三十二話
冒険者ギルド
この日は朝からお仕事、冒険者ギルドにやって来た愛理達はクエストボードの前に立つ。
「配送依頼だってよ!」
「リフォームのお手伝いもあるよ!」
「いやいや、この箱詰めの仕事も!」
何故かバイト的な仕事を選ぶ愛理とケーニとレベン、明日奈とラフォリアは思う、こいつらどうにかしないと、と。
「はいはい、これにしましょうねー」
またバイト的な仕事を愛理達が選ぶ前に明日奈は愛理の顔の前に、ロケットリザードマンの討伐依頼書を見せる。
「そーですね、報酬も良いですしそれにしましょう」
ラフォリアがそれを掠め取りカウンターに向かう、明日奈とラフォリアは昨日決めあっていたのだ、三人が変な仕事を受ける前にさっさと仕事を受けてしまおうと、その為念密に連携出来るように話し合っていた。
「えー!この馬車の組み立て依頼面白そうなのにー」
「1人で行って来なさい」
「じゃ行く」
「!?」
本当に1人で馬車の組み立て依頼に向かおうとする愛理を明日奈が止め、この日の愛理達はロケットリザードマンの討伐依頼に向かう。
ロロックの荒野
「ぶー」
「拗ねないの、可愛い顔が台無しよ?」
本当に馬車の組み立て依頼に行きたかったらしい愛理はぶーと頬を膨らませている、明日奈はそんな孫娘を揶揄い頬を押すとプシューと頬の膨らみがなくなった。
「ここみたいだな」
愛理達が辿り着いた場所はロロックの荒野の岩石地帯、辺りには大きな岩が転がっており、その岩を背負って歩く亀に似た巨大な魔物もいる、巨大な岩を背負った魔物達は所々で喧嘩をしており、背中の岩を相手から落としたら勝ちという騎馬戦のようなルールで縄張り争いをしているようだ。
その時だ、バシューと言う音がする、愛理達が音をした方向を見ると、背中がロケットブースターのようになったサングラスをかけたリザードマンがおり、別の冒険者達に特攻を仕掛けている。
冒険者達は左右に分かれてロケットリザードマンの特攻を躱す、攻撃を躱されたロケットリザードマンは足を地面につけて無理矢理に勢いを止めると反転し、再び特攻を仕掛ける。
「速いわね、アレは強い魔物よ」
「分かってる」
この世界の冒険者ギルドは低ランクでも高ランクの依頼を受ける事が出来る、ロケットリザードマンはAランクの魔物であり、愛理達は難しい依頼を受ける事で一気にランクを上げる腹積もりだ、ちなみにレベンの冒険者ランクはSである為もう上がらない、ケーニはCだ。
「シャー!」
ロケットリザードマンの動きを観察していると1匹のロケットリザードマンが現れ威嚇をして来た、愛理達は早速武器を構え、戦闘準備を整える。
「シャ!シャ!シャ!」
ロケットリザードマンは何やらシャ!シャ!シャ!と声を発し始める。
「あれは尻尾のブースターの発射準備だ、大きく叫んだ時に突っ込んで来るぞ、気を付けろ!」
「了解!」
シャ!シャ!シャ!はロケットブースターのカウントのようだ。
「シャー!」
そしてカウントが終わりロケットリザードマンが愛理達目掛けて飛んで来る。
「行くよ!お婆ちゃん!」
「ええ!」
観察する事でタイミングを掴んでいた2人の剣士は同時に左右に分かれて駆け出し、体を回転させ勢いをつけつつ2人の真横に来たロケットリザードマンを上に斬り飛ばした。
「ラフォリア!」
ロケットリザードマンは今度はまだ噴射されているブースターを上に向けて、上からの突撃攻撃を行おうとしている、その前に愛理に名前を呼ばれたラフォリアがレベンの浮遊魔法の手助けを得て大きく上に飛ぶ。
「ハッ!」
飛んだラフォリアは宙で体を縦に回転させロケットリザードマンを地面に叩き落とす。
「終わりだ」
地面に落ちまだ噴射させるブースターのせいでくるくる回るロケットリザードマンに、ケーニがトドメを刺した。
「やったね!」
一体のロケットリザードマンを倒した愛理達はハイタッチする、後4体討伐すれば依頼完遂だ。
「衝破!」
愛理は突っ込んで来る2体目のロケットリザードマンを衝破で弾き返す、しかしロケットリザードマンは舌で愛理を掴むと、弾き返された勢いを活かし愛理を地面に叩きつけた。
「シャー!」
そして一度上に飛び上がると足を突き出し、愛理を狙い突っ込んで来る。
「器用なものね!」
明日奈は愛理に攻撃が当たるギリギリでリザードマンの足を掴むと、まだ噴射されているロケットブースターを利用し体を回転させ、ロケットリザードマンを振り回す。
「クェェ・・・」
猛烈な回転を喰らったリザードマンは目を回す。
「ふ、ふふふ、どうよ、目が回ったでしょう」
しかし明日奈も目を回したようでトドメを刺そうとしているが素っ頓狂な所に剣を打ち付けている。
「こっちですよ、明日奈さん」
ラフォリアは明日奈にロケットリザードマンはこっちだと言いつつ、2匹目を仕留めた。
「これで2体目、そこそこ強いから時間がかかりそうだな」
「うむ」
4体目まで倒した愛理達は岩石地帯を歩く、すると一体のドラゴンを見つける。
「雌の土竜だ、彼等は大地を操る魔法を使える」
土竜は眠っているようで、グーグーと寝息が聞こえる、近くには卵があり、刺激すれば卵を盗みに来たと判断され攻撃されそうだ。
「シャー!」
土竜の卵を狙ってかロケットリザードマン達が現れる、それぞれ違う形のサングラスをかけており、既にカウントを始めている。
「グォォ!」
ロケットリザードマンの声を聞いてすぐと目を覚ました土竜は、尻尾を振り上げロケットリザードマン達を薙ぎ払った、そのまま地面を槍状に奮起させ、彼等の体を貫かせた。
「強い・・・」
「今は特に気性が荒い、こちらに気付けばこちらにも攻撃して来るだろう、離れるぞ」
愛理達は音を立てないよう気を払いつつ、土竜から離れる、愛理達の後ろから土竜の勝利の雄叫びが聞こえた。
「・・・なんだあれ」
「分かりません」
ロケットリザードマンを探す愛理達の目の前に踊るサボテンが現れる、踊るサボテンは非常に楽しそうに踊っており、その数は20体程だ。
「ダンスサボテンだ、ただ踊ってるだけの無害な奴等でな、討伐対象に指定されていない安全な魔物だ」
「ふぅん、面白いわね」
レベンのダンスサボテンの説明を聞いた愛理は尻尾を揺らしながら彼等に近付いていく、明日奈達が何をするのかと思っていると一緒に踊り始めた、いつの間にか妖精モードになったホワイトローズも一緒に踊っている。
「あいつ、ああ言う子供っぽい所あるよな」
「そこが可愛いんです」
「えっ!?今なんて?」
「えっ?何か言いましたか?」
愛理の踊りを見たダンスサボテンのボスが近付いてきて会釈する、Shall We Dance?と言った所だろうか?
「イエス!」
ダンスサボテンの誘いを受けた愛理は頷き共に楽しそうに踊る、時折飛んで来る針を慌てて躱しつつ。
一頻り踊り満足した愛理は仲間達と共にロケットリザードマンと対峙している、彼等は何やら技を放とうとしているようだ、先程のダンスサボテン達からは親愛の証として、虹色に光る種を貰った、受け取った愛理は大事に育てようと大切に鞄に仕舞う。
「シャ!」(アッシュ!)
「シャ!」(オフテガ!)
「シャ」(ガイガ!)
「シャシャシャー」(ジェット・・・)
3匹いる黒い星型マークのサングラスを付けたロケットリザードマンの怪しい技名を、愛理は殴って止める。
しかし彼等はすぐに立ち上がり3匹同時に突っ込んで来た。
「愛理、ラフォリア!行くわよ!」
「はい!」
「うん!」
「ジェット!」
「いやいやあんたも何口走ってんだ」
ケーニが愛理にツッコんでいる間にも3匹のリザードマンは迫っていた、それに慌てて反応した明日奈は上に飛びリザードマンの頭を踏む。
「シャ!?」(俺を踏み台にしたぁ!?)
「あっごめん、ついつい」
明日奈はリザードマンに謝りつつ地面に降りる。
「隙あり!」
踏んで謝る明日奈にいえいえと言った仕草を見せているリザードマンを愛理は、横から斬りかかるが、別のリザードマンに止められる。
「喰らいなさい!」
愛理の攻撃を止めたリザードマンをラフォリアが横から突き刺しトドメを刺す。
「終わりだ!」
そして1匹仕留められた事で怯んだ、残り2体をケーニが纏めて仕留める。
「なんだったんだ?こいつら?」
「坊やだったのね」
「・・・何言ってるの?お婆ちゃん」
ロロックの町、冒険者ギルド
「7体討伐ですので11万ゴールドです、よく頑張りましたね」
依頼を終えた愛理達は冒険者ギルドに戻って来た、現在報酬を受け取っている。
「ふぅー疲れたねー今日はここで食べて行こうよ」
「そうね」
ギルドには飲食コーナーがある場合もある、このギルドにもあるようで愛理達はここで夕食を取り、宿に戻るのであった。




