二十五話
アツイーヨ荘
「んっ・・・」
レベンにアツイーヨ荘に運び込まれた愛理は目を覚まし体を起こした。
(変な夢を見ていた気がする・・・、もう1人の私がいて・・・)
愛理は自分がどんな夢を見ていたのか思い出そうとする、しかし霧がかかったかのように思い出せなかった。
「そう言えば魔力暴走はどうなったんだろう・・・」
愛理は魔力暴走がどうなったのか覚えていない、一度目の攻撃の後どうなったのか全く覚えがないのだ、取り敢えずこの見覚えがあるアツイーヨ荘の部屋に自分が居るという事は魔力暴走はどうにかなったのだろうと愛理は思う。
「覚えていないのか」
そこで男の声が部屋に響く、愛理が声がした方向に顔を向けるとそこにはレベンがいた。
「うん、あの後どうなったの?」
「君が魔力暴走を止めた、あの時君の右の手の甲の上には黄道十二宮の紋章、鍵の紋章が現れていた」
愛理は右の手の鍵のマークが浮かんでいたと聞き手の甲の上を見る、しかし今は浮かんでいなかった、それに記憶にある限りそんなマークが現れた事はなかった筈だ。
「あなたはその黄道十二宮の紋章の意味を知っているの?」
愛理はレベンに黄道十二宮の紋章の意味を聞く。
「あぁ知っている、黄道十二宮の紋章を持つ者は精霊、そして精霊王に祝福されし者、そして黄道十二宮の称号を持つ精霊の主人となるべき者だ」
「私が黄道十二宮のみんなの主人に?」
愛理は更に自分が契約しているアクエリアスと、もう一体の精霊以外の、黄道十二星座の精霊の主人となるべき存在だと聞いて首を傾げる。
「黄道十二宮の紋章を持つ者は強力な魔を討つ力を持つと言われている、そして黄道十二宮の精霊全てを従えた紋章の持ち主はこう呼ばれる、十二宮の勇者と」
愛理はレベンの話を聞いて思う、何故自分が何度も精霊界に迷い込んだのか、それは自分が十二宮の勇者となるべき存在だから、精霊界が愛理を引き寄せ精霊王と引き合わせたのだ、十二宮の勇者の覚醒の足掛かりを作る為に。
「色々と聞かせてくれてありがとう、レベンさん、私がしなきゃいけない事、多分、分かった気がする」
「君がしなくてはいけない事、それは黄道十二宮の精霊達との契約だな?」
「うん」
愛理はレベンの話を聞いて理解した、自分はこれからアクエリアスともう一体以外の残る十二宮の精霊達との契約をし、自身の十二宮の勇者としての力を覚醒させなければならないのだと、それが今自分がすべき事なのだと。
「そうか、ならば私も協力しよう」
「えっ?なんで?」
自分に協力すると言うレベンの言葉を聞いた愛理は彼に何故と問う、彼が愛理に協力する義理はない筈だからだ。
「なぁに、いつまでもここにいても暇なだけだからな、それに君が十二宮の勇者として目覚める瞬間を見てみたいのだ」
(それにアレも気になるのでな)
アレとは愛理が意識を失うのと同時に現れた、謎の存在のでな事である。
「分かった、これからあなたの知識が必要になりそうだし、戦闘で後衛を担当してくれる人も欲しかったの、よろしくね?レベンさん」
レベンを団に引き入れると決めた愛理は彼の側に行き微笑んでから、手を差し出す。
「あぁ、よろしく頼むぞ、団長」
レベンは差し出されている愛理の手を取った、こうしてエルフの魔導士、レベンが愛理の仲間になった。
「って、訳なの」
愛理は明日奈の元に向かいレベンに聞いた話を話した、話を聞いた明日奈は興味深そうに何かを考えている。
「愛理、精霊界に行く方法って分かる?」
未だ精霊界にいる精霊王の元に辿り着けていない明日奈は、愛理に精霊界に行く方法を知らないかと聞く、愛理の力についてもっと詳しく精霊王に聞く為に精霊界に行こうと思ったのだ。
「分かんないよ・・・風景は覚えてるから、何回か転移で行ってみようとしたけど、行けなかった」
愛理は精霊界に迷い込む度に人間界に帰って来た後、明確に覚えている精霊界の情景を頭に思い浮かべつつ転移をしようとしたが出来なかった、恐らくは愛理が精霊界に迷い込む度に現れるゲートを通らなければ行けないのだろう。
「そう・・・ならやっぱり探すしかないわね、ゲートを」
「だね、私も精霊王さんにまた会いたいし」
ここで明日奈は精霊王と話をする為、愛理はもう一度彼女と会う為に精霊界に向かうと言うもう一つの目的が出来た。
「ええ、私もあなたの事以外にそいつに用があるしね」
「えっ?」
愛理は疑問に思った何故明日奈が自分の事以外に精霊王に用があるのかと。
「ふふふ、なんでもないのよ、さっみんなにこの事を話して聞かせましょう」
不思議そうな表情を見せる愛理に明日奈は悲しそうに笑って誤魔化した、そして愛理に背を向けると歩いて行ってしまった。
「・・・」
愛理が覚えている久城明日奈はいつも明るく笑い、そして時には自分を厳しく叱りつけてくれる、愛理が誰よりも尊敬する人物だ、その明日奈があのように悲しそうな表情を見せたのは愛理にとって初めてであった。
(泣かないわ、私、あなたに会うまでは)
オーセール島〜ソルフロート島間空域
愛理はレイリをソルフロート島に返す為にメサイヤを飛ばしていた。
「愛理のその力、やはり明日奈さんが言っていた闇の存在に関係あるのでしょうか?」
レベンの仲間入り、そしてレベンが愛理に話した話を明日奈から聞いたラフォリアは以前聞いた闇の存在と関係あるのではないかと口にした。
「多分ね、勇者は闇の存在が現れない限りは現れない、勇者が現れると言う事は闇の存在が現れると言う事よ」
そしてそれはもう1人の勇者である明日奈の力だけでは、足りない程の力を今から現れる闇の存在が持っていると言う事を示している。
「そしてそいつはこの世界にいるんだよな?なら愛理の力の覚醒、そして精霊界、最後に闇の存在、を俺達は探さないといけないって事だな」
ケーニが言った愛理達が探さなくてはならないもの、そのどれもが今はどこにあるのか分からない、愛理達が自分達で探さなくてはならないのだ。
「私達が探さなきゃいけないものどれもどこにあるのか分かんない、でも私見つけるよ?全部、私に色々くれたこの世界の為に!」
短い時間だがこの世界、メルファファスタは愛理に色々な物を与えた、一つは自由に空を飛び回ってみたいと言う夢、二つは自分が目指すべき物、三つはかけがえない友だ、そんな沢山の宝物をくれたこの世界を愛理は必ず守る。
「私も協力します!」
「俺もだ」
「私もだ、団長」
世界を守ると言う愛理の言葉にラフォリアとケーニとレベンも協力すると言ってくれた。
「あたしも、いやソリビカ同盟も協力するよ、愛理」
「うん!ありがとう!」
何も情報がない今、同盟の情報網は必ず必要となる、それを理解している愛理は嬉しそうにレイリにありがとうと言った。
「さぁ、行きましょう愛理、私達が探さなきゃいけない物をこの広い空で見つける為に!」
「うん!」
明日奈の言葉に元気良く返事をした愛理はフットペダルを踏みメサイヤを加速させた。




