三十六話
レッドスカル一階
トバッハ自警団の一団はアクエリアスの水流により壊された、倉庫の壁に開いた穴からレッドスカル本部の一階に入っていた。
「愛理ちゃんエゲツない!」
「や、やったのはアクエリアスだし・・・」
アクエリアスが疲れた!と二分で帰ってしまった為、策が上手く行ったか不安だった愛理は、レッドスカル一階の惨状を見てアクエリアスの能力の高さに引きつつも安心する、通路には手足をピクピクとさせている男や女がノビており、近くの部屋を覗いてみても同様だ、アクエリアスの水はちゃんと役目を果たしたようだ。
「僕らの家族は二階で働かされてるんだが、大丈夫かな・・・」
ジェラは一階の惨状を見て二階の家族を心配する。
「ダイジョーブダヨ」
「・・・怪しいわ」
急にガタゴトになった愛理をミイが疑うような目で見る、愛理は合わせて来るミイ能力の目から自分の目を逸らす。
そしてトバッハ自警団の一団は二階で予想される戦闘の準備をしつつ、二階に登って行く。
レッドスカル二階
二階の床は濡れていない、どうやら水はここまで来なかったらしい、そして混乱に乗じて自警団の家族達は一つの部屋に集まり閉じこもっているようで、数十人居るレッドスカルの構成員がどうにかして扉を開こうとしているようだ。
「こっちを向いてくれるかな!」
ドーンと自警団の者達の一番前に立った愛理は、誇らしげに尻尾を立てて、レッドスカルの者達にこっち向けやと言う。
「なんだテメーラは!」
「トバッハ自警団だよ!」
愛理はなんだテメーエらと聞かれたのでトバッハ自警団と答える、勿論フォックステイルとは言わない、こう言う時ちゃっかりしてるのが愛理である。
「トバッハ自警団・・・最近町のガキどもが作った自警団が、テメーラ、うちに喧嘩売ってどうなるか分かってんだろうな、特にうちを水浸しにした奴がそん中にいるなら、俺たちは絶対に許さねぇ!」
どうやらレッドスカルの者達は一階を水浸しにした者に相当ご立腹のようだ。
「・・・」
そして一階を水浸しにした張本人である愛理にトバッハ自警団の者達の視線が集まる、集中する視線を背中に受ける愛理はスススとジェラの後ろに隠れた。
「その動き犯人はテメーだな!おいお前ら!あの狐のガキが犯人だ!やっちまえ!」
「おう!」
隠れなかったらバレなかったかもしれないのに、ジェラの後ろに隠れたせいで愛理が水浸しにした犯人だとバレた、レッドスカルの者達は一斉に愛理に向けて走って来る。
「いやいや待て待て!コレ一番最初にやられるのは僕じゃないか!愛理!僕の後ろに隠れるのをやめてくれ!」
そうこのままだとレッドスカルの攻撃の一番最初の犠牲になるのはジェラだ、ジェラはそうなる前に愛理を引き剥がそうとするが愛理は離れない、ガッチリとジェラにくっ付いている。
「いやその、本当に頼む」
「仕方ないなぁ」
ジェラの泣きそうな声を聞いた愛理は、流石に可哀想になったので隠れるのをやめて前に出る。
「来て!イフリート!」
そしてイフリート召喚する、するとイフリートは頭にシャンプーハットを身に付けていた、よく見ると水が滴っている。
「あの・・・もしかしてお風呂に入ってた?」
愛理の質問にイフリートは頷くどうやら本当に風呂に入っていたようだ。
「ま、まぁ帰ったら好きなだけ入って良いからさ、今回もお願いね!イフリート!」
愛理の言葉にイフリートはおうと言った感じで腕を上げて、迫るレッドスカルの者達に向けて走って行き殴っては気絶させ殴っては気絶させを開始した、正にイフリート無双である。
「さぁ!あの子がいるから安心だよ!みんなも行こう!」
信号みんなで渡れば怖くない者である、愛理はイフリートがいるからと、トバッハ自警団の者達にレッドスカルの者達との戦闘を始めようと言った。
「ええ!私の力見せてやる!」
「愛理ちゃんに私の活躍を見せ付けるのです!」
愛理の声を聞いた、ミイと蒼狐が我先と駆け出した、それに続き他の者達も戦闘に向かって行く、愛理は先陣を切り、一番最初にレッドスカルの者達と相対した。
レッドスカル四階
屋上から建物に侵入した明日奈達は、主に明日奈がレッドスカルの者達をボッコボコにし、ケーニ達が明日奈の取りこぼしを潰して行くと言った感じで、突き進んでいた。
「たまに思うんだけどさ、あの人だけで良いんじゃないかな?」
「私もそう思いますけど、明日奈さんの戦いは参考になるんですよ、今だって一体多数の戦い方を見せてくれていますし」
一体多数の戦闘を繰り広げる明日奈は常に多数の敵に背中を晒さないように戦っている、ある時は壁を背にし、ある時はラフォリア達を背にして背中を狙う者達を潰させる、明日奈はこのようにしてどんどんと撃破数を数え稼いで行く。
「問題はあれほどまで我々が強くなれるかどうかだな」
「ですね・・・」
レッドスカル三階
レッドスカルのボスは混乱していた、いきなりの襲撃、上下からの攻撃、次々と増えて行く損害の情報、今までここまで追い込まれた事のないボスにとってこれは、絶望的な状況と言えるだろう。
ガシャーンと音がし、ドアを突き破りレッドスカルの構成員が部屋に飛び込んで来た、かれの後から入って来たのは、愛理とジェラとミイと蒼狐だ。
「お婆ちゃん達は今は三階の相手をしているみたいだからね、私達はあなたの相手をさせて貰うね」
「くっ!」
構成員に戦闘を行わせ、戦闘など最近は殆どしていないボスはこのままではと焦り銃を取り出した。
「近付くなう・・・」
ボスは愛理達に撃つぞと警告しようとした、しかし愛理は彼の警告が終わる前に男の懐に潜り込み、銃を斬り裂いた。
「あんた最近全然戦ってないでしょ、隙だらけ、そして終わりだね」
そして愛理はボスの首に剣を突き付ける。
「確かに俺は終わりだが、まだだ!」
愛理は負け惜しみをとボスを気絶させようとしたが不意に真横に現れた気配に反応し、大きく後ろに飛んで躱した。
「おお!黒の騎空団のアニキ!流石です!」
現れた男は黒い服を着た大きな鎌を持った男だ、ボスとは違い威圧的な雰囲気に愛理達は襲われた。
「あの人強いよ?みんな大丈夫?」
男は強いと確信した愛理は、三人に大丈夫かどうか聞く。
「大丈夫だ」
「うん、みんなもいるし!」
「愛理ちゃんもいるしね!」
聞いた結果大丈夫のようだ。
「よし!ならさっさとあいつを倒しちゃって、ボスを捕まえて、レッドスカルを終わらせよう!」
「「おう!」」
愛理達は鎌の男との戦いに臨む。




