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金色の九尾lll  作者: ブレイブ
二章、島と島を巡る旅と三尾
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二十三話

オーセール山中腹


オーセール山の中腹は過ごしやすい気候だった麓とは違いジメジメとした湿った空気が漂っている、毛の多い獣人族はこう言う気候が苦手である、その為明日奈も愛理も不快そうな表情を隠せないでいる。


「もう尻尾隠す!」


暑さに耐えきれなくなった三尾な愛理は尻尾を隠す、これで少しはムッとした暑さを感じなくなる、狐の耳は便利なので隠さない。


「少しは我慢しなさい愛理、私達は尻尾を隠した分、戦闘能力が減退するのよ?」


そう三尾状態ならば愛理は100パーセントの力を出せるが、三つとも消せば10パーセントまで減退する、つまり全くの役立たずになるのだ、その為いつ魔物が出て来るのか分からない状態ならば常に尻尾を全部出しておくのが推奨される。


「だって暑いんだもん、それにすぐ出せるし問題ないよ、それに狐の耳は消してないから敵が来たとしてもすぐに分かるもんっ!」


戦闘能力は落ちるが狐の耳の優れた聴力が無くなるわけではない為、常に耳を澄ませていれば問題ないと愛理は言う。


「あんたねぇ」


明日奈はそんな孫娘に呆れたが、まぁ自分も居るし大丈夫だろうと判断し、これ以上は何も言わない事にした。


「あっ、山小屋ですよ!皆さん!」


愛理の綺麗な尻尾が消えたのを残念に思っていたラフォリアが山小屋を見つけた、愛理達は山小屋に近付き中を覗いてみる。


「誰も居ないな」


山小屋の中には誰も居ない、人が住んでいる形跡はある。


「うーん?こんな山小屋なかったような気がするんだかねぇ」


この山に訪れた事があるレイリもこの山小屋について知らないようだ。


「なんだ?お前達は?」


すると愛理達の真後ろから男の声が聞こえた、声を聞いた愛理達が振り返るとそこには1人のエルフがいた。


「私達はこれから山の頂上の源泉を塞いでるって言う魔物を退治しに行く所なの、ねっ!お兄さん、ここに住んでるんでしょ?その魔物の事何か知らない?」


愛理は男にズイっと近付き、頂上に巣食うという魔物の事について聞いた、戦闘前の情報収集は大切な事、師である明日奈も良い判断だと満足気に頷いている。


「あれだ」


「えっ?」


愛理にズイっと近寄られて顔を赤くした男は近くにいるロックタートルを指差す、愛理はそれを見て首を傾げる。


「あれらのボスが源泉を岩で塞いでいる、どうやら源泉の熱いお湯が気に入ったらしくてな、独り占めしているようだ」


「ロックタートルのボス・・・、大きいのかしら?」


明日奈は男にロックタートルのボスの大きさを聞く。


「そうだな大きいぞ、縦5メートル、横10メートルと言ったところだ、あの巨大から放出される火炎放射の範囲はかなり広いし威力も高い、戦うなら注意しろ」


「分かったわ、ありがとう」


ロックタートルについて話してくれた男に明日奈はお礼を言う、男はそれに小さく手を振って答えると家の中に入って行った。


「・・・ロックタートルのボスについて教えてくれたのは良いけど、ここで何してるんだろうな?」


「さぁねぇ?そんな事よりもその迷惑なボスを倒しに行こうじゃないか!」


「はい!」


愛理達はロックタートルのボスを倒す為、山の頂上に向けて歩いて行く。



オーセール山頂上


愛理達はオーセール山頂上にやって来た、すると源泉が流れる水流が確かに岩で塞がれており、泉のようになっている場所の真ん中に大きな岩の塊のような物が存在している。


「アレだよね・・・?」


「Yes、生体反応を確認」


愛理の質問に生体サーチをしたホワイトローズが答える、やはり真ん中に存在する岩がロックタートルのボスのようだ。


「寝てるのかねぇ?」


「多分・・・ねっ!」


明日奈は近くの石を手に取ると綺麗なフォームで甲羅に向けて投げた、猛烈な速さで空を切る石はゴツンと言った音を立てて甲羅命中し、甲羅を少しヘコませた。


「グエエエエエ!」


甲羅に感じた衝撃を感じたロックタートルのボスが雄叫びをあげて源泉から出て来た、源泉は非常に温度が高いらしく彼の体は熱気に包まれている。


「ねぇ、お婆ちゃん、もうちょっと普通の起こし方をさぁ・・・」


「良いのよどうせ戦うんだし、ほら来るわよ!」


源泉から完全に体を出したロックタートルは口を開き火炎放射を発射した、それをラフォリアがシールドを張って防ぐ、ロックタートルの火炎放射は地面を赤く溶かした。


「これは当たったらヤバイぜ」


「みたいだね、来て!アクエリアス!」


ここにはお湯だが水がある、つまり愛理が持つ最強の精霊の一体であるアクエリアスを呼べる、愛理はアクエリアスを呼び出し、呼び出しに答えたアクエリアスは源泉の中心から現れる。


「おいコラ!愛理!どこから召喚してんだ!熱いわ!」


「ごめんなさい・・・」


熱いお湯の中を潜り抜けて出て来たアクエリアスの体からも湯気が漂っており、愛理と友達になってから愛理に対して一度も怒った事のないアクエリアスは流石に怒った、愛理は非常に申し訳なさそうに謝る。


「ふぅ・・・分かったのなら良い」


謝る愛理を見てアクエリアスはあっさりと許す、愛理が自分の為にこの島に来た事を精霊界から聞いており知っていたからだ、そんな愛理に向けてロックタートルのボスは火炎放射を放った。


「うちの主人はやらせないよ!」


火炎放射と愛理の間に入ったアクエリアスが、手から激しい水流を撃ち出し火炎放射を消し去った。


「ありがと!アクエリアス!」


「フン」


愛理は自分を守ってくれたアクエリアスにお礼を言ってから駆け出す、ラフォリアと明日奈とレイリもそれに続く。


「セェイ!」


ロックタートルに詰め寄った愛理は剣を振るう、しかし。


「くっ!?」


柔らかそうな甲羅に覆われていない足を狙ったのに愛理の剣はガキン!と弾かれる、どうやら足の皮膚も相当厚く丈夫なようだ、剣を弾かれた愛理は尻餅を着く。


「そこも硬い・・・のね!」


明日奈は尻餅を着いた愛理のフォローも含め、ロックタートルの下に入り込むと、グッと力を込めてから、彼を下から思いっきり斬り上げる、すると火炎放射を放とうとしていたロックタートルの体は浮き、火炎放射は空に向けて放たれた、愛理はその間に立つ。


「・・・バケモン、だありゃあ」


レイリは明日奈の怪力に正直引きつつも、足がダメなら顔はどうだと、双剣で斬り付けるがこちらもガキン!と弾かれる。


「どこも硬いのですね・・・」


「うん厄介だよ・・・」


ここまで硬いと防御を貫く方法を思い付かなければこちらに死が待っている、体力の限界が来るまでに倒せないのならば、一度引くべきだろう。


「ここはどうだ?」


ケーニはロックタートルの目を狙い弾を放った、すると彼は顔を大きく逸らし銃弾を躱す。


「あの動き・・・皮膚は硬いが目は柔らかいらしいぜ」


「みたいだね、でも目だけを狙っても時間が掛かるだけだよ、やっぱりどうにかして防御を貫かなきゃ!」


「私に任せろ」


ロックタートルの防御を貫く方法を考えながら彼の攻撃を躱す愛理達、そこに男の声が聞こえて来た、そこには先程のエルフの男がいた。


「お兄さん!」


「お兄さんではない、レベンだ」


男の名はレベンと言うらしい、レベンは杖を持っており、魔法使いのようだ。


「それで?どうするの?レベン?」


「君達の武器に貫通能力を上げるエンチャントを掛ける、そうすればあの皮膚も突き攻撃限定だが、貫けるようになるだろう」


レベンが提唱する方法とは貫通能力を上げるエンチャントを愛理達の武器に施すと言う物だった、突き攻撃しか通用しないが攻撃が通じるようになるのなら意味はある、そしてこのエンチャント、銃弾を放つケーニに対して一番効果がありそうだ。


「銃弾を放つ君が、この戦い1番の要となる、頼むぞ少年」


「おう、任せな!」


「うむ、それではエンチャント!」


レベンは杖を振り上げエンチャントを発動させる、すると愛理達の武器が赤く光る。


「・・・行けそうな気がする!」


武器にエンチャントが施されたのを確認した愛理は突き構えを取りロックタートルに向けて駆け出し、距離を詰めきった所で突きを放つ、すると愛理の剣はロックタートルに突き刺さった。


「やった!凄いよ!レベンさん!」


愛理は剣を引き抜き距離を取りつつレベンを賞賛する。


「君の剣の腕も中々だ、さぁ一気に倒してしまえ!」


「ええ!」


武器が通じると分かったわ明日奈達は全員が突きの構えを取り駆け出した、走って行く仲間をケーニが銃弾を放ちフォローし、ケーニの銃弾はロックタートルの皮膚を貫通する。


「ゲエェェ!!」


体に感じる痛みに怒りを感じたロックタートルがケーニに向けて火炎放射を放つ。


「くっ!」


「少年!」


ケーニに迫る火炎放射をレベンが防いだ、その間に距離を詰めたラフォリア、明日奈、レイリがロックタートルの真下から同時に突きを放つ。


「良し!」


三人の突きを喰らったロックタートルは主に明日奈の馬鹿威力のおかげで下部の甲羅が割れ体が浮かびひっくり返る、ひっくり返ったロックタートルの上に愛理が飛び乗った。


「ホーリースパイク!!」


飛び乗った愛理は貫通のエンチャントの上に更に貫通技を重ね、剣を逆手に持ち突き刺した、ホーリースパイクはロックタートルの体を貫き、ロックタートルは絶命した。


「ふぅ・・・勝ったね」


「そうだな」


ロックタートルを倒した愛理達は源泉を塞いでいる岩に近付く。


「さぁ!イフリート!お願いね!」


愛理はイフリートを召喚する、イフリートは岩を破壊し、源泉は再び流れ始めた。


「よーし!これで温泉復活ね帰るわよ!」


そして明日奈が我先にと下山して行く、愛理もついて行こうとするが。


「ん?どうしたの?イフリート?」


イフリートが手振りで何か合図していたので、愛理は彼にどうしたのか聞く。


「オレ、ココデ、オンセンニ、ハイッテイク、でしょうか?」


「多分、そうだろう」


どうやらイフリートは熱いこの源泉に入りたいようだ。


「ふふふ、良いよ、イフリート、でも私達は下に降りるよ?それでも良い?」


愛理が彼に下に降りるよ?と伝えると彼は頷きどこからともなく酒瓶を取り出し、愛理にコップを渡して来た、帰る前に一杯だけでも注いでくれと言う事らしい。


「はいはい」


愛理は彼が持つコップに酒を注いでから、仲間達と共に下山した。




アツイーヨ荘


ここはレイリがオススメするアツイーヨ荘の温泉、無事に復活した温泉は浸かっていて非常に気持ちいい、どんどん疲れが解けていく感じだ。


「いいお湯ねー」


「だねー」


「ありがとうねー愛理」


愛理と明日奈と仲良く尻尾を揺らし微睡んでいる、耳は気持ち良さそうにヘニャリとタレ、尻尾もヘタれている、愛理に再び召喚してもらったアクエリアスも気持ち良さそうに温泉に浸かっている。


「ねぇラフォリア、気になってたんだが、あの2人は親子かい?」


「いえ、明日奈さんがお婆ちゃんで、愛理がその5代目の孫だそうです」


「ふぅん」


ラフォリアの話を聞いてレイリは明日奈の歳を計算しようとするが、何かを感じたらしい明日奈が振り返りニコリと笑ったのでやめる。


「ふぅー気持ちいいですー」


ホワイトローズは桶にお湯を溜めてもらいその中で温泉を満喫していた。




「混浴とは良いものだな、少年」


「はいそうですね、レベンさん」


ここはアツイーヨ荘の温泉は混浴しかなく、男2人は混浴を非常に満喫していた、特に明日奈を見ている、ガン見している。


「2人もどう?気持ちいーい?」


そこで愛理がバシャバシャと近付いてくる、そしてハラリと体に巻いていたタオルが取れる。


「「!?」」


男2人は見た、愛理の大きな胸を、細い腰を、長くスラリとした足を、男2人に裸を見られた愛理は慌ててタオルを手に取り顔を真っ赤にしてしゃがむ。


「・・・」


そして体にタオルを巻き直した愛理は顔を真っ赤にして男2人から離れて行く、愛理を見送る男2人はお湯の中で静かに拳を合わせあっていた。

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