光景が蘇る、過去を思い出す明日奈は寂しそうにしかし幸せそうに微笑んだ。




